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魔王軍はお金が無い  作者: 三上 渉
第四章:魔王と二人のティス
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魔王と二人のティス

:魔王と二人のティス


「ん・・・?」


俺は目を覚ます、一体何が起こったのだろうか?

たしかラグナと視線が合った瞬間、いきなりフラフラとなって倒れたんだったか


「・・・ん?何処だここ?」


その時、周りの風景が一変している事に気付いた

辺り一面雪と氷に覆われた真っ白な世界、他には何も無かった

南極か北極か恐らくはそんな所だろう、しかしさっきまで俺は自分の部屋に居た筈・・・


「うおっ!意識したら急に寒くなってきた!!!」


俺の服装は部屋に居た時と変わっていない、このままだとあと数分もしないうちに凍死してしまう!

どうするか考えていた時、聞き慣れた声が聞こえた


「嫌な風景ね、それだけ強く刻み込まれてるって事かしら」


現れたのは、ティスと同じ姿をした女性だった


「えーっと、貴方は確かラグナさん・・・だっけ?」

「堅苦しいのは苦手なの、ラグナでいいわ新しい魔王くん」

「そうか?まあ俺もそう言うのは苦手だから良かった。それでラグナ、此処は一体?」

「ここは私の心の中よ」

「心の中?」


いい加減非常識な事態には慣れてきたが、今度は心の中と来たか


「貴方の魂を一時的に、私の中に取り込んだってわけ」

「おいおい!ちゃんと元に戻れるんだろうな!?このまま永遠に雪景色は勘弁だぞ!?」

「心配しなくてもいいわ、用事が済んだらすぐに元に戻してあげるから」

「用事?そういえば倒れる直前に何かを聞いたような・・・」


確か・・・テストがどーとか言っていた様な気がする


「ええ。これから貴方が魔王の座に相応しいか、テストさせてもらうわ」

「・・・テストって何をするんだ?」

「簡単な事よ」


そう言った瞬間、辺りの空気が凍る音が聞こえた


パキッ!ピキッ!


ラグナの周辺の空気が凍り無数の槍となっていく!どう考えても嫌な予感しかしない!


「私と勝負しなさい、それがテストの内容よ」

「やっぱりそうきたか!!!」


そう、これはこの手の試練となればお約束の展開と言えよう

だが俺は戦闘に関しては完全な素人、一般人。RPGで言うならレベル1だ!

試練を凌ぐどころか、戦闘にすらならない!

俺は即座に抗議の声を上げる!


「ちょっ!ちょっと待った!俺は戦闘なんて出来ないぞ!?普通の人間だ!!!」

「関係無いわね、貴方が魔王を名乗ると言うならばそれに相応しい実力を見せてもらうわ」


ラグナは全く、こちらの言い分を聞く気は無いようだ!マズイ!!!

こうなれば、俺の取れる選択肢は一つ!!!


(逃げるしかねえ!!!)


俺はその場から一目散に走り去る事にした!

逃げる俺を、あくまで冷静な目で見つめながらラグナが言う


「逃げるの?まあそれもいいわ。いつまで逃げ切れるか、試してみなさい」


パキッ!ピキッ!パキッ!


「ッ!!!」


頭上から空気が凍る音がした!

咄嗟に上を見上げると、そこにはやはり無数の氷の槍が形成されている所だった!

そして、逃げる俺に向かって氷の槍が降り注ぐ!!!


ドガガガガガガッ!!!


「うおおおあああああ!!!」


俺は全力で走る!さっきまで俺が居た場所に氷の槍が突き刺さっている様だが振り返る余裕も無い!

そんな事をしていたら即座に、俺は串刺しになってしまうだろう!ただただ全力で逃げ続ける!!!

そんな俺を眺めながら、ラグナが妖艶に微笑む


「あら?なかなかやるじゃない。でも何時までも逃げ続けられるかしら?」


ラグナの言うとおりだ、このまま何時までも逃げ続けられる訳が無い

だからと言って、正面から立ち向かった所で勝負にならない

つまり、今俺が取れる最善の手段は・・・


「・・・なるほど、時間稼ぎね。とにかく逃げ続け時間を稼ぎ、ウラムやアルゼアの子孫が助けに来るのを待っている、そんな所かしら?」

「っ!!!」


図星だ!俺の思考は完全に読まれている!

とは言え、俺には他に出来る事も無い

なんとか時間を稼ぎ続けるしか・・・


「でもそれは無駄よ。さっきも言った通りここは私の心の中、ウラム達が侵入する方法は無い」

「な!?」

「つまり・・・」


ドガガガガガッ!!!


その瞬間!俺の進行方向を塞ぐように氷の槍が降り注ぐ!

前方、右側、左側を塞がれ、残った後ろを振り向く。だが!


「助けは来ないわ」


そう言いながら俺の正面に立つラグナ、逃げ道を塞がれた俺はラグナと相対する


(逃げるのは無理だ、時間を稼いでも助けは来ない。だったら戦うしか?だが勝ち目は当然0%・・・)


そう、ただの人間の俺があの魔神に勝てる確率は0.01%もありはしない


「万策尽きたって感じかしら?」

「・・・!!!」


俺は全力で思考する!


