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魔王軍はお金が無い  作者: 三上 渉
完結編:LORD of EVIL
143/145

結末はいつもろくでもない

:結末はいつもろくでもない


俺達とウラムの壮絶な戦いは終わり

俺はウラムを肩に担ぎながら皆の元へ歩いていく


「ソーマさま~~!!!」

「おとうさん!!!」


その時、ミケやティス達も俺達に駆け寄って来た


「すげーにゃ魔王!」

「ウラム様に勝つなんて信じられねーにゃ!」


興奮しながら叫ぶリィとマウ

ウナはウラムの元へ駆け寄りウラムの怪我を案じている


「ウラム様!」

「大丈夫ですよ、まあ死なないギリギリと言った感じですが・・・」


ボロボロの状態にもかかわらず普段と同じ笑みを浮かべるウラム

その時、俺に抱きついていたティスが呟く


「・・・ん?分かった」


それと同時にティスの表情がラグナの物に変わる

そして、ラグナは俺の頭に手を乗せて・・・


「ホント頑張ったわね~ソーマくん!エラいエラい!!!」


思いっきり頭を撫で始めた!


「おい!止めろラグナ!!!」


まるで子供を褒める様な仕草に、俺は思わず手を払いのけようとする


「もう~別に遠慮なんてしなくていいわよ?」

「遠慮じゃねえよ!俺はもういい大人なんだっての!恥ずかしいから止めてくれ!」

「私から見れば十分子供なんだけど・・・まあいいわ」


そして俺の頭から手をどけたラグナは続けて・・・


「・・・これは何の真似ですか?」

「そう言えば、アンタを褒めた事は一度もなかったと思ってね」


ラグナは俺の時と同じ様に、ウラムの頭に手を乗せて撫でていた

ウラムは眉をひそめるが、その手を払いのける程の体力は残っておらず為すがままにされている


「何をしても、全て出来て当然という扱いでしたからね。まあその程度の事、別段褒められる事ではないですし」

「違うわよ。私がアンタを褒めなかったのは、アンタがガキのくせに可愛くなかったからよ」

「・・・今も可愛くなった覚えはありませんが」

「そうね。まあ、気まぐれみたいな物よ」


そう言いながらゆっくりとウラムの頭を撫でるラグナ

その時始めて、ウラムの師匠らしいラグナの行動を見た様な気がした


「ソーマさん~!」


そんな二人の様子を眺めていたその時、フィーリスに支えられながらアリアもやってくる

どうやらかなり疲労している様だが目立った怪我はなさそうだ

俺はそんなアリアに声をかける


「お疲れアリア。アリアが居なきゃ、この戦い勝てなかった」

「いえ、私も同じです。ソーマさんが、他の皆さんが居なければ私はウラムさんに勝てませんでした。この勝利は皆のお陰です!」

「アリア・・・。そうだな、皆のお陰だ」


その俺の言葉に、アリアはニッコリと笑みを浮かべ答える


「え~っと、魔王さん・・・」


その時、フィーリスが遠慮がちに俺とアリアに声をかけてきた。

そしてフィーリスは手の中にある物を俺達に差し出してくる、その手にあったのは・・・


「これ、聖剣か?」

「ええ、完全に機能停止しちゃってるっス」


それはアリアの聖剣、いや粉々に砕け散った聖剣の残骸だった

アリアが最後に放った一撃、その負荷に耐え切れず聖剣は砕けてしまったのだ

その剣の残骸を見て、アリアは悲しみの表情を浮かべる。だが・・・


「初代様の代から数えて600年間。多分この剣は、この時の為に代々受け継がれてきたんです。そして聖剣グランドリヴァイブは、その使命を果たしました。だから・・・これで良かったんです」


そして一度だけ、砕けた柄を指でなぞると・・・


「さようなら、私の聖剣」


アリアはそう呟いた

だがその時、フィーリスが勢いよく声を上げる!


