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魔王軍はお金が無い  作者: 三上 渉
第五章:魔王と海と怪獣大決戦
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魔王とたたかえ!ぼくらの魔王ロボ!

:魔王とたたかえ!ぼくらの魔王ロボ!


「な!なんじゃこりゃああああああ!!!」


ビーチの地下から現れた巨大ロボを前に、俺は絶叫する!

ビル程の大きさ、大体50メートル前後だろうか?

リアル系ではない、確実にスーパー系だ!

浜辺の地下にこんな物があったとは・・・


「っていやいやそうじゃなくて!ギガス!?これは一体!?」

「これこそ、「こんなこともあろうかと」開発してあった魔王ロボです」

「こんなこともあろうかと?」

「こんなこともあろうかと、です」


いや、確かに。その台詞はアニメじゃ鉄板だけど、実際に巨大ロボを作る奴はいねーぞ

なまじ作れてしまうから故の行動なのだろうか?もしかしたら俺はマズイ奴にマズイ知識を与えてしまったのかもしれない


「キュオオオオオオン!!!!!」


その時!突如現れた巨大ロボに対し警戒態勢に入っていたクラーケンが、威嚇の声をあげた!


「ってそうだった!今はとりあえずあのイカだ!」

「ええ、では魔王殿これを」

「ん?」


そう言ってギガスが手渡してきたのはコントローラーだった

十字キーにABボタンセレクトスタートとマイクという、レトロなコントローラーだ


「本来は有人仕様。実際に人が乗って戦うロボを目指したのですが、コクピット周りの問題を解決出来ず外部コントローラーで操作する仕様となりました」

「操作ってコレでか?」

「はい。と言ってもボタン類は全てダミーで、マイクによる音声認識で操作する事となります」


俺の持っているコントローラーに興味を示したのか、てくてくとティスが寄ってくる


「ロボ!動かせる!?」

「残念ながら登録されているのは魔王殿の声紋のみなので、魔王殿にしか操作出来ません」

「んう・・・」


ギガスの言葉に、ティスはとても残念そうに項垂れている

まあ、俺しか動かせないと言うならば仕方ない


「よし!んじゃとりあえず進めロボ!」


俺はコントローラーのマイクに向かって指示を出す

するとそれと同時に!


ズンッ!ズンッ!


ロボが前方にゆっくりと進み始めた!一歩一歩ゆっくりとクラーケンの方へ向かっていく!

その時、ギガスが俺に向かって言った


「ターゲットをロックしました、魔王殿攻撃を!」

「攻撃?攻撃ってどんな武器があるんだ?」

「それはこちらをご参照下さい」


ギガスが俺に手渡した冊子に書いてあったのは、武器の名前らしい羅列だった

とは言っても、どれが強いのか弱いのかなんて使ってみない事には分からない


「とりあえず・・・この一番上のインフェルノブラスターとかいうのを使ってみるか・・・」


そして、俺は手元のコントローラーに向かって指示を出す


「ロボ!インフェルノブラスターだ!」


・・・シーン


「あれ?」


だが、ロボは何の行動も見せず、その場に立ち尽くすだけだった

それを見たギガスが叫ぶ


「魔王殿!それでは駄目です!」

「駄目って何が?」

「それではロボット魂が足りません!!!」

「えーっと?」


その言葉に俺は目を丸くする

ロボット魂が足りない?いや、何を言ってるんだ?


「技名は腹の底から大声で叫ぶのがお約束!それがロボット魂と言う物です!!!」

「つまり技名を叫べと?ここで?」

「その通りです!」


おいおい冗談じゃないぞ!俺は29のいい大人なんだぞ!

それがこんな大勢のギャラリーの前で、ロボットの必殺技を叫べとかどんな羞恥プレイだよ!!!


「キュオオオオンッ!!!」


だがそんな事を考えている間にも、クラーケンはこちらへと近づいてきている!

迷っている時間は無い!!!


「仕方ない!インフェルノブラスターーー!!!」

「まだです!まだロボット魂が足りていません!!!」


そんな物の持ち合わせはねえ!だがこうなりゃヤケだ!!!


「インフェルノッ!!!ブラスタァァァァァァァァッ!!!!!」


俺が大声で叫ぶと!それに呼応したように魔王ロボは駆動音を響かせた!!!


「オオオオオオオオオッ!!!!」


そして構えると、胸から強烈な熱線を放った!!!


ゴオオオオオッ!!!


「ギュ!!ギュオオオオオオオン!!!」


熱線はクラーケンに直撃し、熱線に焼かれたクラーケンはその身をよじって悶えている!


「にゃああ!すごい威力にゃ!!!」

「どうやら効いているみたいです!!!」


インフェルノブラスターは予想以上の威力だ!これならあのイカを倒せるか!?

だがその時、ウラムが辺りを見回しながら言った


「というか魔王様?ちょっと暑くありませんか?」

「ん?そういえば、なんかどんどん暑く・・・」


そう思った瞬間!


