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魔王軍はお金が無い  作者: 三上 渉
第七章:魔王と暗躍のサッカー大会
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魔王と暗躍のサッカー大会

:魔王と暗躍のサッカー大会


魔王軍の逆転勝利の翌日

サッカー大会は無事閉会式も終え、大盛況の内に終わった

そして、俺はというと


「う・・・ぐおお・・・」


筋肉痛に苦しみながらも、いつもの書類仕事に戻っていた

そんな俺にウラムが呆れた様に言う


「あの程度の運動で筋肉痛とは情けないですね、日ごろから体を動かしていないからでは?」

「体力には自信があったんだが・・・。つか、運動する暇も無いぐらい書類が多いんだよ・・・」

「貧乏暇無しと言うやつですね」


とまあ、そんな感じにいつも通りに・・・っとその前に


「そういえば、トトカルチョの方はどうなったんだ?ミルズは閉会式の後、いつの間にか姿を消してたみたいだが」

「配当金はちゃんと支払われた様ですよ」

「ふーむ・・・」

「その事ですが魔王様」

「ん?」


その時、珍しくウラムの方から提案をしてきた


「この件は、私の方に任せてもらってよろしいですか?」

「お前が?別にそれは構わないが・・・まさか暗殺とかする気じゃないだろうな?」

「ははっまさか・・・それにそんな事をしても意味は無さそうですしね」

「どういう事だ・・・?」

「いえ、ともかく。この件は私に任せて下さい」

「まあ・・・そこまで言うなら任せた」


そして改めて、俺はいつも通りの業務に戻るのだった






そしてその夜

暗闇に包まれた部屋に立ち尽くす一人の影

その時、部屋の入り口に気配が現れる


「報告を」


部屋に立ち尽くしていた影、ウラムは振り返る事もせず短く言葉を発した


「はっ」


そして部屋に現れた方、ギガスは報告を始めた


「まず、ネヴィラネヴィルズについてですが。ミシェオラ国の辺境にある村のサッカーチームである事が判明しました、ですが・・・」

「ですが?」

「それ以上でも、それ以下でもありませんでした」

「なるほど。つまり・・・」

「はい。あれ程のサッカー大会を開ける様な資金力、またトトカルチョを取り仕切る様な組織との繋がりは一切ありませんでした」

「では、あのミルズという男は?」

「彼もその他のメンバーも、間違いなくネヴィラネヴィルズの一員です。ですが、私が直接赴いて話を聞いた所・・・」



「サッカー大会?そう言えばそんな事があったような、無かったような?」



「記憶が定かでない・・・ですか」

「はい」


そして、ここまでの報告を聞いたウラムは呟く


「まあ、大方予想通りではありますね」

「と申されますと?」

「この大会、裏で何物かが糸を引いている事は明らかでした。一度はご破算になりかけた企画が、たった数週間で予想以上の規模で開かれる事となった、あまりにも事が上手く行き過ぎている・・・」

「それはその通りですが、それは・・・」

「ええ。これらは我々にとって益となる行為。姿を隠しながらも我々の手助けをする、それゆえ相手の意図が読めず対応が遅れました。相手の意図が読めたのは決勝戦の前日の事です」

「八百長・・・ですね」

「ええ、彼らの行動は全てあの八百長を仕掛ける為にあった」

「では、目的はやはり金銭であったと?」

「そう考えるのが妥当でしょう・・・ですが」


そこでウラムは一度言葉を区切り、続ける


「恐らく違います」

「彼らの目的は金銭ではなかったと?」

「ええ。ミルズが提案してきた八百長の条件を覚えていますか?」

「決勝でのトトカルチョで彼らが勝利した場合の取り分、その半額である2億セーレを支払う・・・ですね」

「ええ、ですが・・・。余りにも多すぎると思いませんか?」

「・・・言われてみれば、確かに」

「彼らは会場の建設や大会の広告の為にかなりの資金を投入しているはずです。決勝以外の試合でもトトカルチョを行っていた可能性はありますが、あくまで本命は決勝戦であった事は間違いないでしょう。にも関わらず、八百長を成立させる為だけに取り分の半分を支払うと言ってきたのです」