「さよならにはまだ早いっスよ!アリアちゃん!」

「え?」


フィーリスの言葉に意外そうな顔を見せるアリア

そんなアリアにフィーリスは続けて言う


「この剣の構造は戦いの前に見せてもらったっス!規格外のシステムも多かったっスが大丈夫!自分が必ず修理して見せるっスよ!」

「ホントですか!?」


そのアリアの言葉に堂々と胸を張って応えるフィーリス。その時・・・


「その時は私もお手伝いさせて頂きます」


そうフィーリスに声をかけたのは、ギガスの端末だった


「ギガスさん!天界とギガスさんの科学力が合わされば怖い物なしっスよ!」

「私としても、未知の技術に触れられる良い機会です。よろしくお願いします」

「こちらこそっス!こうなったらただ修理するだけじゃ済まないっスよ~!GR-001を超える物を・・・新しい聖剣を創り上げて見せるっス!!!」


そんな二人の言葉に、アリアは一度だけ目元を拭うと言った


「フィーリスさん、ギガスさん・・・。はい!よろしくお願いします!」

「よかったな、アリア」

「はい!!!」


朗らかな笑顔で俺に返事をするアリア

そんなアリアの様子を見ながら、俺はホッと胸をなで下ろすのだった






そして、その場に居た全員が気を緩めていた。その時・・・!


ゴオオオオオオオオッ!!!!!


「なっ!?」


突然!上空に空間の歪みが発生した!

同時に全員に緊張が走る!


「これは!ウラムの時と同じ!!!」

「誰かが空間転移してくるっス!!!」


その時、アリアの顔に戦慄が走る・・・!


「そんな・・・これは・・・!!!」

「どうしたアリア!?」

「何者かは分かりません・・・。ですがあの空間の歪みから「ウラムさんと同等の魔力」を持った何者かが現れます!!!」

「なっ!?」


ここに来てさっきまでのウラムと同格の相手だと!?

ウラム一人相手にこっちは全員がかりでギリギリだったのに

既に全員が消耗しきった状態でそんな相手と戦闘に入ったら打つ手はない!


「・・・ッ」


俺の頬から冷や汗が流れる・・・

そして、空間の歪みからその姿がじょじょに現れる!それは・・・!


「あ、あれ?あの人は確か・・・」


転移してきた謎の人物、俺達はその姿に見覚えがあった

腰まである金色の美しい髪、そして背中の真っ白い8枚の羽根

その慈しみを称えた穏やかな笑みを浮かべた天使は・・・


「お姉ちゃん!?」


そう、それはフィーリスの姉。セラフ・メルフィリスだった!


ストッ・・・


転移を完了したその美しい天使はゆっくりと地上に降り立った


「このタイミングでセラフが現れるなんて・・・」


尋常でない様子のメルフィリスに警戒する面々

その時、ラグナがギガスに向かって呟く


「いける・・・?」

「切り抜けられる確率は0.1%以下かと・・・」

「0じゃないだけマシね・・・」


そして、メルフィリスはこちらに視線を向ける

その視線が一番最初に捉えたのは・・・俺の肩に担がれたウラムだ!次の瞬間!!!


ギュンッ!!!


「ウラムッ!!!」

「え?」


メルフィリスは目にも止まらぬ速さでこちらへ駆け寄ると、俺からウラムを引ったくり抱きかかえた

突然の事態に固まる俺達

しかしそんな俺達の様子を気にすることもなく、ウラムは笑みを浮かべたままメルフィリスに言った


「やあメル、カッコ悪い所を見られてしまいましたね」

「いいえ!そんな事はありません!立派な戦いぶりでした・・・私のウラム」

「メル・・・」

「ウラム・・・」


そして二人は見つめ合うと、ゆっくりその顔を近づけていく。そして・・・


「いやいや、待て待て待て待て!!!」


俺は思わずツッコミを入れた!


「何ですか魔王様?今良い所なのですが」

「いや、いきなりの超展開過ぎて俺達は全く付いて行けてないんだが!説明しろ説明を!」

「ああ・・・なるほど。では紹介しますね、彼女は・・・」


ウラムが続けようとしたその時

代わりにメルフィリスがこちらに向かって前に出ると、姿勢を正して言った


「先日、ウラムの妻になりましたメルフィリス・ヴィアーナ=ミルドヴァルドと申します。皆様改めてよろしくお願い致します」

「「「妻ァッ!!!???」」」

「ええ、結婚したんですよ。私達」

「「「結婚ンッ!!!???」」」


驚愕のあまり大声を上げる俺達!


「いやいやいやいや!!!一体何がどうなってそんな事に!!!???」


そう問い詰める俺に向かって、ウラムは語りだした


「あれは先日、私がアロンドヴァスに出張へ向かった時の事です・・・」






ウラムを乗せたシャトルがアロンドヴァスに到着した時の事


「・・・それとも、こうお呼びした方が宜しいでしょうか?」


メルフィリスの顔の笑みが消え、厳しい物に変わる、そして・・・


「魔神王と・・・」


その言葉を聞いたウラムは口元を歪めニヤリと笑うと、一歩一歩タラップの階段を降りて行く。その時・・・


ゴクリッ・・・


その尋常ならざる気配を持った魔族の動きに、周囲の天使達の間に緊張が走る!


