魔神王とたった一人の仲間
:魔神王とたった一人の仲間
「本当にこれで良かったのですかウラム様?」
炎に包まれる魔王城を見下ろしながら、ギガスは問いかける
「ええ、あの方では世界を変えられない、それどころか私の計画の邪魔になります。力有る物が全てを決定する、あの方自身が仰っていた理です。自分より強い者に倒されるならあの方も本望でしょう」
そう言ったウラムは続けて、今度はギガスに問い返す
「私はこれより私の計画を完成させる為、世界の全てを敵に回す事となるでしょう。もし付いていけないと言うのであれば、ここで降りてもらっても・・・」
だが、その言葉を最後まで聞く前にギガスは答えた
「当然、ご一緒させて頂きますウラム様。私は貴方へ絶対の忠誠を誓った身、例え世界の全てが敵だったとしても、私だけはウラム様の味方となります」
「そうですか・・・」
その言葉にフッと笑みを浮かべるとウラムは言った
「では行きましょうギガス。新しき世界を創り、そして・・・」
こうして世界をその手にしようとした魔族「魔王」は、魔王自身が才能を認め育て上げた魔族「魔神王」によって滅ぶ事となった
魔神王、そして王に仕えるたった一人の従者
彼等二人の計画が始まったのだった
「これが私の忠義の証ですウラム殿!!!ギガメリウスの黒炎改め!!!インフェルノォッ!!!ブラスターーーーーッ!!!!!」
ギガスの胸部から放たれた黒い閃光がウラムを襲う!しかし!
ゴオオオオオオオオッ!!!!!
ギガスが放った「黒炎」が同じくウラムが放った閃光と激突する!
「なっ!?私の「黒炎」を相殺している!?これはまさか!!!」
「ええ「黒炎」ですよ。さしずめ「ウィズ=ウラムの黒炎」と言った所でしょうか」
そう、ウラムが放ったのはギガスと全く同じ魔法!
「貴方の「黒炎」は既に見せてもらいましたからね。一度見た魔法ならば再現は難しくありません」
「くっ・・・!」
全く同じ威力、全く同じ魔法をぶつける事によりウラムはギガスの「黒炎」を押しとどめていた!だが!
「では押し切らせてもらいます!!!」
「こ、この威力は!!!???」
ゴゴゴゴゴゴッ!!!!!
拮抗していた二つの「黒炎」のパワーバランスが崩れる!
ウラムが放った「黒炎」がじょじょにギガスの「黒炎」を押し返していった!
「くっ!うおおおお!!!」
ゴオッ!!!!!
そしてウラムの「黒炎」がギガスの「黒炎」を押し切り、ギガスを飲み込む!
しかし!黒の炎に包まれた巨人の兜の隙間から、その瞳が輝く!
「まさか私の「黒炎」を同じ「黒炎」で押し切るとは・・・。ですが、まさかこの轟炎将軍ギガメリウスを炎の魔法で倒そうとでも?」
その言葉の通り!
確かに「黒炎」の威力はウラムの方が上だった、しかし炎の巨人であるギガスに「炎」は通用しない!
ウラムが放った「黒炎」をギガスの装甲は全て吸収!エネルギーに変換!
ギガスが身に纏う炎が更に強大になっていく!
「いくらウラム殿と言えど「黒炎」を放ったままでは動けないでしょう、このまま間合いを詰めて決めさせてもらいます」
ズンッ!!!ズンッ!!!
ギガスはウラムが放つ閃光の中をゆっくり突き進んでいく!だが!
「ええ承知しています、「炎」では貴方を倒す事は出来ません。ですので・・・もう一手打たせてもらいます」
そしてウラムはその言葉を紡いだ!
「我は世界に接続する」
ウラムはそう言うと「黒炎」を放つ右腕をかざしたまま、残った左手に魔力を集中させていく!
「なっ!?まさか究極魔法の同時制御!?しかもあれは!!!」
それを見たギガスの顔が驚愕に見開かれる!
「是なるは魔神王ウィズ=ウラムの究極魔法、全ての分子を停止させ凍り付かせる究極の一!!!」
ウラムが左手で制御しているのは氷!
その魔法は氷の将軍であるラグナが得意とする究極魔法!
