魔王と男のサガ
:魔王と男のサガ
そして翌日、レジャービーチオープン当日
各々の準備を終えた俺達は、入場ゲートの前に集まっていた
俺達は雑談をしながら、オープンの時間を待つ
「しかしビーチに入場ゲートなんて必要だったんですか?」
「野生のモンスターが侵入してこないとも限りませんからね。このビーチの周辺は海も含めて結界で覆われており、このゲートはその結界の唯一の出入り口という事です」
「なるほど。安全に配慮したという事ですか」
ギガスの説明を聞いて、納得した様にウラムが頷く
だが、他に懸念があるらしく俺に質問する
「しかし、結界の維持にもコストがかかるでしょう?」
「そこはもちろん、回収させてもらう。しかるべき所からな」
そういって俺はニヤリと笑った
すでに計画は発動している、あとは結果を待つのみだ
その時、時間を確認していたギガスが言った
「魔王殿。そろそろ時間です」
「よし。じゃあ、営業開始だ!」
そして、俺の合図と共に入場ゲートが開かれた
それと同時に次々とビーチに流れ込む人々、客の入りは上々の様だ
「この世界で初の試みにしては、なかなかの盛況ぶりのようですね」
「宣伝は十分に行ったからな、スライム達のおかげだ」
「ぷるぷるぷる」
だがその時、やや困惑した様な表情でアリアが言った
「えっと、でも・・・。何故か、皆さん女性のお客さんばかりの様に見えますが」
「にゃ?そう言えばそうです、男性のお客さんが殆ど居ません」
アリア達が言う通り
入場してきた客は、そのほとんどが女性で
ちらほらと、子供を含めた家族連れの客が混ざっている程度だった
「ぷるぷるぷる」
その時、困惑していたアリア達にスライムが一枚の紙を手渡した
「スライムさん?これはビラですか?ええっと・・・」
それはスライム達に頼んで、各地で配ってもらった宣伝のビラだ
ビラには、開園日時場所等が記載されており
何の変哲もない、いたって普通のビラに思えた
中央に大きく書かれた文言をのぞいては
アリアがその文言を読み上げる
「女性客入場無料、水着レンタル無料・・・?」
その他にも子供客や家族連れについても書かれていたのだが、そちらの方に関心は無かったらしい
「どうりで女性客ばかりだと・・・」
「サイテーですにゃ・・・」
「おとうさんは女の敵?」
ビラを見た女性陣が、俺を冷ややかな目で見つめてくる
俺は即座に弁明をする
「いや待て!これも作戦の内なんだ!」
「作戦?」
ドドドドドドッ・・・・・・!
その時、遠くの方から地鳴りの様な音が聞こえてきた!
「にゃ!?な、なんですかこの音!?」
「近づいてくる・・・」
その音は、じょじょにこちらに近づいてくる様に大きくなっていった
ドドドドドッ・・・!!!
「来たか!ウラム!ギガス!迎撃準備だ!!!」
「ハッ」
「承知致しました」
俺の指示により、ゲート前で構えるウラムとギガス!
何やら緊張感を見せる俺達に、アリアが問いかける
「来るって・・・一体何が来るんですか!?」
「それはな・・・あれだ!!!」
遠くに見える土煙、地鳴りの音の発信源!
ドドドドドッ!!!!!
それは!このビーチに向かって走ってくる、大量の男性客だった!!!
「よし!迎撃!!!」
俺の合図と同時に、客を捌き始めるウラムとギガス!
「入場ゲートはこちらです!慌てず列になってお並び下さい!」
「入場料は1000セーレとなっております!お釣りのないよう、ご用意してお待ち下さい!」
ゲートに殺到した大量の客を、次々と捌いていくウラムとギガス!
