魔王とネヴィラネヴィルズの力
:魔王とネヴィラネヴィルズの力
そして翌日
満員のスタジアムは熱狂に包まれていた
「さあ!ついに始まります!第一回セレンディアカップ決勝戦!魔王軍対ネヴィラネヴィルズ!!!」
その実況の宣言と共に選手達が入場し、歓声が上がる!
「今大会、圧倒的な強さで決勝まで勝ち進んできた魔王軍に対し。毎試合、奇跡の逆転劇で勝ち上がってきたネヴィラネヴィルズ!下馬評通り魔王軍が勝利するのか!?はたまた、決勝でもネヴィルズが逆転劇を見せてくれるのか!?まもなくキックオフです!!!」
そしてしばらくして、キックオフの笛が鳴り試合が始まる!
ピィーーーッ!
「さあ!試合が始まりました!まずは魔王軍のボールでスタートです!ボールを持つのは魔王軍中盤の基点ウナ選手!」
まずはウナがドリブルで駆け上がるが、そこにすかさず敵選手がチェックに付く!
「まずは中央から行くにゃ!」
いつも通りに突破を図るウナだったが!
「にゃ!?」
巧みにボールを操り左右へ揺さぶりをかけるウナ!しかし、敵選手はこれに付いていきドリブル突破を阻む!
「ウナが抜けないにゃ!?」
マウが驚きの声を上げる、だがその時!
「ウナ!」
そこに右サイドから声がかかる!
「リィ!」
一瞬の隙を突いて右サイドへボールをあげるウナ!そしてそこにリィが走りこむ!
「さあ!右サイドのリィ選手にボールがわたった!魔王軍の黄金パターンだ!!!」
ウナからのボールを受け取るリィ、だが敵選手のチェックもすぐに付く!
「ぶち抜いてやるにゃ!!!」
サイドライン際を凄まじいスピードで駆け上がるリィ!このスピードに追いつける選手など存在しない!
「あとはミケにパスすればゴールにゃ!」
そしてすかさずセンタリングの体勢に入るが!
「にゃ!!??」
「おーっとリィ選手パス出来ない!」
なんと敵選手はリィのスピードに付いて行きパスコースを塞いでみせた!!!
「人間がなんでこんなに速く・・・!信じられねーにゃ!」
敵選手を突破出来ずボールが止まる!だがそこへ!
「リィさん!」
「ウラム様!」
右サイド際に上がってきたウラムにバックパスを送るリィ、そしてウラムはボールを受け取るとすかさず!
「ミケ!」
リィの代わりにセンタリングを上げた!
「ウラム選手中央へボールを上げるーー!これは魔王軍のチャンスボールだ!!!」
ウラムが上げたパスの先にはミケが!競り合いに向かう敵DF!
「この高さなら届く!!」
しかし!ウラムが上げたパスはミケの得意な高高度のボールではなく、普通の選手でも飛び上がれば追いつける高さだ!だが!
グンッ!
「・・・!!!なんとボールが曲がったーーー!!!これはミケ選手へのパスではない!!!」
カーブがかけられていたボールはミケへのコースを外れる!そして曲がった先に走りこむのは!!!
「ゴールが見えたのなら!!」
「これは!アリア選手へのパスだーー!!!」
そして足を振り上げシュート体勢に入るアリア!だがそこへ走りこむ選手が一人!!!
「フフッ・・・」
「・・・!!!」
アリアの正面に立つミルズ!だがアリアは構わずシュートを放つ!!!
ドグォッ!!!
「出たーー!!!アリア選手の弾丸シュート!!!ミルズ選手飛び込むが間に合わない!!!」
そしてアリアのシュートは真っ直ぐにゴールに飛んでいく!!!
「よし!まずは1点!!!」
俺はゴールを確信する!だが!!!
ガンッ!!!!!
「ああああっ!!!なんと!ゴールバーだーー!!!アリア選手のシュートは僅かに枠を外れ、ゴールバーに直撃!魔王軍先取点ならずーーー!!!」
「なっ!?アリアが外した!?」
今までの試合、一度たりともゴールを逃した事の無いアリアのシュートが外れるなんて!
