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魔王軍はお金が無い  作者: 三上 渉
第一章:魔王とはじめての異世界
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魔王と異世界Dファンタジー

:魔王と異世界Dファンタジー


何も見えない・・・何も聞こえない・・・

いや見えない理由は分かっている、目を閉じているからだ


(俺は、どうなった・・・?)


体に痛みは無い、怪我をしているという事はなさそう

どうやら、俺は今椅子の様な物に座っている様だ。しかし縛り付けられているわけでもない

とりあえず現時点で危機的な物は感じない。意を決して俺は目を開く事にした

そして、何も見えない暗闇からじょじょに視界が・・・


「・・・って何も見えねえ!」


開けなかった。今度はちゃんと目を開けている


「ん~~~?」


暫くすると少しづつ暗闇に目が慣れてきたようで周りがうっすらと見え始めてきた

どこかの小部屋と言った感じではなくそれなりに広い空間の様だ、ホテルのロビーぐらいの広さだろうか?

左右には柱があり、その柱にはライトの様な物が付いていた


「電源が入っていないのか・・・どこかに灯りのスイッチとか無いか?」


俺はそう呟き、自分が座っていた椅子から立ち上がろうとした・・・その時!


ボッ!


そのライトの様な物に突然火が灯った!

部屋の各所にあった同じ物にも同様に火が灯り、空間が一気に明るくなる


「な!なんだ!?」


俺は驚きの声を上げる、センサー式か何かだったのだろうか?

続けて俺は辺りを見渡す。ホテルのロビーの様に見えたそこはどうやらもっと古めかしい感じの場所だったようだ

ライトに見えたそれはトーチカと言うのだろうか?電灯ではなく本物の火が灯り辺りを照らしていた

柱や辺りの壁にはよく分からない装飾がされていて、旗の様な物も見える

見渡した限りそこは中世の城の中・・・といった感じだった


「何処だここ・・・?」


俺は何気なく視線を正面に戻す、正面には赤いカーペッドが敷かれている

そしてその中心に人が一人立っていた


「うわあっ!!」


いや、さっきまでそこに人なんて居なかったはずだ!

突然現れたとしか言いようが無い、本能的に危険を察知する!


(もしかしてこれはヤバイ状況か・・・!?)


最悪の状況も考えつつその男?を注視する

すると突然その男はその場に座り・・・いや跪いた


「は・・・・?」


あれ?今どういう状況?

どうやらいきなり殺されたりなんて事は無いようだが?

俺の前の男は跪いたまま言った


「お目覚めになられたようですね、魔王様」


男が顔を上げる、

切れ長の二重、整った形の鼻にギラギラしたとでも言うのだろうか?強い意志を感じる瞳

中性的であるにも関わらず、自信に満ちた力強い雰囲気を身に纏っている

一般的にイケメンと言って差し支えない・・・と言うより、そうとしか言いようがない造形をしていた

だが頭の横に付いた2本の角、最初は何かの飾りかと思ったが違う様だ

確かに目の前の男の側頭部から生えている角

それが明らかに、その男が人間とは違う「何か」である事を示していた


「ま、魔王?」


男の言っている事の意味が分からず、そのまま聞き返す

まさか俺の事か?辺りを見渡すが俺の他に人影は見えない


「突然の召還で混乱されるのも無理はありません、今の状況について説明致します」

「あ、ああ」


召還?もしかしてこれはアレか?


「貴方はこの世界、貴方からすると異世界と呼ばれる世界に召還されたのです」

「マジで!異世界召還キタコレ!じゃあここがバイストン・・・!!」


テケテケテ!テケテケテ!テケテケテ!テケテケテ!チャーラーラ♪


「いえ、セレンディアと呼ばれている世界です」


残念・・・オーラロードは開かれなかったらしい


「私の名はウィズ=ウラムと申します。そしてここはメルヒェンス山の麓にある名も無い古城、人々には魔王城と呼ばれている場所です」

「魔王城!?」


俺はその単語に期待に満ちた声を上げる

中世の城っぽいとは思っていたが本当に城だったとは、しかも魔王城!

これは今後の展開に期待が高まるというものだ


「貴方は我々魔族の長、つまり魔王となって頂くために召還されたのです」

「魔王!?それってラスボス的な意味の魔王!?」

「はい。世界征服を目論む、魔族の頂点に君臨する魔王です」


異世界召還で世界を救う勇者になるのかと思ったら、世界を征服する側の魔王になれとは・・・

いや、これはこれで面白そうだ

異世界ファンタジーならぬ、異世界ダークファンタジーというやつだな


「・・・という事はあれか?実は俺には秘められた能力とかがあって、とてつもないパワーだとか凄まじい魔法を行使出来たりするわけか!?」


俺は目を輝かせながらそう問いかける、しかし


「いえ、そういった能力は一切ありません、戦闘となればゴブリン相手に即死するレベルです」


無いのかよ!

ていうかゴブリンにも勝てないってガッカリだよ!


「え~~・・・じゃなんで俺が魔王なんだ?」

「えっと、魔王様にはその知略を活かして頂く方向でお願いします」

「あーなるほど。ストラテジーって感じか?軍師として軍を勝利に導くみたいな」

「ええ、そう理解して頂いて間違いありません」


なるほど、軍を指揮して世界征服を目指すわけか

俺自身に戦闘能力が無いのは残念だが、知略で世界を征服するというのもカッコイイかもしれない

だがすぐに、そんな俺の期待は打ち壊される事となる


「ですが、現在の魔王軍の状況は非常に厳しいものとなっています」


おっと?難易度が上がったな、どうやらHARDモードのようだ


「厳しいと言うと?人間の軍勢に押されているとか勇者みたいなのが攻めてきたとか?」

「そうですね、一言では説明しづらいのですが・・・」


一体どんな状況に追い込まれているのか?

とりあえず説明を聞くことにする


「まず武器防具が足りていません」


ふむ?


「それと兵站、食料が足りていません」


ふむ・・・?


「そもそもそれを必要とする軍勢を雇うお金がありません」


ふむ・・・・・・?


「えっと・・・つまりそれは」

「はい、要するに我々魔王軍は「お金がありません」」

「・・・・・・」


城の中からは見えないが俺は空を見上げるような体勢で大きく息を吸うと、出来る限りの大声で叫んだ


「ガッ!!!!!!デーーーーーーーーーーーーームッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


どうやらこれは異世界ダークファンタジーならぬ、異世界ダメファンタジーだったようだ

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