「確かに・・・メリットとデメリットが釣りあっていない様に思われます」

「そもそも、彼らが八百長をする理由など最初から無いのです。何故なら、この賭けの胴元は彼ら自身なのですから。オッズを決めるのは自分達なのだからどちらが勝っても損をしないようにすれば良いだけの話、わざわざ2億も支払って八百長を成立させる意味がありません」

「では金銭が目的ではなかったのなら、一体何が目的だったのでしょう?」

「ええ、それなのです・・・」


浮かび上がってくる不可解な事実・・・


「もしもあの時、魔王様が八百長を受けていたらどうなっていたと思いますか?」

「八百長を受けていたら・・・?我々は試合の敗北と引き換えに2億という大金を得る事になります、試合の勝利は我々の目的では無かったわけですから、何のデメリットも無く大金を手にした・・・という事になります」

「はたして本当にそうでしょうか?」

「それは一体?」

「例えば・・・我々が敗北し試合が終了した後、この試合が八百長であったという情報がリークされたとしたら?」

「それは!!!」

「ええ、当然我々は批判の矢面に立たされる事となるでしょう。そしてその批判は、大会の規模が大きければ大きい程、賭場に賭けている金額が大きければ大きい程激しくなる。これだけの規模の大会でそんな不正を行ったとなれば我々は商売どころではなくなる、世界から完全に孤立していた事でしょう。そしてそれは八百長を受けずとも、試合に負ければ同じだったでしょう」

「彼らが八百長を捏造していたと?」

「ええ、そしてそれが捏造であると証明する事は限りなく不可能に近かったでしょう。ネヴィラネヴィルズのギリギリの勝利に対して圧倒的な力で勝ちあがってきた我々、誰もが我々が勝って当たり前だと思っていたでしょうから」

「もし我々が負けたら、圧倒的多数がわざと負けたのだと判断する。決勝までの試合展開もその為に・・・」

「そういう事になります」

「ですが、そんな事をすれば彼らとて・・・」

「忘れたのですか?ネヴィラネヴィルズはその影に居る何者かの傀儡に過ぎない、つまり彼ら自身はリスクを負う事は無い」

「ではまさか・・!?」

「ええ、つまり」


それらに対して、ウラムが出した結論は・・・!


「彼らの目的は最初から「我々」だった。この大会そのものが我々を陥れる為の「罠」だったという事です」


そう、それがこの大会に隠された何者かの意図だったのだ。だが・・・


「一体何者が・・・?」

「それは分かりません。ですが、不可解な点が一つ残ります」

「不可解な点?」

「ええ。これだけ用意周到な罠を仕掛けてきた相手にしては、詰めが甘すぎると思いませんか?」

「・・・言われてみれば。結果的に我々は彼らの罠を潜り抜けた事になりますが・・・」

「やった事と言えば、八百長を断り試合に勝利しただけです。それだけで、この用意周到な罠を切り抜けてしまった」

「・・・?一体、これはどういう事だったのでしょうか?」

「もしかしたら我々は試されていたのかもしれません」

「試されていた・・・ですか?」

「この罠にかかり、世界から孤立する程度ならそれまで。だがもし、この罠を潜り抜けてくるようなら・・・」

「では、我々はその何者かの御眼鏡に適ったという事でしょうか?」

「それが吉と出るか凶と出るかは・・・まだ分かりませんがね」






そして、全ての報告を終えギガスは立ち去り

ウラム一人が暗闇の部屋に残っていた


「さて、何者かは分かりませんが・・・」


そしてその顔に浮かんでいたのは


「精々楽しませていただくとしましょう・・・」


魔族に相応しい、邪悪な笑みだった

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