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魔王軍はお金が無い  作者: 三上 渉
第七章:魔王と暗躍のサッカー大会
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魔王と逆境イレブン

:魔王と逆境イレブン


ハーフタイムが終了し、俺達はフィールドに戻ってくる


「さあ!両チーム共にポジションに付きました!後半戦が始まります!1対0でネヴィルズが優勢!魔王軍の逆転なるか!?それともネヴィルズが守りきるのか!?」


ピィーーーッ!!!


そして、ネヴィルズのボールで後半戦が開始された!


「よし!まずはボールを奪うぞ!」


ボールを奪いに向かう魔王軍の面々、だが!


ポンッ!


「おーっとネヴィルズ素早いパス回しでボールを奪わせない!」

「くそっ!!!」


優勢になったネヴィルズは無理な攻めをせず、横や後ろにパスを回して慎重にこちらの出方を伺っている

当然と言えば当然だ


「迂闊に突っ込めば、守備が空いた隙を突かれるでしょう。だからと言ってこのまま時間をかけ続ければこちらの負けです」

「じゃあ、どうすれば・・・?」

「どこかにチャンスはあるはずだ!それまで耐えるしかない!」


じわりじわりと、真綿で首を絞める様に攻めてくるネヴィルズ


「さあ、前半とは打って変わって慎重な立ち上がり。魔王軍はこの苦境をどう切り抜けるのか!?」


攻勢に出られず苛立ちが募っていく魔王軍の面々


「にゃあ・・・じれったいにゃ・・・にゃ?」


だがその時、マウは視線を感じその方向を見る。その先には


(ティスちゃん?)


ティスはマウを見ながら、無言で何か合図をしていた様だった


「・・・・?もしかして!」


その意図に気付き、左サイドの方へ視線を向けるマウ。そして!


「さあ今度は右サイドにボールが回った・・・おおっ!これは!!!」

「ぷるぷるぷる!!!」


ダッ!!!


「ここで業を煮やしたか!?DFのスライムB選手がボールを奪いに突っ込んでいく!だがこれは!!!」


そう、当然そうなれば後ろががら空きになる!

スライムBを引き付けたネヴィルズの選手はボールを中央に戻し、そして!


「ハリア選手ボールを中央に戻すと同時に前に走る!!!そしてボールはワンツーでハリア選手の下へ!!!」


ワンツーでボールを返そうとする敵選手、しかしその時ミルズが叫んだ!


「違う!それは!!!」

「ここだにゃ!!!」


バシッ!!!


その時!そのワンツーパスを突然現れたマウがカットした!!!


「パスカットだーーー!!!マウ選手得意のステルス性を活かした魔王軍の罠だったーーー!!!」

「しまった!!」

「ティスちゃん!!!」


そしてすかさず、マウはボールを前に送る!ボールを受け取ったのは!


バシッ!


「ナイスパス・・・!」


そう、マウにパスカットを指示していたティスだった!


「ボールは左サイドのティスプリア選手へと渡ったーー!しかしティスプリア選手は今大会ほとんどボールを持っていません!はたしてどんな動きを見せるのかーーーー!?」

「それじゃ、本気でやる」


ボールを受け取ったティスは左足でボールを持ち上げる、そしてなんと!


シャアアアアアッーーー!!!


「な!なんだあれはーーー!!!ティスプリア選手!なんと「滑っている」!芝生の上を片足で滑っているぞーーー!!!」


よく見ると、ティスの足元だけが凍ってスケートリンクの様になっている!

そしてティスは、右足だけでそのリンクを滑って移動している!


「お、追いつけない!!」

「早い!!ティスプリア選手左サイド一気に駆け抜け・・・いや、滑り抜けていくーーー!!!」

「この方が楽だし走るより3倍は早い」


圧倒的スピードでサイドを上がるティス!

そしてフリーになったティスは!


「ミケ!」


中央へ高い球を上げる!ミケへのセンタリングだ!!!

ミケでしか飛びつけない高高度のパス!だがそれは!!!


「結局は同じパターンのシュート!止められる!!!」


ネヴィルズのGKは上空のミケのヘディングに備え構えている!そして!!!


「うーーーーにゃ!!!」


ドグォッ!!!