ジュッ!


「熱ちいいいいいい!!!!!」

「ソーマさま?って!あつっあつっあついにゃーーー!!!」


俺達は砂浜の上でバタバタと飛び跳ねる!

なんと、砂浜の砂はまるで熱せられた鉄板の様になっていたからだ!


「ふむ、どうやらこの熱線のせいで温められたようですね。このままだと結界内に熱気が充満し、我ら全員蒸し焼きになってしまいます」


そういうウラムは、空中に浮かび難を逃れていた。この野郎!


「とりあえず攻撃は中止だーーー!!!」


俺がそう叫ぶと、ロボから放たれていた熱線が止まる

だがすでに、周辺の気温はサウナの様な暑さになっていた


「誰かなんとかしろーーー!!!」


俺がそう言った直後!


「・・・!」


ティスが腕をかざし!同時に周囲に雪が降ってきた!

そして蒸し風呂状態だった気温も、じょじょに戻っていく


「ティス・・・助かった・・・」

「問題無い。というか暑いのはダメ絶対」


なんとか助かったが危ない所だった

敵の攻撃じゃなく、自分の攻撃でやられるなんて笑えない


「もっと無難そうな攻撃は無いのか!?」


俺はギガスから手渡された冊子に目を通す


「コキュートスブリザードに・・・ライトニングコレダー・・・どれもこれも危険な予感しかしねえ!」


マトモな武器を探す俺に、ギガスが提案する


「では格闘戦を挑むというのはどうでしょう?魔王ロボには剣が装備されています」

「剣?えっと・・・これか!エビルソーーーーードッ!!!」


俺の声と同時に、魔王ロボは腰の辺りから剣の柄を取り出すと

そこから、折りたたまれていたらしい刀身が現れた!


ジャキィィィンッ!!!


「よし!行け魔王ロボ!イカ刺しにしてやれ!!!」

「オオオオオオオオオッ!!!」


ズンッ!ズンッ!ズンッ!


そして魔王ロボはクラーケンに向かって突撃していくと、右手に持っていた剣を振り下ろした!


ザシュッ!!!


「ギュオオオオッ!!」


魔王ロボの一撃はクラーケンの足の一本を切断する!

だがそれと同時に!別の足が魔王ロボに放たれていた!!!


「それはさっきミケの時に見たぜ!左腕でボディだ!!!」


クラーケンの足が魔王ロボを捕らえる前に!左手のボディーブローがクラーケンに突き刺さった!


「さらに!至近距離からのバルカン!!」


ギュィィィン・・・!ドガガガガガッ!!!


魔王ロボの頭部から弾丸が連続発射される!


「にゃ!?ミケの店から弾丸が!?」

「ギュオオオオオオオオッ!!!」


こちらの息を持つかせぬ連続攻撃に、クラーケンは怯んでいる!!!


「今がチャンスです魔王殿!今こそ必殺の一撃を!!!」

「おう!!!」


俺に呼応して魔王ロボが剣を下に構える!そして!!!


「必殺!!!Mの字斬りいいいいいいぃぃぃぃっ!!!!!」


ザンッ!ザンッ!ザンッ!!!ザアァァァァァンッ!!!!!


魔王ロボが放った一撃が、クラーケンの体にMの字を刻んだ!!!


「ギュオオオオオオオオオオオオッ!!!!!」


必殺の一撃を受けたクラーケンは海に沈んでいくと・・・!


ドッゴォォォォォォンッ!!!


何故か爆発した!!!


「何で!?」

「お約束ですから」


爆発を背に魔王ロボが勝利のポーズを決める、これもまあお約束というやつだろう

俺はそれ以上考えるのを止めた






クラーケンを撃退した俺は、額の汗をぬぐうと息を吐きだす


「ふー。とりあえずは撃退したって所か」

「お疲れ様です魔王殿」

「本当に疲れた・・・特に喉がな」


のど飴を舐めたい気分だ、というかこの世界にのど飴とかあるんだろうか?

俺がそんな事を考え、気を緩ませた瞬間!!!


「ギュオオオオオオオオオオン!!!」

「なっ!?」


海中に沈んだと思っていたクラーケンが突如海面に浮上すると!

全ての足を使って、魔王ロボをガッチリと捕まえた!!!


「まだ生きていたのか!?」

「本当にしぶといエロイカです!!!」

「とにかく振りほどけ!魔王ロボ!!!」


俺は手元のコントローラーに向かって叫ぶ!

そして魔王ロボはクラーケンの足を振りほどこうとするが・・・!


「オオオオオオオオッ!!」


ギシッ!ギシッ!


クラーケンの力は凄まじく!魔王ロボはその足をふりほどけない!

それどころか、クラーケンの足は逆に魔王ロボを締め上げていく!


ビシッ・・・バキッ・・・!


「・・・!!!装甲破損!!!」


クラーケンの締め付けに、バキバキと音を立てながら魔王ロボの装甲にヒビが入っていく!

