魔王ともう一人のティス
:魔王ともう一人のティス
前回のあらすじ
なんかよく分からないうちにエロい展開になりつつあったとさ
(っていやいやいやいや!おかしいだろ!)
そう、何の理由も無くそんな事が起こるわけがない!
現実がそんなどこぞのギャルゲーみたいな展開になってたまるか!(すでに異世界転移してる件はスルー)
きっとさっきの言葉も何か別の意味に違いない、そうだ早とちりして先走るな四十万宗真!
とりあえずここは・・・
「えっと、するって何を?」
俺は無難に、ティスにそう聞きなおす事にした
するとティスは少し目を丸くし不思議そうな顔をしたが、また先程の艶やかな笑みを浮かべ
「何をって、それはもちろん・・・」
突然!ぐいっと俺の手をひっぱりベッドに押し倒す!
「うおっ!」
そして、倒れた俺に向かってすかさず馬乗りの姿勢になり
「気持ちいい事に決まってるでしょ」
と言った
(ああ・・・なるほど)
どうやら全く何の誤解でも無かったようだ良かった、いや良くない
俺は体を寄せてくるティスの肩を掴んで押しとどめる
「いやいやいやちょっと待て!なんでそうなる!?」
「何?したくないの?私のカラダじゃ不満?」
「それは十分魅力的・・・ってそういう問題じゃなくてだな!」
「それなら何の問題も無いでしょ?大丈夫、全部お姉さんに任せておけばいいから」
(お姉さん?一体それはどういう?)
俺はティスの言葉に疑問を抱くが、そうしている間にもティスは俺の上にしな垂れかかってこようとする
「いや!だからとにかく待て!」
「もう待たない、いいから大人しくしなさい」
そう言ってティスは俺の手を振りほどくと、強引に俺に覆いかぶさってくる
体全体に心地よい重みを感じ、俺は動けなくなる
(ヤバイ・・・これは・・・)
口では否定していたものの、妖艶な美女に迫られて俺の理性もほぼ限界と言った状況だった
そして俺は状況に流されるように、目の前のティスに向かって唇を重ね・・・
バンッ!!!
ようとした瞬間!勢いよく俺の部屋のドアが開け放たれた!
「ソーマさん!怪しげな魔力を感知しました!無事ですか!?」
部屋に飛び込んで来たのはアリアだった!
そしてアリアは、ベッドの上で今正に重なり合おうとしていた俺とティスに視線を向ける
「え?」
「あ・・・」
「あら?」
何とも言えない静寂が辺りを包む、
だが次の瞬間、アリアは一瞬で顔を真っ赤にして叫んだ
「ななな!!何をしてるんですかソーマさん!!!」
そう言うと、アリアは顔を真っ赤にしたままベッドの上から俺を引き摺り下ろす
そして、床に俺を座らせると説教をしだした
「その・・・ソーマさんは大人の男性ですし・・・そういう事もあるとは思います。でも!なんでよりによってティスちゃんを連れ込んでるんですか!?犯罪ですよ!?分かってますよね!?」
「いや、違うんだアリア!なんかよく分からないうちになんかこういう事に・・・」
「言い訳は無用です!いいから大人しく反省してください!!!」
俺のしどろもどろな釈明をバッサリ切り捨てるアリア、そして・・・
「ティスちゃんも何か言って・・・」
アリアはティスの方を向き・・・
瞬間、冷静さを取り戻した
「折角良い所だったのに、残念」
何故なら、そこに居たのは普段の無表情だが素直なティスではなく
艶やかな笑みを浮かべた妖艶な美女だったからだ
「貴方・・・誰ですか?」
そう言うとアリアは一瞬で警戒態勢に移る!
