表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王軍はお金が無い  作者: 三上 渉
第一章:魔王とはじめての異世界
2/145

魔王と暗闇の部屋

:魔王と暗闇の部屋


その部屋は暗闇に包まれていた

だが完全な暗闇ではなく、パソコンのモニターの明かりだけがその部屋をかろうじて照らしている


時刻は3時を過ぎた頃、と言っても午前ではなく午後3時、外は当然まだ明るい頃だ

だが、光を完全に遮ったその部屋は夜となんら変わらない暗闇に包まれていた


部屋の主「四十万宗真しじまそうま」にとってそれは普段と何も変わった事ではなく

365日ほぼ変わらず繰り返されている光景だった


彼、四十万宗真は所謂引きこもりだ

滅多な事で家の外に出る事は無く、一日の大半を自分の部屋で過ごしている


だが、彼は世間一般で言う所の引きこもりとは一つ違う点があった






暗闇の中、パソコンのモニターを眺めながら彼は何かをブツブツ呟いていた


「来い来い来い・・・あと2・・・あと1・・・」


モニターには数字の羅列、そして折れ線グラフの様な物が表示されている


じょじょに上がっていく数字。そしてその下一桁が0に変わった、その瞬間


カタカタカタカタッ!!


彼は凄まじいスピードでパソコンを操作しはじめた

手馴れた手つきでマウスを動かし、キーボードで数字を打ち始める


「売り売り売り・・・!!」


凄まじい速度で上下する数字


「まだ落ちるなよ~、もう少し・・・」


しばらくの間、ブツブツ呟く彼とパソコンを操作する音だけがその部屋に響いていた

そして数時間後


「しゃあ!売りきったー!!!」


彼がパソコンを操作し売っていた物、それは株だった

それはとあるゲーム会社の株

所謂スマホゲームの開発をしている会社であり、ここ数年で株価は数倍に膨れ上がっていた。しかし


「ま、ここらが限界かな・・・」


彼の言うとおり

この後、その会社の株価は上昇も収まり、下落が始まっていくのだったが

それを見切った彼はその前に持ち株を全て売却したという訳だ


パソコンに別の画面が映し出される、彼の銀行口座の預金額だ

そこには人一人どころか十人が一生遊んでお釣りがくる額の数字が並んでいる


「フッフッフ・・・ハッハッハッハッハッ!!」


それを見ながら彼はこみ上げてきた笑いをそのまま口から吐き出した


そう、彼が世間一般で言うところの引きこもりと違う点

それは彼が金持ちであるという点だった






地方都市の片隅、都会ではないが田舎というほどでもない

そこに立っている一軒家。それが彼の住む家だ


家の窓は全て閉めきってあり、滅多に人の出入りが無く、たまに宅配便が届く程度である為

その家に住んでいるのがどんな人間なのか、近隣に住んでいる住人でさえ知らない程であった


その噂の人物、近隣での謎の人物である彼は

大量の株を売り巨額の金を得た後、ネット通販のサイトを眺めていた


カチ・・・カチ・・・カチ・・・


目に付いたものをポンポンと買い物カゴに入れていく

商品総額はすでに数百万を超えていたが、彼は気にする様子も無く次々と商品を購入していった


彼が自分の家から出る事は滅多に無い、買い物の大半はネット通販で済ませているし、食事もほとんどが出前だ

好きな事を好きなだけやり、寝たいときに寝て、気が向けば金儲けに勤しむ毎日

彼はそんな生活をとても気に入っていたし、まさしく自分は人生の勝ち組だと思っていた






ひとしきり買い物を終えた俺は欠伸をしながら椅子の背もたれによりかかる、そして


(もう一生この家から出なくてもいいかも・・・)


そんな事を考えながら何気なく時計を見た、時計の針は丁度24時を過ぎた所

日付を見る、日付は4月13日となっていた


(13日・・・)


4月13日、それは俺の誕生日だった

四十万宗真(28)が先程、四十万宗真(29)に変わったというわけだ

俺は思わず呟く


「・・・ハッピバースデートゥーミーってか」


正直、どうでもよかった

俺は別段自分の生まれた日や年齢にこれと言った拘りを持っていない人間だったからだ、ただ


(来年は30か・・・)


ふとそんな事を考えた

来年の今頃、自分は何をしているのだろうか?


(って考えるまでもないな)


そう、来年も再来年も俺はこの部屋で過ごしているに違いない

この快適極まりない部屋で・・・だ






その時突然、部屋を照らしていたパソコンの明かりが消えた


(スクリーンセーバーか?)


そう思った俺はマウスを適当に動かす、が画面は黒を映したまま


「あれ?マウスが壊れたか?」


さっきの通販で新しいマウスも買っておくべきだった

そう考えながら俺は椅子から立ち上がる


「どっかに他のマウスあったかな・・・?」


暗闇に包まれた部屋でマウスを探そうとする、だがにこの暗闇の中で物を探すというのは流石に無理がある


「仕方ない・・・明かりをつけるか」


明かりをつけようと電灯のリモコンに手を伸ばそうとしたその時、パソコンのモニタにわずかに明かりが点った


「ん?」


振り返りパソコンのモニタを見る、そこには何やら見慣れない図形が描かれていた


「これって・・・魔方陣ってやつか?」


そう、そこに描かれていたのはアニメや何かで見る魔法陣というやつだった

六亡星に何やらよく分からない言語の文字が描かれている


「・・・」


それを見ながら、俺は唾を一つ飲み込む

暗闇の中、突然パソコンのモニタに映し出された魔法陣

得体も知れない不気味さを感じ、冷や汗が流れたのを感じる

何か良く分からないがヤバイ感じがした


「と・・・とりあえず、明かりつけるか・・・!」


不気味さを振り払うように努めて大きい声を出し、電灯のリモコンに向かって手を伸ばそうとした・・・その瞬間!!!


ガシッ!!!


何かに腕を捕まれた!!咄嗟に振り返るとそこにはパソコンのモニタから手が!

正確にはパソコンのモニタに描かれた魔法陣から手が生えて、それが俺の腕を掴んでいた!!


「な・・・!?」


なんだこれ!?そう叫ぼうとしたが声にならなかった!

何故ならモニターから手が次々と生えて、それに体全体を掴まれたからだ!!!


グイッ!!!


手に引きずられパソコンに近づいていく!振りほどこうとするがその手は俺の力を遥かに超えた力でその体を引きずっていく!!!


「うわあああっ!!!」


飛び上がる様に中に浮いた体が頭からパソコンのモニタにぶつかった!


ズブッ!!


「は・・・!?」


いや、ぶつからなかった。何故なら頭がパソコンのモニタに沈んだからだ!

そのまま体全体がモニタの中に沈んでいく!!!


一体何処に連れて行かれるのか、そもそも俺はどうなるのか?

そんな事を考える余裕は一切無く、俺はそのままモニタの中に沈んだ






部屋の主が居なくなり、その部屋には暗闇だけが残され

その暗闇を僅かにパソコンのモニタが照らしていた・・・が


ブツッ


そしてそこは完全な闇となった

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