「先程言ったでしょう?一度見れば再現出来ると。さあギガス「今の状態」でこれに耐え切れますか?」
確かに、炎はギガスには通用しない。だが装甲の方には限界がある!
強力になりすぎた自身の熱エネルギーをギガスが身に纏う装甲は吸収しきれておらず、既にその機能はオーバーロード状態!
吸収しきれなかった熱エネルギーがギガスの装甲を高熱で覆う結果となっていた!
「しまっ・・・!」
熱に覆われた装甲に追撃の氷!その現象を察知したギガスが戦慄する!
だが既に!ギガスが行動するよりも早く、ウラムは左手の魔法を完成させていた!
そしてウラムはその魔法を放つ!
「「ウィズ=ウラムの氷界」!!!」
ゴオオオオオオオッ!!!!!
その声と共にウラムの左手から氷の魔法が放たれる!
ラグナの「氷界」とは違う、指向性を持った氷の一撃!
「ぐおおおおおおおおおっ!!!!!」
極大の凍結魔法に防御の態勢で耐えるギガス!だが!
ビシッ・・・!
炎と氷!その同時攻撃を食らい脆くなったギガスの装甲にヒビが入っていき!
そして装甲のダメージによる警告音が鳴り響く!
「ぐっ!この私の装甲が!?機能の80%が停止!?」
そのヒビは瞬く間にギガスの装甲の全体に広がっていった!
そして!動きが止まったギガスに対してウラムが渾身の一撃を放つ!!!
「これでトドメです!!!疾風螺旋!!!」
ドガガガガガガガガガッ!!!!!
ウラムの手から旋風が放たれ!その旋風はギガスの装甲を破壊すると同時に!
ドグオオオオッ!!!!!
ギガス本体を吹き飛ばした!!!
「くっ・・・この鎧を以てしても勝てないとは・・・。見事です、ウラム殿」
吹き飛ばされたギガスがゆっくりと倒れる
その瞬間、ギガスの脳裏にいつかの光景が思い浮かんだ
「馬鹿ナ・・・コノ我ガ・・・!」
炎の巨人と少年の戦いは少年の勝利に終わった、だが
「はあっ・・・はあっ・・・いえ、貴方も強かったですよ星の子供。・・・僕の次に、ではありましたが」
少年の方も満身創痍と言った状態でその場に倒れる
その時、倒れた少年に向かって巨人が言った
「我ヲモ凌グ程ノ力・・・オマエハ何者ナノダ・・・?」
「僕が何者なのか・・・ですか・・・」
その質問に眉をしかめながら、少年はその問いに答える
「貴方と同じですよ」
「同じ?」
「さっき貴方に聞いたでしょう?「貴方は何を喜び、何に怒り、何に悲しみ、何を楽しむ存在なのか?それを知っていますか?」と、貴方は答えられなかった、そして・・・僕もそれを知らないのです」
「・・・」
少年は物心が付いた時には既に、「魔王」となるべく英才教育を受ける身であった
ありとあらゆる知識や技術を一瞬で体得し、己の力に変える才能を持った魔族の変異種
だがその大きすぎる器の中身は、果てしない程の空虚で満たされていた
親も知らない、兄弟も知らない、そして自分すらも知らない
ただ一つあったのは・・・
「そう、僕は僕が何者なのかを知らない。だからそれを知りたい」
そう言って、少年は空に手を伸ばす
「知りたい」という願い
そしてその先にある、未だ掴めないソレに向かって
「貴方は知りたくありませんか?自分が何者なのか?」
少年はそう巨人に問いかけた
その問いに、巨人は静かに問い返す
「オマエト行ケバ、ソレガ見ツカルノカ・・・?」
「どうでしょうね?ですが一人で探すよりは効率が良いと思いますよ」
その少年の言葉に、巨人は考え込んでいたが
しばらくして、意を決した様に答えた
「・・・イイダロウ。オマエト共ニ行コウ、魔族ノ少年ヨ」
「有難うございます。では貴方は今より私の仲間ですね。でしたらまずは・・・名前が必要ですね」
「名ダト?」
その少年の言葉に首をかしげる巨人
それもそのはず、ただ一人でそこに在り続けるだけの巨人に「名前」などという概念は存在しなかったからだ
「星の子供では呼びにくいでしょう?そうですね・・・赤く輝く巨人・・・ギガメリウスと言うのはどうでしょう?」
「ギガメリウス・・・ソレガ我ノ名カ・・・」
少年の告げた名前を巨人は繰り返す
そして次の瞬間、巨人は口の端を不器用に吊り上げながら一言・・・
「気ニ入ッタ」
そう少年に答えた
この時、巨人は少年の仲間になった
少年のたった一人の仲間に
(出来る事なら私がその望みを叶えて差し上げたかった。ですが、私に出来るのはここまでの様です・・・。後は頼みます、魔王殿・・・)
ドオオオオオオンッ!!!
