魔王と自動車開発
:魔王と自動車開発
それから一週間程経った頃
プルルルルル!プルルルル!
俺が自室で書類整理をしていた時、俺の携帯が呼び出し音を鳴らした
(携帯が、誰だ?)
何故、異世界で携帯が鳴っているかというと
実はどうせ使えないならと、古い携帯を改造してトランシーバー代わりに使う事にした為だ
世界中に電波が飛ばせるわけではないので当然かかってくる相手も限られるわけだが、さて誰からだ?
「もしもし」
「魔王殿ですか?」
受話器の向こうから、落ち着いた男の機械音声が聞こえてくる
どうやら、電話の相手はギガスだったようだ
「ギガスか、何か用か?」
「例の物の試作型が完成しました、お時間宜しければラボまでお越し下さい」
その報告は、俺に取って予想外の物だった
俺は声を大きくすると問い返す
「え!?完成したのか!?もう!?」
「はい、詳しい説明は実機の前で致します」
「分かった、今すぐ行く!」
「承知致しました。ではお待ちしております」
プツッ
そして、携帯を切った俺はラボへ向かう事にした
まさか、もう完成するとは・・・
というわけで俺はラボへやってきたわけだが
「なんでお前らも来てるんだ?」
「何やら珍しい物が完成したそうじゃないですか、それは見ておく必要があると思いまして」
ラボには他のメンツも全員集合していた、こいつら暇なのか?
「お呼び立てして申し訳ありません魔王殿、それでは早速ですがご覧下さい」
そして、ラボの奥の扉が開き、その扉の先にあったのは・・・
「これが、魔力変換型エンジンを搭載したこの世界初の自動車!その試作型になります!」
そう、自動車だった!
「おお!よくこんな短期間で!」
そう、一週間前
ティスの工場を後にした俺は、あるアイデアを実現すべくギガスのラボへ向かった
そしてこの自動車は、その時に開発を依頼しておいた物なのである
(しかし、たった一週間で作り上げてしまうとは・・・)
そう驚嘆する俺に、ギガスが補足をする
「いえ。一から作り上げたというわけではなく、車体そのものは魔王殿が異世界より持ち込んだ自動車をそのまま流用しております」
「そういえば、見た目はまんまだな」
「ですがエンジンは全くの別物となっています。この魔力変換型エンジンはその名の通り魔力を変換して動きます」
「ふむふむ」
そして、ギガスは車の設計図らしき物を広げて詳しく説明を続ける
「実は。以前から魔力でエンジンを動かす試みは行っていたのですが。高価な魔力結晶を用いたり、術者が常に魔力を注ぎ続けたりとなかなか実用的な手段で動かす事が出来なかったのです。ですがそれも魔王殿のアイデアで解決しました」
そう言ってギガスは、設計図のガソリンタンクがある場所を示す
「このタンクにはガソリンの代わりに、マネラルウォーターが入っています」
「おお!代用出来たか!!」
そう、俺が思いついたアイデアとは
車の燃料であるガソリン、それをマネラルウォーターで代用すると言う物だったのだ
「はい。とは言ってもそのままでは満タン状態で1キロ走れるかどうかと言った状況で」
「滅茶苦茶燃費が悪いな」
「ええ。ですのでティスの協力の元、自動車専用の高濃度マネラルウォーター改め、マネラルガソリンを開発しました。これにより燃費の問題も解決、魔力変換型エンジン実用化の目処が立ったという次第であります」
その時、ティスがやや真面目な表情で言った
「すごく魔力が詰まってる・・・(ドヤァ)。でも人間が飲むと体が爆発するから、絶対飲んじゃ駄目」
「・・・注意しよう、いや本気で」
何せすでに一度口にしているわけだからな、今度はのた打ち回るだけじゃ済まなさそうだ
俺がギガスの説明を聞いている間、他のメンバーは物珍しそうに車を眺めたり触ってみたりしていた
「鉄の箱?ですか?ここを開けて中に入れますね」
「自転車と同じような車輪が付いていますよ、もしかしてこれも動くんですか?」
俺はその様子を見ながら呟く
「みんな自動車に興味があるみたいだな」
その時、ギガスが思わぬ提案をしてきた
「それではテスト走行などしてみては如何ですか?」
「動かせるのか?」
「はい。丁度実際に動かして、色々とデータを取りたいと思っていた所です」
「ふーむ」
さて、どうするか?
ギガスの事だからそんな危険な物を作ったとは思えないし、問題はなさそうだが
「にゃ!?これ動かすんですか!?」
「乗ってみたいです!!」
どうやら周りは乗り気な様だ、それなら一丁テストしてみるか
「んじゃ、少し乗ってみるか?」
「ありがとうございますソーマさん!」
「楽しみですにゃ!」
というわけで、俺は自動車の走行テストをする事となった




