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魔王軍はお金が無い  作者: 三上 渉
第五章:魔王と海と怪獣大決戦
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魔王と氷の女王オンザビーチ

:魔王と氷の女王オンザビーチ


「さて、次はっと・・・」


俺はアリアと別れ、視察に戻る

そして俺は次に、ビーチショップへ向かっていた

そこではパラソルや水着のレンタル、それに浮き輪やビーチボール等の販売も行っている

とりあえず思いつく限り色々詰め込んでみたが、まだまだ足りない物も多い


「観光スポットとして有名になれば、お土産なんかも売れるかもしれないな」


俺は店の改良案を考えながら歩く

しばらくして、俺はビーチショップの前に着いていた


「さーて、調子はどんなもんかな」


そして店のドアを開けると、忙しそうに働いているスライム達が目に入ってきた


「ぷるぷるぷる!」


店内は結構な客入りとなっており、特に水着のレンタルと更衣室の辺りは行列が出来ていた


「なかなか忙しそうだな、ティスは?」

「ぷるぷるぷる」


俺の質問を聞いて、スライムは店の奥に行くように促す

それに従い俺は店の奥にやってきた、すると


「あう・・・」


店の奥のスペースでティスが倒れていた!

俺はすぐさまティスに駆け寄って呼びかける!


「お!おいティス!大丈夫か!?」

「あ・・・」

「どうした!?何かあったのか!?」

「暑い・・・」

「・・・」


どうやら、ティスは暑くて倒れていただけだった様だ


「まあ暑いのは痛い程分かるが」


俺が着ているシャツは、既に汗にまみれ肌に張り付いてしまっていた

だが、そんな俺をティスがジト目で見ながら言う


「ううん。おとうさんは分かってない・・・」

「というと?」

「私は霧氷将軍ティスプリア、水と氷を司る幹部」

「そういえば、そんな肩書きだったような」

「つまりこのビーチとの相性は最悪・・・」


なるほど?

魔族の中でも特に暑さに弱いという事だろうか?


「おとうさんはもっと私を甘やかすべきー・・・」


そう言ってティスは、地面に大の字になって手足をバタバタさせる

ティスはどこから手に入れたのか、ゲームの柄が描かれたTシャツにホットパンツとかなりの薄着になっている

だが、それでも暑いらしい

そしてティスは上半身を起こし、着ているゲームTシャツを脱ごうとする


「いやいや、それは脱いじゃダメだ」

「うー・・・」


俺はTシャツを脱ごうとするティスを手で制する

さすがにそれ以上は公序良俗に反する


「さて、どうしたもんか・・・」


今からエアコンを取り付ける為に工事するわけにもいかない

いや、ギガスに頼めばすぐどうにかなりそうだが


「そうだ。じゃあちょっと、冷たい物を食べにいくか」

「冷たい物?」

「ああ、夏と言えば定番の食べ物だ」


そして俺はスライム達に店を任せ、ティスと二人で海の家へ向かう事になった






「ソーマさま?ティスちゃんも、何かご用ですか?」

「ちょっとな」


海の家についた俺とティスを、ミケが出迎える

続いて俺はミケに注文をする


「ミケ、カキ氷を二つ頼む」

「カキ氷ですか?確かソーマさまの世界の食べ物ですよね」

「ああ、材料は発注しといたはずだけど作り方は分かるか?」

「ええと、氷を専用の機械で削ってシロップをかけるだけですよね」

「そうそう。ってあまり売れてない感じ?」

「あまりこっちの世界の人間には馴染みが無い食べ物みたいで、まだ注文は来てないです」

「むう、そうか」


確かに、良く分からない物を食べたいという気にはあまりならないだろう

あっちの世界の物をこっちで作れば儲かるのでは?と考えたが

新しさや珍しさだけではなく、どうやってこっちの世界の人間に受け入れてもらえるかを考えないといけないわけか

俺がそんな事を考えていた時、ミケが二人分のカキ氷を持ってやってきた


「お待たせしました」


目の前にやってきた氷を、ティスは珍しそうに見ていた


「氷?」

「ああ。甘いシロップがかかっていて美味いぞ」


そう言って俺は、スプーンで氷をすくって一口食べてみせる

うむ。甘くて冷たくて、暑さに疲れた体を癒してくれる


「・・・ふむ」


ティスも俺の真似をして、カキ氷をスプーンですくい口に含んだ、そして!


