表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王軍はお金が無い  作者: 三上 渉
完結編:LORD of EVIL
138/145

魔神王と魔神の師弟・ラグナとウラム

:魔神王と魔神の師弟・ラグナとウラム


一言で言えば、「気味の悪いガキ」だった

いつもニコニコと笑顔を浮かべているにもかかわらず、いつもつまらなさそうな眼をしていた

一度教えた事は何でも出来る程の才能があるにもかかわらず、それを得意気にするでも楽しむでもなかった

何もかもを諦めた様な生き方をしているにもかかわらず、自分からは何も欲しがろうとしなかった

きっとアレは機械なのだろう、アレは自分に与えられた役割、「魔王」と言う役割を果たすだけの機械なのだと私は思っていた。しかし・・・


(目的?そこまでして何を求めるの?)

(それは・・・)


その時初めて、私はアイツが何かを欲しがる所を見た


(私は・・・「自分」が欲しいのです)






炎が消え去った古戦場跡で、二人の魔神が向かい合う。そして・・・


「ウラム、アンタはあの日エキザカムで何を見た?答えなさい」

「私がエキザカムで見た物ですか・・・」


そのラグナの問いかけに、ウラムはゆっくりと語りだした






「来るぞ!これ以上進ませるな!!!」


その掛け声と共に重装備の騎士達が剣を構える!

騎士達が相対するのはたった一人の魔族の青年!


「かかれ!!!」


そして、視界に入る物を全て破壊しながら悠然と進む彼に向かって、重装備の騎士達が襲い掛かった!だが!


ドス!ザシュッ!!!


「なっ!?」


彼は攻撃をかわそうとすらしなかった!

騎士達の剣に全身を刺し貫かれながらも、その表情はピクリとも変化していない!


「風よ・・・」


そして!彼が呟くと同時に・・・!


ザシュッ!!!


風の刃が騎士達を切り裂き!辺り一帯を赤に染める!


「・・・・・・」


だがそんな凄惨な光景にも、彼の表情は微動だにしない

周囲に破壊と死を撒き散らしながら、彼は城へと向かっていく


「くそ!何なんだヤツは!?」


その歩みを止めるべく、その後も屈強な騎士達が次々と彼に挑むが・・・!


ザシュッ!!!


「ぐあああああ!!!」


彼の足並みを止める事は出来ず

一歩一歩、まるで凱旋をするかの様に彼はまっすぐと歩いて行った


・・・・・・


程なくして、彼はエキザカム城の玉座の間に辿りつく


「我等の王国が・・・たった一人の魔族に・・・。貴様は一体何者だ!?」


そう叫びながら剣を抜いたのは国王、エキザカム王!

だがただの王ではない、強力な騎士団を擁するこの国の最強の騎士でもある王だ!

しかし、その王が放つ覇気をまるで意に介さず彼は答える


「私ですか・・・?私は「魔王」です」


そして、彼は先程までと全く同じ様に前へ歩を進める


「おのれ・・・!!!これ以上やらせはせん!!!」


ダッ!!!


怒号と共に魔族に向かって突撃するエキザカム王!

そして剣を振り上げ!最強の騎士の名に恥じない凄まじい一撃が繰り出された!


ザシュッ!


決着は一瞬で付いた・・・

王が剣を振り下ろすと同時に、魔族の拳が王の身体を貫いていた・・・!


「馬鹿な・・・」


そう呟き口から血を吐き出した後、王は動かなくなった

彼は返り血にまみれながら、動かなくなった王の身体から自らの手を引き抜く


ドシャ・・・


それと同時に、王の身体がその場に崩れ落ちた

そして彼は、その王の亡骸を見下ろしながら・・・


「・・・・・・」


だがやはり、彼の表情は何の色も見せてはいなかった

彼にとっては屈強な騎士達も、それを束ねる王も同じ「弱者」でしかなかったのだ


「これで終わりですか・・・」


辺りを見渡し自分に向かってくる敵が誰一人居なくなった事を確認すると、彼は無言のまま踵を返した

そして城の外へ出た彼は空へ飛び上がると、エキザカム王国を見下ろしながらその手に膨大な魔力を集中させる・・・!そして!!!


天地崩壊カタストロフィ


カッ!!!!!


彼の放った魔法の光は、一瞬で王国の全てを飲み込んだ・・・!

そして・・・後に残ったのは、無人の荒野と半壊した城だけだった・・・






「600年前のあの日、私は単独でエキザカム王国の制圧に向かいました。まあそれ自体は楽な仕事でしたよ」


ウラムはそう言った後、逆にラグナに問いかけた


「ラグナ。その一つの国の滅びを前に、私が何を感じていたか分かりますか?」


ラグナはその質問に眉をひそめながら答える


「何?まさか人間達に対して罪悪感を覚えたとでも?」

「ハハッ、まさか。正解はですね・・・」


そしてウラムは、想像を絶する虚を宿した瞳をラグナに向け答えた


「何も感じなかった、です」

「・・・何も?」

「ええ。圧倒的な力で敵を蹂躙する高揚感も、弱者を一方的に虐げる快楽も、嘆き叫ぶ彼等に対する罪悪感も、私は何も感じていなかったのです」


静かに、だが淡々と語るウラム


「私は「魔王」となるべくして育てられた。それはつまり世界を闇に包むために、戦う為に産まれたと言ってもいいでしょう。ですがその「戦い」は何一つ、私の心を動かしてはくれなかった。そしてその時、私は理解したのです」