「あれが・・・魔神王・・・伝説の史上最強の魔族・・・!」

「ああ。都市伝説だと思っていたのに、本当に実在するなんて」

「もし奴がこの場で暴れだしたら・・・」


ザワつき始める一級と二級の天使達に向かって六枚羽根の上級天使が言った


「落ち着け、周りを見てみろ。今この場にアロンドヴァスに駐留している戦力の8割が集結しているんだぞ?しかも指揮を執るのは、あのメルフィリス様だ」

「セラフ・メルフィリス、いつも穏やかな笑みを讃えた天使の中で最も美しい天使。だが一度戦いとなれば、その圧倒的な力で敵を屠る戦女神でもあり。その力は12人のセラフの中でも最強と言われている程だとか・・・」

「そういうことだ。相手がいくら伝説の魔神王と言えど、この戦力が相手では・・・」


その言葉に天使達は落ち着きを取り戻そうとしていた。だがその時!


「・・・フッ」


ウラムは周りを凍りつかせる様な笑みを浮かべた!


ゾクッ!!!


その恐ろしい笑みに更に周囲の緊張感が高まる!

その緊張感の漂う中を、ウラムはゆっくりとメルフィリスに向かって歩いていく


「・・・」


そしてメルフィリスの目の前にウラムが立った、次の瞬間!


スッ・・・


「えっ?」


ウラムはその場に跪くと、メルフィリスの手を取り言った


「美しい人メルフィリス。以前貴方を初めて見かけた時から、私は貴方に恋焦がれておりました。どうか私の妻になってほしい」


その言葉に違う意味で周囲が凍りつく。そして、一拍置いて・・・


「「「はぁああああああああああ!!!???」」」


その場に居たウラムとメルフィリス以外の全員が大声を上げた!


「何言ってんの!?あの魔神王!?」

「いきなりあのメルフィリス様に向かってプロポーズするとか、何を考えて!?」


その時、先程の上級天使がまたも声を上げる


「おちおちおちおちおち落ち着け・・・!」

「いえ・・・上官殿の方が落ちつかれては・・・?」

「相手はあのメルフィリス様だぞ!?アロンドヴァス中の男全員にプロポーズされ!そしてその全てを断ったと言われているあの「難攻不落の要塞メルフィリス様」だぞ!?」

「そ、そうですよね!いくら相手が尋常じゃないくらいの美形だったしても魔族、それも魔神王のプロポーズなんて受けるはずが・・・」


そう全員が安堵した。次の瞬間・・・!


「・・・はい。喜んでお受けいたします、ウラム」

「「「何ィッーーーーーー!!!!!?????」」」


メルフィリスは頬を染めながら、そう答えた






「とまあ、そんな感じです」


語り終えたウラムに対して、俺は唖然とした顔で言った


「とんでもない奴だとは思っていたが・・・まさか天使にプロポーズしてくるなんて・・・」


そういえば、こいつ昔・・・


(私、天使の様な女性がタイプなんですよ)


とか言ってたが、マジだったとは・・・

その時、フィーリスががくがく震えながら呟いた


「あわわわわわ・・・お姉ちゃんが結婚・・・しかも魔神王と・・・」

「フィーちゃん?」


そんなフィーリスの様子に気付いたメルフィリスは、ニッコリと笑いながら言った


「お姉ちゃん、堕天しちゃった!(てへぺろ)」

「・・・っス」


次の瞬間!!!


バターン!!!


フィーリスはバッタリとその場に倒れた!