そして、ゲートに殺到した男性客が全て入場すると
ビーチはあっという間に賑わい、大盛況となった
俺はそれを眺めながら、高らかに笑い声をあげる
「ハハハハ!計算通り!!!」
「水着の女性客が集まれば、釣られて男性客は勝手に集まってくるというわけですね」
「その通り!そして、こっちからちゃんと入場料を取れば、女性客を無料にした分の採算は十分以上に取れるって寸法だ!」
「さすがは魔王様!男性の心理をついた見事な作戦です!まさに魔王!」
「そう褒めるな!ハーッハッハッハッハッハッ!!!」
勝利の高笑いをする俺を横目に、女性陣はビーチに溢れかえった男性客を眺め呟く
「男の人って・・・」
「悲しい生き物ですにゃ・・・」
「馬鹿ばっか」
というわけで、オープン初日の売り上げはかなりの物となった
俺達は、臨時の拠点としてビーチのそばに作られた事務所に集まり、会議を行っていた
「ホテルは全部屋満室、パレニスの協力で作られた宿も大盛況のようです」
「宿の他に、屋台等の営業許可の打診も多数来ていますが・・・魔王殿、いかが致しましょう?」
「許可する。一応衛生管理だとかその辺も、まとめて伝えておいてくれ」
「良いのですか魔王様?我々が利益を独占するチャンスだと思いますが」
「俺達だけの力じゃ、この勢いがいつまで続くか分からないしな。今のうちに他の商人も取り込んで、ビーチそのものを拡大していく方針だ。そうすりゃ、俺達の取り分も増えるだろう」
ゆくゆくは、パレニス公認の観光ビジネスにしていければいいが
その為に、まずはコツコツ地固めをしていかなくては
その時、ミケが疲れた様子で言った
「にゃ~。海の家の方もパンク状態です~」
「む。それじゃあ、そっちの方にも人員を回すか」
「あ、大丈夫です!実は既に応援を呼んでいますから!」
「応援?」
「はい。レストラン魔王の方で働いてもらってる人員なのですが、こちらの方に来てもらうよう応援を要請しておきました」
ミケの暴走事件の後
店の負担を減らす為、ミケが自らスカウトしてきたコック達の事だろう
ミケの話によれば、ミケにも負けず劣らずの腕前のコック達との事
「そうか、ならそっちはミケに任せる。けど、もう無理するのはなしだからな。キツかったらすぐ俺に言ってくれ」
「はい!ソーマさま!」
そう笑顔で答えるミケ、これならまあ大丈夫だろう
「じゃあ、アリアとティスの方は何か問題あるか?」
「ビーチの安全管理については問題ないです!結界のおかげでモンスターが侵入する事はないですし、軽いいざこざ程度なら、私の方で対処できます!」
「ビーチショップの方も問題ない」
ふむ
少しキャパシティをオーバーしている箇所はあるが、全体としては順調な様だ
だが、サマーシーズン終了までのんびりしていられる時間は無い
今年のうちにビジネスモデルとして完成させてしまわなければ・・・
(そして、来年には・・・)
とそこまで考えて、自分がおかしな事を考えていた事に気付く
(って、いやいや。俺が魔王をやるのは1年だけだ、来年の事は俺には関係ないだろう・・・)
残り期間はあと8ヶ月と少し、その時俺は一体何処に居るのだろう?
ふとそんな事を考える
その時、考え事をして呆けていた俺の顔を覗き込みながら、アリアが心配そうに言った
「どうしました?ソーマさん、何か考え事でも?」
「え?ああ、なんでもない。別に大した事じゃないさ」
「そうですか?なにやら深刻そうな表情に見えましたけど」
「俺が?そんな顔してた?」
一体俺は、何をそんなに悩んでいたんだ?
そんな深刻になるような事は無い・・・はずだ・・・
「えっと・・・本当に大丈夫ですか?何か心配事があるなら力になりますよ!」
「ああいや、本当に大丈夫だ!心配無いから!」
俺はそう答えると軽く頬を叩く
とりあえず、今はそんな事を考えている余裕は無い
今考えるべき事は、如何にしてこの商売を成功させるかだ
「よし。じゃあ明日も張り切って働くとするか!」
そして俺は、胸につっかえたモヤモヤを振り払う様に明日へ気持ちを切り替えるのだった