しかし、それに対してウラムの答えは
「いや・・・恐らく外れたのではなく、外させたのでしょう。あの一瞬・・・」
アリアがシュート体勢に入ったあの瞬間、目の前のミルズはわざとボールへの直撃コースに体を晒したのだ
しかし、アリアのシュートの威力は多少のブロック程度なら吹き飛ばしてゴールに突き刺さる程の威力だ
だがだからこそ、足の先ならともかく胴体や頭に直撃させれば怪我程度では済まない威力でもある
アリア自身それを分かっていたからこそ、咄嗟にシュートを「わざと外した」のだ
「しかし。もしアリアさんが外さずそのまま打っていたら?絶対に外してくるという確信があったのか、もしくは・・・」
「自分の身の安全を省みていないか・・・」
俺はそこに不気味な物を感じ冷や汗を流す
そして、ゴールバーに当たり跳ね返ったボールをネヴィルズの選手がキープし、右サイドにボールを回す
「さあ!今度はネヴィルズの攻撃だ!右サイド際をハリア選手が駆け上がる!先程の魔王軍の攻撃と同じパターンで意趣返しだー!!!」
右サイドから攻撃を仕掛けるネヴィルズ!DFのスライムBが敵選手に迫りそして!
「ぷるぷるぷる!」
強烈なスライディングタックルを放つ!だが!
ドンッ!
それよりも敵選手のパスの方が速い!
ボールは宙を舞う!
「さあ!ネヴィルズセンタリングが上がったー!!」
「うにゃ!!」
中央、ペナルティエリアに飛来するボール!
マウも競り合いに行くが届かず、敵選手がこのセンタリングに頭で合わせる!
ドガッ!!!
「スーリア選手ヘディングシュート!ボールは真っ直ぐにゴールに向かっていく!!!」
強烈なヘディングシュート!だがしかし!
「ギガス!」
「お任せを!」
バシッ!!!
このシュートをギガスは胴体から飛び出したロボットアームでガッチリと確保!シュートを防いだ!!!
「ギガス選手止めたーーー!!!さすが、今大会一度も失点を許していない魔王軍の守護神!!!スーリア選手のヘディングシュートをがっちりキャッチしたーー!!!」
「反撃です!」
すかさずギガスからマウ、そしてウナにボールが回る
ウナは周囲を見渡し、どこから攻めるか考えるが
「どこにも隙が無いにゃ・・・!」
「こっちの攻撃パターンを研究してきてるのか!?」
現代なら当然の話だが、この世界でもこんな近代的なデータ戦術を執ってくるとは
その後もなかなか攻めの形を作れない魔王軍だったが、敵選手のチェックを振り切りなんとかゴール前にボールを上げる!
「さあ!ゴール前にボールが上がった!!この高高度のボールは!!!」
「任せてくださいにゃ!!!」
遥か上空へのパス!届くのはミケだけだ!!!
「届かないなら対策しようが無いにゃ!」
「決めるにゃ!ミケ!」
「うーーーーにゃーーー!!!!」
ドガンッ!!!
そして上空から放たれるヘディングシュート!ゴールラインギリギリの位置に突き刺さるように落ちてくる!だが!!!
バシッ!!!
「にゃ!?」
「止めたーーー!!!ネヴィラネヴィルズGKのイルマ選手!上空からのヘディングシュートを完璧にキャッチングだーー!!!」
「よし!カウンターだ!!!」
そしてすかさず特大のパントキック!!!
ボールは大きく飛びハーフラインを超え、前線の敵選手へ渡る!!!
「あーーっと!今度はすかさずネヴィルズのカウンターだーーー!!!ドリブルで中央突破を図るーーー!!!」
「マズイ!!戻れ!!!」
敵選手の目の前に居るのはDFのマウとGKのギガスのみ!
「そんな簡単には抜かせないにゃ!!!」
敵選手へ向かっていくマウ!だが敵選手とぶつかる直前!!!
ポンッ!
「にゃ!?パス!?」
敵選手は真後ろにボールを転がす、そして!