「ミケ選手得意の高高度からの強烈なヘディングシュート!!!だがしかしこれは!?」


ミケはなんと、空中でゴールに背を向けてヘディングを放った!つまり!


「ミケ選手ゴールと逆方向へシュート!ボールは地面に・・・いや!ここに滑り込んでくる選手が一人!あれは!!!」

「本気って言った!」

「なっ!?」


左サイドからのセンタリングを送った時点で、ティスは役割を終えた駒として敵選手の認識から外れる

さらにミケへの高高度のパスにより、敵選手の視線は上空へと集中する

二重の意味で敵の認識から消えたティスは、その隙に中央へ高速移動を完了していた。そして!


ドガァッ!!!!!


「ティスプリア選手!ミケ選手のパスをノートラップでシューーーート!!!GKイルマ選手このボールに飛びつくが!!!」


ティスの意表を突くシュートに対し、敵GKは一瞬反応が遅れた

そしてその一瞬が命取りになる!ティスのシュートはGKの手の先を抜けて!


バシュッ!!!


「ゴーーーーーーーーール!!!ティスプリア選手のノートラップシュートがネヴィラネヴィルズのゴールに突き刺さったーーーーー!!!!!」

「やったにゃ!ティスちゃん!」

「ぶい・・・(ドヤァ)」


ティスに抱きついて喜ぶミケと、いつものぼーっとした感じで立ったままのティス

だがその顔は、見る者が見れば明らかに浮かれている様に見える


「おおっしゃあ!これで同点!次は逆転だ!!!」

「「おお!!!」」






ここに来て同点に追いついた俺達、白熱する試合展開に会場のボルテージも上がっていく!


「さあ!点数は1対1!ここに来て試合は振り出しに戻りました!!!どちらが勝つのか全く予想出来ません!!!」

「もう一点取ってこっちの逆転勝利だ!」

「ここで止めてカウンターで逆転です!」


中央では激しいボールの奪い合いが続き!その間も時間は刻々と過ぎていく!


「ここにゃ!バージョンB!!!」

「あーっと!ここでリィ選手のセンタリング!ボールは上空へ!!!」

「うにゃ!!!」


そしてミケはボールを後ろへ落とし!ティスがそこへ走りこむ!!!

先程得点を決めた、ティスのトライアングルシュートだ!!!


「これで逆転!!!」


ドグォッ!!!


ティスの放った強烈なシュート!だが!!!


「くっ!!!」


バシッ!!!


「おおーーーっと!!!GKイルマ選手!!かろうじてはじいたーーー!!!」

「くそっ!二度目は無いって事かよ!?」


そしてこぼれだまを拾ったネヴィルズの選手が前へボールを送る!!!


「さあ!今度はネヴィルズのカウンターだーーー!!!ボールは右サイドから上がっていき!ここで中央へ折り返す!!!」

「ここで絶対止めるにゃ!!!」


敵選手の前へと立ちはだかるマウ!だが!!!


「おっと!ここでバックパス!!!」


バックパス?いや確かこのパターンは!!!


「やばい!!!ミルズだ!!!」


前半に先取点を決めた時と同じ形!バックパスに走りこんで来たミルズがシュート体勢に入る!!!


「残り試合時間は僅か!これで終わりですよ!!!」


そして強烈なシュートが放たれようとした、その瞬間!


「スライム達!!!」

「「ぷるぷるぷる!!!」」


ドグォッ!!!


飛び込んできたスライムAとBが二人がかりでこのシュートをブロックする!だが!!!


バキィッ!!!


ミルズの放ったシュートはスライム達のパワードスーツの脚部をへし折って飛んでいった!!!


「出たーーーー!!!ミルズ選手の超強烈なロングシュート!!!これは決まったかーーーー!!!???」

「ギガス!!!!!」


魔王軍のゴールへ向けて真っ直ぐ飛んでいくミルズのシュート!

前半ではギガスの腕を吹っ飛ばし、今はスライム二人がかりのブロックをも吹っ飛ばした威力!!!


「・・・ですが!勢いは僅かに弱まったようです、それならば!!!」


この強烈なロングシュートに飛びつくギガス!そして!!!


ギャリギャリギャリギャリッ!!!


「な!なんと!!!ギガス選手!!ミルズ選手の超強烈なロングシュートを胴体で受け止めたーーー!!!」


ビシッ・・・バキッ・・・!