そう言ってウラムは己の手のひらを見つめる、かつて真っ赤に染まったその手のひらを


「私という存在とは。何も思わず、何も考えず。目の前にある命をただ殺して殺して殺し続け。いずれ世界を滅ぼし、同時に自分の存在意義すらも殺してしまう存在。目の前に広がるのは虚無。そしてその虚無を抜けた先には、更なる虚無が待っているだけ。それが世界がそうあれと願った、私に与えられた「運命」だったのだと」


その時、ラグナは全てを理解する

そしてウラムに言った


「そう・・・だからアンタは「裏切った」のね」

「その通りです。だから「私」は「魔王」を裏切った。だから「私」は「運命」を裏切った。そして・・・、「私」は「私」を裏切った。この計画は「私」に対する復讐劇なのです」






そして、語り終えたウラムはラグナに告げる


「さて、そろそろ昔話はいいでしょう?何で戦いますか?剣でも魔法でも、私はどちらでも構いませんよ」


そう余裕たっぷりに言うウラム、対するラグナは・・・


「・・・」


少し考え込むようにした後、静かに呟いた


「無理ね・・・」

「?」

「もうアンタは剣も魔法も、全てにおいて私の上を行ったわ。ハッキリと分かる、私はアンタに勝てない」


そう答えたラグナに、ウラムは少し寂しげな声で答える


「・・・そうですか。ですがそれは全て、貴方の師事があったからですよラグナ」


命令だったから

ラグナがウラムに技を教えた理由はそれだけだ


(遅い!腕の力に頼るからそうなる!)


だがそれでも

ラグナがウラムを弟子として育て、ウラムがラグナを師と仰いだ事


(大気を満たす魔力の存在を感じるの。それに心を繋ぎ命令を下す、それが魔法よ)


二人の間には、二人にしか分からない何かが確かにあったのだ。そして・・・


「寂しいですが、弟子は師を越えて行く物です」


おそらく・・・それは成ったのだろう


「そうね、それが道理だわ」


ラグナはウラムに勝てない、何故ならラグナはウラムの「師」だからだ

自らの技、術、業の全てを己の「弟子」に伝え、そして「弟子」はその全てを体得したからだ


「だから・・・!」


ドオンッ!!!


その瞬間!

ラグナから強烈な魔力が発せられる!!!


「これは!?」


今まで一度も感じた事のない強力な力!!!

そして今まで一度も見た事のない「異様な形をした魔力」にウラムは驚嘆する!


(そう、私じゃアイツは倒せない・・・だから!)


そうラグナが心の中で叫ぶと同時に、彼女が宣言する・・・!


「うん、ここからは私の出番・・・!」


その言葉と同時に!銀色の髪が魔力の高ぶりと共に揺れる!


「成程・・・弟子は師を越えていく物。今私が言ったばかりの言葉ですね」

「うん、だから私がウラムを超える」


その魔神は無垢な美しさを讃える氷の女王!絶対零度を統べる存在!それは!


「ウラムの弟子の「霧氷将軍ティスプリア」が・・・!」


そして今までとは違う異様な魔力を迸らせたまま、ティスは戦闘態勢に入る!


(ウラム相手に小細工は意味ないわ!最初から「アレ」をやるわよ!)

「分かってる・・・!」


ラグナの声に頷くと、ティスは間合いを離しその言葉を紡いだ!


「私は世界に接続する・・・」


そう、それは究極魔法の宣言!しかし!


「これは・・・!?」


ティスに集まる魔力にウラムは驚愕する!

それはティスが得意とする水の属性ではない!


ゴゴゴゴゴッッッッッ!!!


彼女の右手に集まっているのは、極限まで圧縮された「4種」の魔力だった!


「風、火、水、土、4種の魔力を同時コントロール。その魔力が産み出す「循環」を圧縮、高速回転させる・・・」


高速回転を始める4種の魔力!制御を誤れば術者本人が吹き飛びかねない芸当だ!


「そして高速回転する「循環」を、指向性を持った形に形成していく・・・」


だがティスは冷静にその魔力の循環を練り上げていき、そのまま「ソレ」の発射態勢に入った!

そのティスの姿に、ウラムは笑みを浮かべる


「フフッ・・・。ティス・・・確かに貴方は、私が師事し育てた「私の弟子」でしたね・・・ならば!!!」


ギュイイイイインッ・・・!!!


そしてティスと同じく!

ウラムもその右手に4種の魔力を集め回転させていく!


「師として、弟子の技の出来栄えを採点してあげるとしましょう!!!」


そしてティスとウラムは全く同じ構えで向かい合い、最後の宣言を紡ぐ!


「是なるは霧氷将軍ティスプリアの究極魔法、全ての分子を崩壊させ塵へと帰す究極の一!!!」

「是なるは魔神王ウィズ=ウラムの究極魔法、全ての分子を崩壊させ塵へと帰す究極の一!!!」


そしてその宣言を終えると同時に!二人の手から「究極魔法」が放たれた!!!


「ティスプリアの螺旋!!!」

「ウィズ=ウラムの螺旋!!!」


ギュガガガガガガガガッ!!!!!


「螺旋」対「螺旋」!

魔神の師弟が放つ「螺旋」がぶつかり合った!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