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魔王軍はお金が無い  作者: 三上 渉
第五章:魔王と海と怪獣大決戦
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魔王と先にある物

:魔王と先にある物


「さーて、次はっと・・・」


引き続き、俺は視察に戻る

あとは、ウラムが管理しているリゾートホテルだが


「不安だ・・・」


そう言えば、俺が居ない間にウラムがどんな感じで仕事をしているのか見た事がない

もしかしたらアイツの事だ・・・


妄想ウラム「ルームサービスでございますか?申し訳ありませんが、当ホテルではその様なサービスは行っておりません。ですが、お客様が自分では何も出来ない豚だとおっしゃるのであれば・・・サービスして差し上げるのもやぶさかではありませんが?」


なんて事になってないとも言い切れない

そんな不安を感じながら、俺はホテルのロビーに到着する

そこで俺の目に入ってきたのは・・・


「ウラム様、よろしければこの後お食事でもどうですか?」

「今日は私と付き合ってくれる約束ですよ、ウラム様」

「ウラム様、これ私の部屋の鍵です。今夜は朝まで、二人きりで過ごしていただけませんか?」


大勢の女性に囲まれたウラムだった、所謂モテモテという状態だ


「もちろん全てお付き合いしますよ。ですが私の体は一つしかありませんので、順番にという事で」


その間も、ウラムは次々と女性に言い寄られている

ウラムはその全てに笑顔で対処し、その度にウラムを囲む女性陣は恍惚とした表情を見せていた


(何やってんだアイツは・・・)


確かに顔だけ見ればイケメンだが、それにしてもこのモテっぷりは異常だ、何か変な魔法でもかかってんじゃないか?

その時、俺に気付いたウラムがこちらに声をかけてきた


「おや、魔王様ではないですか。何かご用でも?」

「用って言うか、ちょっと様子を見に来ただけなんだが。お前は何してんだ?」

「何と言われても。このホテルを預かる者として、宿泊客の方々を接客していたのですが」


俺とウラムが話している間、ウラムを囲んでいた女性陣は少し距離を置いて話が終わるのを待っている


「接客つーか、女性に囲まれてただけに見えたぞ」

「魔王様が羨むのは分かりますが、それに関しては私にはどうしようもありません」

「羨ましくなんてねーよ!つかどうしようも出来ないってなんでだよ」

「私が異性に好意を抱かれるのは産まれ持った能力の様な物ですので、言わば天性のカリスマ、フェロモンとでも申しましょうか。パッシブスキルなので、私自身にはどうしようもありません」

「どんなスキルだ!その無闇に自信過剰な所はお前らしいと言えばらしいが」

「自信がある事は確かですが、別にそれだけではありません。我々魔族には謙遜を美徳と考える様な感性が無いだけです」

「そう言うのは俺も無いけどな。それにしたって自信に満ち溢れすぎてやしないか?」

「私は天才ですので、大抵の事は出来てしまいますから。それゆえ、常に自信に満ち溢れているという訳です」


そう、平然と答えるウラム


(コイツは・・・)


だが確かに、コイツが何か出来なくて困っているなどと言った状況は想像出来ない

天才であると言う言葉は嘘ではない様だ

だがしかし、それなら・・・


「・・・つーか。そんだけ万能なら、全部自分でやれば良かったじゃねーか」


俺のその言葉に、少しだけ首を傾げながらウラムが言う


「全部とは?」

「魔王だよ、魔王。お前ならもっと上手くやれてたんじゃないか?魔族には商売の才能が無いとかいう話・・・ありゃ嘘だろ」


ああ、なるほどと言った顔になるウラム

そしてウラムは、俺の質問に答える


「さすが魔王様、お気づきになられていましたか。ええ確かに、私ならもっと早く確実に、魔王軍再建を果たす事が出来たでしょう」

「やっぱり出来るんじゃねーか、だったら」

「ですが、私に出来るのは「それだけ」なのです」

「それだけ?」


どういう事だ?ウラムの言葉に俺は疑問を浮かべる

魔王軍再建という目的を達成出来るのに、「それだけ」とは?


「ええ、「それだけ」です。私が見たいのは約束された成功ではなく、その先にある物なのです」

「先にある物?」


不可思議な事を話すウラム

そしてウラムは、その言葉を告げた


「私の予想を超える物、言わば「奇跡」と言った物です」

「奇跡?」

「ええ。先程申し上げた通り、私であれば確実に魔王軍の再建を果たす事が出来ます。ですが、奇跡を起こす事だけは出来ない・・・運命を超える物、神の計算をも覆す事象。それは、人間だけが起こせる物・・・私が求めているのは「ソレ」なのです」

「つまり。お前は魔王軍再建が目的ではなく、ただ「奇跡」が見てみたいってだけで俺を魔王にしたって事か?」

「ええ、その通りです」


それで自分ではなく、人間である俺を魔王にしたという事か

だが、その言葉には一つ腑に落ちない点がある

俺はその疑問を口に出す


「本当にそれだけか?」

「・・・フッ」


俺の質問を聞いたウラムが、ニヤリと笑った

その笑みは今まで見たそれとは違い、表面上取り繕った物ではなく

ウラムの本質とも言うべき場所から出た笑みである様に思えた


「・・・今の所は、それで構いません」


(それはつまり、今はそれ以上を語る気は無いという事か・・・)


俺の質問は、ウラムの根幹に少しながら触れていたらしい

やはりウラムの本当の目的は奇跡その物ではなく、「その先にある物」だと言う事だろう


(もしかしたらソーマくんなら、アイツの望みを叶える事が出来るかもしれない)


別れ際に、ラグナが言い残した言葉を思い出す

ラグナが言っていたアイツがウラムの事ならば・・・

だがあの時、ラグナは続けてこうも言っていた


(・・・いえ、なんでもないわ。そんな日が来ない事を祈っている)


ラグナは、俺が「アイツ」の望みを「叶えない事」を願っていた

もし・・・俺がそれを叶えてしまった時

俺が魔王軍再建を果たし、ウラムの言う「奇跡」を成し遂げたとしたら・・・

その先にある物は何なのか・・・?

ウラムの本当の望みを知った時、何が起こるのか?


(恐らくそれは・・・)


「その時」がいつかやってくる

俺はそんな予感を感じていた






「まあ私の事はそれぐらいでいいではないですか」

「ん、ああ・・・」


考え事をしていた為、返事が適当になった

まあ確かに、その事については今考えても仕方ないだろう


「それに。私にも少し、魔王様の事が分かってきましたよ」

「俺の事?」

「ええ。魔王様は・・・」


そうウラムが続けようとした瞬間、俺の携帯が鳴った


ピピピピピピッ!!!


「って、非常事態モードか!?」


携帯の着信音は普段と違うアラート音を奏でていた、一応設定しておいた非常事態用の着信音だ

俺は携帯を取る


「魔王殿、非常事態です!」

「ギガスか?何があった?」

「現在、このビーチに巨大水棲生物が接近しております!」

「巨大生物!?」

「はい。とにかく、今すぐビーチの方においで下さい!」

「分かった、今すぐ向かう!」


そして俺とウラムは、急いでビーチへと走り出した

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