あれ程の威力のシュートだ、ギガスのボディは削れ表面にヒビが走る!だが!!!


「損傷甚大・・・とは言え」


ポトン・・・


ギガスの胴体へ突き刺さったボールはその回転を止め、地面へと転がった


「ゴールは守りました、魔王殿」


そしてギガスは、ボールをマウへと渡す


「反撃です!!!」


そこから、マウから俺へとボールが回る


(残り時間はあと僅か、このままなら延長戦だ。しかし・・・)


俺はチラリと後方を伺う

後方ではパワードスーツの脚部を破壊され立ち上がれないスライム達、ギガスの損傷も酷い


「延長戦に入ったら勝ち目は無い・・・ここで逆転するしかない!!!」


そう言って俺は中央のウナへとボールを回す!


「分かってるにゃ!分かってるけど・・・!!!」


攻めの起点であるウナが周りを見渡す、しかし・・・!


「ここに来てネヴィルズ鉄壁の守り!!!全く攻め入る隙を与えません!!!」


(リィもティスちゃんもマークが付いてるにゃ、アリアちゃんはシュートを打てないし。こうなったら自分で中央を・・・)


攻めあぐね一瞬動きが鈍るウナ、だがそこへ!!!


「ウナさん!!!」

「えっ?」


ドガァッ!!!


「にゃ!!??」


強烈なスライディングタックルを食らいボールを奪われてしまうウナ!ボールを奪ったのは!!!


「油断大敵という事ですよ!」


そう、ミルズだった!!!


「そして!!!」

「あーーーーっと!!ボールを奪ったミルズ選手すかさずシュート体勢に入るーーー!!!」


(マズイ!!!もうギガスは動けない!!!あのシュートを打たれたら負けだ!!!)


そしてミルズが足を振り下ろす!その瞬間!!!


「このシュートだけは撃たせません!!!!!」


ドグォッ!!!!!


「なんと!!アリア選手がブロック!!!だがこのシュートはスライム選手の足を吹っ飛ばす程の威力だぞーーー!!!」


ボールを挟んで二人のパワーが激突する!!


グググググッ・・・!!!


「くっ!!!」

「勇者パワーーー!!!全開ですっ!!!!!」


アリアの左目が赤く輝く!!そして!!!


ドグオンッ!!!!!


「何ィッ!?」

「と!止めたーーー!!!アリア選手!!ミルズ選手を吹っ飛ばしてこのシュートをブロックしたーーー!!!そしてーーー!!!」

「これで決めます!!!!!」


すかさずシュート体勢に入るアリア!!!

アリアならこの距離でも直接ゴールを狙える!しかし!!!


(コースが無い・・・!!!)


余りにも強力すぎる為、シュートコースが限られてしまうアリアのシュート!

足を振り上げたまま思考するアリア!!!


(どうすれば・・・どうすれば・・・!!??)


その時!!!


「アリアーーーーー!!!打てーーーーー!!!」


俺の叫び声がグラウンドに響き渡った!


「ソーマさん!?でも!!!」


シュートコースが無い!!!

だが続けて俺が言った言葉は!!!


「当てろーーーーー!!!」

「なっ!!??」


その俺の言葉に、困惑した表情を見せるアリア


(当てろだなんて!そんな事をしたら相手選手は怪我じゃ済まない!そんな命令をソーマさんがするなんて・・・!!!)


だがその瞬間、アリアの思考は逆に冷静さを取り戻していく


(いや、そうだ。ソーマさんがそんな命令をするはずがない。だとするなら・・・当てる?何に?)


もう一度ゴールを見据えるアリア、そして!!!


「分かりました!!!ソーマさん!!!」


ドグォッ!!!!!


ゴールへ向けてアリアのロングシュートが放たれた!!!


「アリア選手ロングシュートーーーーー!!!このシュートにはネヴィルズDF陣反応出来ないーーー!!!」


バッ!!!


「くっ!!!」

「GKイルマ選手飛びつくが届かない!!!これは決まったかーーーー!!!???」


アリアのシュートには誰も触れる事が出来ない!だが!!!


ガンッ!!!!!