「・・・!!!(アメイジング!)」


一口カキ氷を口にしたティスは、その瞳を輝かせる

そしてティスは、二口三口とカキ氷を食べていく


「あまり一気にかきこむと、頭がキーンってなるぞ」


キーン!


「・・・!!!」

「って言わんこっちゃ無い、大丈夫か?」

「・・・だが、これもまた良し」


ティスは気にせずカキ氷をかきこんでいく

そしてすぐに、器は空になった

ティスはすぐさまミケを呼ぶと言った


「ミケ、おかわり」

「ティスちゃんもう食べたんですか?ちょっと待ってて下さいね」


おかわりが到着すると、ティスは先程と同じ様に凄いスピードでカキ氷をかきこんでいく


「もう一杯」


そして、追加のカキ氷も一瞬で食べつくすと・・・


「もう一杯」

「は・・・はいですにゃ」


ティスはさらにおかわりを注文する

ティスの前に次々と空の器が重なっていく、もはやわんこカキ氷といった状況だ

積み重なった器の数を見て、俺は別の意味で頭が痛くなってきた

その時、それを見ていたお客さんの声が聞こえてくる


「すごいなアレ」

「俺らも注文してみるか?」


どうやらティスの食べっぷりに興味を引かれたのか、ぽつぽつとカキ氷を注文する客も出始めたようだ


(まあ、将来的な投資と思えば・・・)


これを気に異世界の人間にカキ氷が受け入れられれば良いのだが

俺がそう考えていたその時、ミケが慌てた様子で話しかけてきた


「ソーマさま大変です!」

「ん?どうした?何か問題か?」

「それが、氷が無くなりそうなんです」

「氷が?」


ティスが大量にカキ氷を注文した上、他の客からも注文がきた為

当初想定していた注文数を超えそうなのだそうだ


「んー。それはマズイな」


折角これからだというのに材料切れとは

日本ならともかく、この世界の浜辺で氷を調達するのは難しいだろう


(残念だが今日の所は諦めるしかないか、明日までになんとか氷を調達する算段を立てないと・・・)


その時、そんな俺とミケのやり取りを聞いていたのかティスが答えた


「そんなの簡単」

「ティス、どうにか出来るのか?」

「ん」


パキッ・・・パキパキパキッ!


おもむろにティスは人差し指に魔力を集中させると、その目の前に氷の塊が出来上がった


「おお!」

「さすがティスちゃん!」


そうかティスは魔力で氷を作り出す事が出来るのか、さすが氷の将軍と言った所だろう


「こうすれば早い・・・」


ティスは次々と氷を作り出していき、それを削ってシロップをかけて食べていく


「ハッ・・・これぞ完全な自給自足・・・無限のカキ氷!」

「シロップは別で用意しないとだぞ」

「残念・・・せっかく肩書きもカキ氷将軍ティスプリアに変えようと思ったのに」

「そんな夏だけしか活動しないアーティストみたいな肩書きは却下だ」


ともかく。ティスのお陰で氷の方はどうにかなりそうだ、シロップの方も自作でどうにかなるらしい

それからも、大量にカキ氷を食べ続けたティスは

数十分後、ようやく満足したのかスプーンを置いた


「ふう、カキ氷は最高」

「満足してもらえた様でなによりだ」


どうやら十分に涼めたらしい

暑さでぐだぐだになっていたティスの顔に気力が戻ってきていた、良かった良かった


「元気も出てきたし・・・この辺り一帯全部凍らせて、もっと涼しくする」

「俺達を殺す気か」


夏の浜辺はティスにとって天敵である様に

ティスも夏の浜辺にとっての天敵であるようだ

とりあえず、この商売を成功させる為

ティスに一言言っておく必要があるだろう


「ティス自重しろ」

「んう・・・」

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