(何か方法が・・・!まだ何か手が・・・!!!)


だが、起死回生のアイデアは全く浮かんではこない!

そしてラグナが呟く


「・・・じゃあ死になさい、貴方は魔王に相応しくなかった」


そして氷の槍が俺に降り注ぐ、今度ばかりはかわす事も出来ない

絶体絶命の状況に思わず目を瞑る!そして槍が降り注ぐ音が!!!


ドガガガガガッ!!!


地面を穿つ音がした、間違いなく氷の槍は放たれた・・・

だが痛みはなく、俺の意識も途切れてはいなかった


(一体何が・・・?)


恐る恐る目を開けた俺の視界に入ってきたのは、俺を庇うように立っている銀髪の女性だった






相対する二人の女性

共にこの白い世界に溶けいりそうな白い肌と腰まである美しい銀色の髪、全く同じ容姿の二人

だが、俺の目の前に立っていたのはラグナではなく


「大丈夫?ソーマ」


もはや見慣れた顔となっていた人物、ティスだった!


「ティス!!!ああ、なんとか・・・」


思いがけない救援に、俺は思わずホッとする


(ラグナは此処を自分の心の中と言った。であるなら当然、そこにはティスも居るという訳か)


その時、ラグナがティスに話しかけた


「あら?起きてたのティス」

「貴方は・・・私?」


不思議そうに・・・だが自分でも理解できない確信を抱きながら、そう問いかけるティス


「ええそうよ。今少し忙しいから、貴方はもう少し寝ていなさい」

「イヤ。貴方はソーマを殺そうとした、なら貴方は私の敵」


そう即答するティスに対して、今度はラグナが不思議そうに言った


「私は貴方なのよ?」

「関係無い。ソーマの敵は私の敵」

「そう、ならしょうがないわね」


その言葉と同時に、二人は戦闘態勢に入る!


「ソーマ、少し下がってて」

「ティス!」

「大丈夫、問題ない」


そして二人の戦いが始まった!

美しい二人の魔神が周辺の全てを凍らせていく!


ピキッ!パキッ!


「氷よ槍となり貫け」

「あら?私達に詠唱なんて必要無いはずよ」

「気分の問題」


ドガガガガガッ!!!


互いに同じ魔法で攻撃をしかける!二人の間で無数の氷がぶつかり合い砕けちった!


「互角・・・なのか?」


互いが放つ魔法の威力はほぼ互角らしく、ぶつかり合う魔法は両者の丁度中央で拮抗する形となった!


「このままじゃ埒が開かないわね・・・なら!!!」


フワッ・・・


「これは・・・?」


ティスを囲むように氷の結晶が舞い始める

それに一瞬気を取られたティスの足が止まった、次の瞬間!


「捉えたわよ!」


パチンッ!


そしてラグナが指を鳴らした瞬間、氷の結晶が互いに結合し瞬時に氷の檻と化した!


「・・・!」


すぐさま檻を破壊し脱出しようとするティス、だがラグナはその前に追撃の一撃を放っていた!


「判断が遅い!!」


ドグォオオオオンッ!!!


ラグナが放った強烈な吹雪!

その渾身の一撃は檻ごとティスを吹き飛ばす!!!


「ティス!!!」


視界が白で覆われる、ティスは・・・!?


「さて、結構強めに放ったけどどうなったかしら?」


パチンッ!


次の瞬間!ラグナの周辺の空気が凍り檻となった!


「ッ!?」


そして粉塵の中から放たれる一撃!先程のラグナと全く同じ攻撃だ!


「お返し」


ドオオオオオオンッ!!!


今度はラグナが檻ごと吹っ飛ばされる!完全な意趣返しというやつだ!

俺はティスに向かって叫ぶ


「ティス!大丈夫か!?」

「全然効いてない、余裕」


ティスがそう答えた、その時!


「まあ、そりゃそうよね。私なんだから」


粉塵の中からラグナが現れる!どうやらラグナにもダメージは無いようだ

二人の実力は全くの互角という事なのだろうか?

ティスとラグナは、互いに臨戦状態を維持したまま向かい合う


「さて、分かってはいたけどお互いに相性は最悪。このままだと、百年でも千年でも戦い続ける羽目になりそうね」

「ソーマを開放すればそれで終わり」


ラグナの言葉に対してティスがあっさりと言う、しかし


「それは出来ないわね、まだテストは終わってないわ」

「だったら何時まででも戦い続けるだけ」

「それも嫌ね。仕方ないわ・・・少しインチキ臭いけど」


その瞬間!ラグナの周辺の氷が霧散し、そして今度は周辺の温度が一気に上がっていく!


「なんだ?急に暑く・・・まさか!!!」


そして、ラグナの周辺に現れたのは燃え盛る火炎の塊だった!


「じゃあ行くわよティス、今度の攻撃は耐えられるかしら?」

「ッ!!」


そして、ラグナが操る炎がティスに襲い掛かった!!!

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