「ゴ・・・!!!ゴールバーだーーーーー!!!!!アリア選手のロングシュートはまたしてもゴールバーに当たって跳ね返ったーーー!!!」

「ぎにゃーーーーーおしいにゃーーーーー!!!」


頭を抱えながら叫ぶリィ!だがその時!!!


「そして跳ね返ったボールは・・・あ!!!あれは!!!!!」


その跳ね返ったボールに誰よりも早く反応していた選手が一人居た!!!それは!!!


「ソーマさん!!!「当てました」!!!」

「ああ!!ナイスだ!!!アリア!!!」

「ソーマ選手だーーー!!!ゴールバーに当たって跳ね返ってきたボールに誰よりも早く向かっていたーーー!!」


跳ね返ってくるボールに向かって突っ込む俺!

試合終了直前!!!もはやチャンスはここしかない!!!


「おとうさん!!!」

「ソーマさま!!!まさかあのボールを直接!?」

「ですがそんな高等技術!!!出来るのですか!?魔王様!!」


俺の行動に口々に叫ぶ魔王軍幹部達!それに対し俺は!


「出来るのかだと!?そんなの・・・!!!」


そう言いながらオーバーヘッドキックの体勢に入る!

だが、そのタイミングは全くボールに合ってない!!!


「出来るわけねーだろ!!!だから!!!!!」


そして叫ぶ!!!


「撃てーーーーー!!!ウラァァァァァムッ!!!!!」

「ッ!?」


その瞬間!コンマ数秒にも満たない時間で、ウラムはその言葉の意味を理解した!!!


「全く無茶な事を考えますね・・・ですがそういう事なら遠慮なく!!!」


そして!!!


疾風螺旋スパイラルウインド!!」


ゴオッ!!!


ウラムの手から竜巻が放たれた!!!


「にゃ!!攻撃魔法!!??攻撃魔法は禁止されているんじゃ!!??」

「いいえ、禁止されているのは「敵選手への」攻撃魔法です。これは・・・」


ウラムの放った攻撃魔法!

その標的はオーバーヘッドの体勢に入った俺だ!!!そして!!!


ゴオオオオオッ!!!


「うおああああああっ!!!!!」

「これはまさかの味方への攻撃だーーーーー!!!ウラム選手!!味方のソーマ選手を攻撃魔法で吹っ飛ばしたーーー!!!だがしかしこれはーーー!!!」


オーバーヘッドの体勢のまま高速で回転し吹っ飛んでいく俺!!!だがその先にあるのはゴールバーに当たって跳ね返ってくるボールだ!!!


「足を伸ばしてください魔王様!!!」

「分かってるっつーの!!!!!」


そして回転する俺の足がボールを捉えた!!!


ドガッ!!!!!


「オーバーヘッドキックだーーーーーー!!!!!」


凄まじい速度でゴールに向かって飛んでいく俺のシュート!


「GKイルマ選手これに飛びつくーーー!!!」

「くっ!!!」


必死に手を伸ばす敵GK!!だが僅かに届かず、そして!!!


バシュッ!!!!!


「ゴーーーーーーーーーーーーーーーール!!!!!!ソーマ選手渾身のオーバーヘッドキックが決まったーーーーーーーー!!!!!!」


ピッピッピーー!!!


「そして!!!試合終了ーーーーーー!!!!!魔王軍試合終了間際の大逆転ーーーー!!!!!第一回セレンディアカップの勝者は魔王軍だーーーーーー!!!!!」


そしてスタジアムを、割れんばかりの歓声が包んだ!!!


「ソーマさまーーーーー!!!!!」

「おとうさん・・・・!!!!!」


飛びついてくる二人の幹部、だが・・・


「わ・・・分かったから今は止めてくれ・・・気持ち悪い・・・」


高速回転して吹っ飛んだ俺の平行感覚は、非常にヤバイ事になっていた


「まあ自分で望んだ事ですし、仕方ありませんね。毎度の事ですが無茶というか・・・ただの自爆と言うか」

「勝てばいいんだよ・・・勝てば・・・」


フラフラになりながらそう返答する俺、そして勝利に沸きあがる魔王軍の面々

その時、それを遠くから見ていた影が二つ


「チッ・・・行くぞ」

「は・・・はい・・・」


こうして、セレンディア初のサッカー大会は

俺達の勝利で終わりを告げたのだった

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