灯りの消えた部屋にアリアの左目が赤く輝いている
「人に名前を尋ねるときはまず自分から名乗るべきじゃない?」
「・・・私はアリア、勇者アリアです!」
「勇者・・・?金色の髪に、それにその赤い目・・・」
ティスの姿をしたその女は、しばらく考え込むようにしていた
そして。アリアに向かってこう言った
「貴方、もしかしてアルゼアの関係者?」
「何故その名前を!?」
「ああ、やっぱりそうだったのね。何?アルゼアの妹とか?・・・ってそれじゃ色々おかしいか。って事はまさか娘とか!?」
「いえ・・・違いますが・・・」
アルゼア?どうやら人物名のようだが
俺はその名について、アリアに質問する
「そのアルゼアって人、誰なんだ?」
「えっとアルゼア・・・アルゼア・ハーフェン様は、私達勇者の一族の最初の勇者、初代勇者と呼ばれている方です」
「初代勇者?って事はつまり・・・」
「はい、私の遠い祖先にあたる方です」
そのアリアの言葉を聞いて、謎の女がぴくっと反応した
「遠い祖先・・・?」
そして!一瞬でアリアに向かって間合いを詰める!
「なっ!」
そして、至近距離からアリアの全身をジロジロと眺めまわす
「ふむふむ・・・なるほど。魔力の貯蔵量も伝達効率もアルゼアとは比べ物にならないわ。もうここまで来ると半分神の領域って感じね」
「な、なんなんですか!?」
「全く、あの正義バカの子孫がこんなに強くなってるなんて・・・。ある意味ではあの計画は成功してたって事かしら・・・?」
「っ!!!」
その瞬間!アリアがその女を振り払う様に手刀を放つ!
だがその女は難なくそれをかわすと、アリアとの間合いを離した
「一体貴方は何なんですか!?」
「私?ああ、そう言えば名乗ってなかったわね。私は・・・」
そう言って、ティスの姿をした女が名乗ろうとしたその時
「なにやら懐かしい気配がすると思えば、ラグナじゃないですか」
突然、ドアの方から声が響き渡る
そして、部屋の入り口から現れたのはウラムだった
「お久しぶりですねラグナ」
「ウラム・・・、ええ久しぶりみたいね」
その時、ウラムの背後からもう一人の幹部が姿を現しラグナと呼ばれた女性に挨拶をする
「お久しぶりです、ラグナ殿」
「もしかして、そっちはギガス?・・・ふーん、貴方はそっち側だったという事かしら?」
「そうなります」
一見和やかな挨拶に聞こえるのだが、それと反対に剣呑だった部屋の雰囲気が一層ピリピリした物になる
そして、もう一人の幹部も到着した
「にゃあ・・・こんな夜に何事ですか・・・?」
寝ぼけ眼にパジャマ姿のミケが部屋に入ってくる。その時!
「!?」
「あれ?ティスちゃん?」
ラグナの眼が怪しく輝くと次の瞬間!ラグナの姿が消えた!そして!
「何この娘!?カワイイ!!!」
「にゃ!?にゃ!?にゃああああああ!!!」
ラグナは一瞬にしてミケを捕まえ、モフり始めていた
「その猫娘は震央将軍ミシュケイオスです、最近魔王軍の幹部になりました」
「よくこんな逸材を見つけて来たわね!グッジョブよウラム!!!」
そう言ってミケをモフり続けるラグナ、先程までの剣呑な空気もどこへやら
俺も混ざりたい所ではあるが、とりあえずウラムに事情を聞く事にする
「えーっと、あれは誰なんだ?ウラム」
「彼女はラグナティス、氷獄将軍ラグナティスです。以前の魔王軍幹部の一人ですよ」
だが、それを聞いたアリアが不思議そうに問いかける
「でも見た目は完全にティスちゃんですよ?」
その言葉にウラムは眉間に皺を寄せながら、言葉を紡いでいく
「それについてはやや説明がややこしくなるのですが」
「と言うと?」
「彼女はもう一人のティスとも言うべき人物なのです」
「もう一人のティス?」
ミケをモフっている銀髪の女性、ラグナ
外見はどう見てもティスと同一なのだが、ウラムが言うには別人だと言う
だとするなら、ティスは何処に行ったのだろうか?
「つまり・・・どういう事だってばよ」