「あ、フィーリスが死んだにゃ」

「死んでないにゃ!フィーちゃん!しっかりしてにゃー!!!」

「しょうがないにゃ~。どうするにゃ?ウナ・・・って?」

「にゃ・・・ウラム様が・・・結婚・・・」

「あ、ウナも死んでるにゃ」


倒れこんだフィーリスとウナを介抱するミケ達

その様子を眺めながら俺は呟く


「・・・人が泡吹きながら倒れるの初めて見たな。いや、人じゃなくて天使か」


そんなどうでもいい事を俺は考えていた

だがその時、俺はとてつもない事を思い出す


「・・・おい、ウラム」

「何ですか魔王様?」


そして俺は恐る恐る、ウラムにその質問をした


「まさかとは思うが・・・俺達と戦う前に言っていた「色々と都合がある」ってまさか・・・」

「ええ、結婚の事ですよ」


恐る恐る聞く俺に対して、そうあっさりと答えるウラム


「これからは家庭第一に考えて行動しなければなりませんからね。その前に若気の至りと言いますか、やりのこしておいた事を消化しておこうと思いまして」

「何・・・だと・・・?」


そのウラムの答えを聞いた瞬間、俺はその場にガクリと膝を付く。そして・・・


「家庭第一だなんて・・・!嬉しいですウラム!」

「当然の事ですよメル。私にとって、貴方が世界で一番大切なのですから」

「ウラム・・・」

「メル・・・」


またもや全員の前で堂々とイチャつき始めるバカップル

その時、アリアもフィーリス達と同様その場に倒れながら言った


「何故か・・・急激に今までの疲労が襲い掛かってきました・・・。何でしょう?このやるせない感・・・」


その言葉に、同じく倒れながら同意するラグナ


「同感よアリアちゃん・・・しばらくはもう何もしたくないって感じね・・・。後はよろしく、ティス・・・」


スーッ・・・


「あ、ラグナの魂が抜けて・・・ばいばい、ラグナ」

「駄目にゃーー!!!回収してティスちゃん!!!」

「めんどくさい・・・」


天に昇っていくラグナの魂らしき物と、その場にゴロンと寝っ転がるティス


「それでは私が帰りの車を用意してきましょう。しばしお待ちを魔王殿」


そう言ってギガスがその場を離れる

後に残ったのはまさに死屍累々といった光景

次々と力尽き倒れていく魔王軍の面々。そして・・・


「ミケ・・・」

「な、何ですか魔王さま!?」


俺も倒れながらミケに向かって呟く


「魔王軍はしばらく・・・臨時休業だ・・・」


それだけ言うと、俺はその場で気を失った


「ああ!ソーマさま~!!!しっかりしてくださいにゃ~!!!」


(そうだ、忘れてた。この世界はこんなにも「ろくでもない」って事を・・・)


俺は完全に気を失う寸前、心の中でそう思うのだった






そして俺達が倒れた後、メルフィリスは声を潜めてウラムに言った


「ウラム?」

「何ですかメル?」

「いいのですか・・・本当の事を伝えなくて?もし、魔王さんが敗北していたら・・・」


その言葉に、ウラムは笑みを浮かべながら呟く


「・・・その時は、私は自らの運命に従い改めて魔神王としてこの世界に君臨していました。そしてこの星の衛星軌道上に待機していた天界の主力部隊、つまり貴方の率いる部隊と戦い、まず間違いなく命を落としていたでしょうね」

「・・・」

「あの方に敗れ命を落とすか、貴方に討たれ命を落とすか。どちらにしても私と言う存在は今日終わる、そう思っていたのですが・・・」


ウラムはチラリと、倒れてミケに抱きかかえられているソーマの方を見て言った


「どうやらそう言った命のやりとりは我々には似合わないようで、死に損なってしまいました。ですのでもうしばらく、私はあの方に付いていこうと思うのです。魔神王としてではなく、ただのウィズ=ウラムとして」


そのウラムの言葉に、メルフィリスは笑顔で答える


「ウラムがそうしたいと言うなら、私も一緒に付いていきます」

「・・・良いのですか?私が宇宙の驚異である事に変わりはないと思うのですが」

「だからです、私がずっと、貴方の側で貴方を監視し続けます。いつまでも側で・・・」

「メル・・・」


ウラムはメルフィリスを抱き寄せ、そして一つ疑問に思っていた事を口に出した


「そういえば、メルはどうして私のプロポーズを受けてくれたのですか?」


メルフィリスはその言葉に少しキョトンとした様な表情を見せたが、すぐに答えた


「ウラムと同じです」

「私と同じ?」

「はい。「600年前」初めて出会ったその時から、ずっと私は貴方に恋焦がれていました」

「・・・覚えていてくれたのですね」


その言葉に、ウラムは少し困ったような表情を浮かべて言った


「随分長い間待たせてしまって申し訳ありません」

「本当です!その間全ての殿方のお誘いを断っていたら「難攻不落の要塞メルフィリス」とか変な異名を付けられてしまいましたし!」

「ははは。ではその分も埋め合わせしなくてはなりませんね」

「はい。よろしくお願いしますウラム」


そして二人は誰にも見られないように、軽く口づけをかわしたのだった

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