各部が異音を立て、関節部などから煙が出始めた!


「各部サーボモーターの付加も増大しています!このままでは魔王ロボは数分で行動不能に陥ります!!!」

「おいおいヤバイんじゃないか!?どうすれば!?」


俺の言葉に、ギガスは何かを考え込むようにした後


「こうなればファイナルモードしかありませんね」


と言った


「ファイナルモード?要は切り札って事か?」

「はい。まさにファイナル、最終手段です」


あれか?一定時間パワーアップするモードみたいなもんか?

とにかく今はそれに頼るしか無い!

俺はそう考えると、すぐさま魔王ロボに命令した!


「よーし!ファイナルモード起動!!!」


俺はコントローラーに向かって叫ぶ!

そして魔王ロボの目が光ると駆動音が大きくなっていき、そして!!!


ピッ・・・30・・・29・・・28・・・


何やら・・・変な数字がコントローラーに表示された

その不穏な数字を見ながら、俺はギガスに問いかける


「ギガス?何か変なカウントが始まったんだけど?」

「ええ、ですからそれがファイナルモードです」


24・・・23・・・22・・・


そう話している間にもカウントは進んでいく、もしかしてこれは・・・


「魔王ロボの全エネルギーを放出し爆発、相手を道連れにする。それがファイナルモードです」

「自爆じゃねーか!!!!!」


ギガスの言葉に俺は大声でツッコミを入れる!!!


18・・・17・・・16・・・


だが、そんな事をしている間にもカウントは進んでいく!ヤバイ!!!


「総員退避ーーーーーーーー!!!!!」


そう叫ぶと!俺はその場から走って逃げる!!!


「えっ?えっ?一体何が?」

「いいからとっとと逃げるにゃ!」


混乱するミケの手を問答無用でウナが引っ張る!

観戦していた群集も蟻の子を散らすように逃げていく!!!

そして・・・!!!


3・・・2・・・1・・・


カッ!!!


魔王ロボが光に包まれたかと思うと、次の瞬間!!!!!


ドッグオオオオオオオオオオオオオンッッッッ!!!!!!!!!!


「うおあああああーーーーーー!!!!!」

「ぎにゃあああああーーーーー!!!!!」

「おお・・・!」

「大爆発ですーーーーー!!!!!」


凄まじい爆発によって、魔王ロボはクラーケン諸共コナゴナに砕け散った

その爆発を眺めながら、ギガスがボソリと呟く


「やはりロボは、散り際が一番美しい・・・」


こうして・・・

浜辺を襲った巨大生物の危機は、爆発オチというさらにタチの悪い危機によって退けられたのだった






そして翌日、浜辺はと言うと・・・


「名物クラーケン焼きにゃー、ここでしか味わえない味だにゃー」

「海の思い出にお一ついかがかにゃー」


通常通り営業していた、浜辺を賑わす喧騒も昨日と同じだ

唯一違うのは。ミケが管理していた海の家は吹っ飛び、変わりにクラーケン焼きの屋台が営業を開始したという事だ

美味しそうな匂いを漂わせる屋台の前で、リィとマウが売り込みをしている


「クラーケン・・・なかなかイケる」


そう言いながら、ティスは俺の隣でクラーケン焼きを頬張っている


(そんなに美味いのか、俺も後でミケに焼いてもらおう)


そんな事を考えながら茫然とビーチを眺めていた俺に、ウラムが話しかけてきた


「しかし危うくビーチ全てが吹っ飛ぶ所でしたね」

「ああ。アリアが咄嗟に防御魔法を使ってくれなきゃどうなっていた事か」


魔王ロボが自爆した瞬間

アリアがビーチ全体に張った強力な防御魔法のお陰で、客やビーチへの被害は皆無だった

しかし、外側の結界は粉々に砕け散ってしまった・・・のだが、ウラムに徹夜で張りなおさせた


「あれだけの強力なシールドをあんな広範囲に張れるとは、凄まじい魔力としか言いようがありませんね。アリアさん本当に人間ですか?」

「勇者ですから!ビーチの平和を守るのは私の使命です!!!」


ウラムの言葉に誇らしげに胸を張るアリア、だがその胸は非常に残念・・・


「ソーマさん?何か?」

「いや、なんでもない。クラーケン焼きも好評なみたいで何よりだ」


そう言った俺に対して、ウラムがやや呆れた様な声で言う


「あんな大爆発があったすぐ後に「じゃあ焼いて売ろう」なんて、魔王様も肝が据わってきたというか何というか・・・」

「いい加減こーいうロクでもない事にも慣れたんだよ。もう城が巨大ロボに変形しても驚かねーよ」


その時、横から声が聞こえてきた


「城をロボにですか・・・早速開発を進めます」

「それはマジで止めてくれ」


魔王ロボは滅んだ

だが第二、第三の魔王ロボは着々と開発が進められている

その恐怖に怯えながら、俺達の夏は続いていくのだった

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