「おーっと!ここで後ろから走りこんでくるのはミルズ選手だ!!!」
敵選手が真後ろに転がしたボールに走りこむミルズ!そしてそのままシュート体勢に入る!!!
同時に、スタジアムの通路の影でほくそ笑む影
「ククッ・・・」
ドグォッ!!!
そして超強烈なロングシュートが放たれた!!!
「ロングシュート!?けどギガスなら!!!」
そう、こんな超遠距離のシュートに反応出来ないギガスではない!!!
「お任せを!!!」
ギガスはこのボールに飛びつくとロボットアームを展開させ、そして!
バシッ!!!
「ギガス選手ボールをキャッチーーーー!!!点は許しません!!!」
ガッシリとキャッチしてみせた!だが!!!
ミシッミシッ!!!
「こ!このシュートは・・・・!!??」
ギガスの腕にキャッチされながらもシュートの威力は死んでおらず、そして!!!
バキッ!!!
「なんとっ!!!」
バシュッ!
ミルズの放ったシュートはキャッチしたギガスの腕を破壊し、そのままゴールに突き刺さった!!!
「・・・・!!!ゴ・・・!!ゴーーーーーーール!!!!ミルズ選手の強烈なロングシュート!!!先取点はネヴィラネヴィルズだーーーー!!!!!」
ネヴィルズの得点に沸きあがる観客席、凄まじい大音量の歓声があがる!
「ギガスさんの腕を吹き飛ばす程の威力なんて・・・」
「ああ、まるでアリアのシュートみたいな威力だ・・・」
ただの人間がそんな事が出来る物なのか?それともやっぱり何らかの魔法を使っていたって事か・・・?
「申し訳ありません魔王殿・・・」
「いや、取られちまった物は仕方無い」
先取点を取られ0対1、だがこの程度なんて事はない
この程度の逆境、この世界に来てから何度となく経験してきている!
「取られたら取り返せばいい!気合入れていくぞ!!!」
「「おお!!!」」
そして、劣勢の状況から戦意を高めていく魔王軍の面々だったが、しかし・・・
「うにゃ!!!」
ドンッ!!!
「さあ果敢に攻める魔王軍!今度はMFのウナ選手が直接ゴールを狙う!!!」
ウナの放ったシュートは正確にゴールの端へ向かっていく!しかし!
バシッ!!!
「GKイルマ選手このシュートもキャッチーーー!魔王軍に得点を許しませんーーー!!!」
そして同時に
ピッピッピーーー!!
「ここで前半終了の笛だーー!試合はネヴィラネヴィルズが1点リードで後半を迎えます!!!」
魔王軍の面々は何度となくネヴィルズのゴールを脅かすが、結局得点には至らなかった
そしてハーフタイム中、俺達は控え室で後半の作戦を立てていた
「何なんにゃあいつら!決勝までの動きと全然違うにゃ!!!」
「実力を隠してたって事かにゃ・・・?」
「ええ予想以上の戦力の様ですね。加えて、こちらの攻撃パターンも研究されつくしているのでしょう」
「すみません・・・私が最初に決められていれば」
「にゃ!アリアちゃんのせいじゃないにゃ!私も一回もゴールを決められてないですし・・・」
こちらの得点の要であるツートップ、アリアとミケは完全にマークされてしまっている
特にアリアは最初の一回以降、一度もシュートを打つことが出来なかった
ボールを回しても敵選手の体を張ったブロックにコースを阻まれ、シュートを放つ事が出来なかったのだ
「さてどうするか・・・」
こちらの得点パターンは完全に読まれている、一体どうすれば・・・?
そう考えていた時、俺の服を引っ張る感覚・・・これは
「ティス?何か案でもあるのか?」
「単純な話。こっちの行動が読まれているなら、今まで見せたことの無いパターンで攻めればいい」
「まあそれはそうなんだが、今から新しいパターンってのは・・・」
「大丈夫」
そう言うとティスはミケを後ろから抱きかかえ
「にゃ?」
「たまには本気出す」
そう宣言した