そしてギガスはその装甲を砕かれ倒れた・・・!
倒れ伏した鋼の巨人を見下ろしながら・・・
「・・・貴方の忠義、確かに受け取りましたよギガス」
ウラムは静かに、そう呟いた
その頃、観客席まで退避していた俺達の所にもその音が聞こえていた
「今の音は!?」
そう叫ぶ俺にアリアが答える
「多分・・・ギガスさんが倒された音です・・・」
「くっ・・・!」
ギガスでも今のウラムを止める事は出来なかった、勝機があるとすれば・・・!
「フィーリス!聖剣の機能ってのを早く教えてくれ!」
俺は焦った様にフィーリスに向かって叫ぶ!
「わ、分かったっス!まず、さっきも言ったっスけど刀身はオマケ。この刀身自体はナマクラもいい所っス」
その時、アリアがフィーリスに質問する
「でも、勇者の家系はその聖剣でずっと戦ってきました。とてもこの剣がナマクラだったとは思えませんが・・・」
「あくまで刀身自体はっスよ。このナマクラであるはずの刀身を強化する事により、全てを切り裂く剣とする。それがこの柄の機能なんスよ!」
強化?
その言葉にいつぞやウラムに聞いた、アリアの強さの秘密を思い出す
「それってアリアが強くなる「身体強化」と同じって事か?」
「それっス。この柄は持ち主の「身体強化」の力を、接続したユニットに伝達させる事が出来るっス」
「そう言えば・・・この剣は勇者の力の持ち主が持つ事によって真価を発揮するとか言ってたな」
「ええ、これはあくまで身体強化が可能な天使専用の武器っスから。天使以外が持ってもただのナマクラっス」
なるほど
この剣は天使と、同じ力を持つ勇者専用の武器だったってわけか。だが・・・
「だとしたら刀身がなくなったのはマズいんじゃないか?強化するユニットがないと性能を発揮出来ないんじゃ・・・」
「それは問題無いっスよ。見ててくださいっス!ふうううう・・・っス!!!」
そう言って、フィーリスが聖剣を握ったまま気合を入れる!すると
ブオンッ・・・!
なんと刀身のなくなった柄から、まるでレーザーブレードの様に魔力で作られた刀身が現れた!
「・・・ぷはぁ!自分じゃここまでっス!」
そのフィーリスの言葉と同時に、魔力の刀身が消え失せる
「今のは!?」
「この柄の機能の一つっス。刀身が破壊されても魔力で刀身を作り出し戦闘継続を可能にするっス。接続したユニットを強化するモードに比べると、ややエネルギー消費が激しいのが難点っスが」
「これなら!私もまだ戦えます!!!」
それを見たアリアが嬉しそうにはしゃぐ。しかし・・・
「・・・でもこれじゃさっきと状況は変わらない」
「えっ?」
俺は眉間に皺を寄せたまま続けて言った
「さっきの戦闘。アリアは聖剣を持った万全の状態で挑んでウラムに勝てなかった。刀身が作れるのはいいが、それだけじゃ結果は同じだ」
「それは・・・」
俺の言葉に俯くアリア
そう、この機能ではウラムを倒す事は出来ない、別の手が必要だ
俺は更にフィーリスに質問する
「聖剣に接続するユニットって何でもいいのか?例えば槍を強化したりとか出来るのか?」
「出来るっスよ。でも強化を伝達させるのはユニットの素材が重要っス」
「素材?」
「さっき言ったフィグライトみたいな素材っス。この柄による強化は魔法の「身体強化」と同じで使用者の魔力量、そして魔力の伝達効率によって変わるっス。この世界の物質は全て大なり小なり魔力を含んでいるっスが、フィグライトはその中でももの凄く含まれている魔力量が少ないっス」
ん?
フィーリスのその言葉に、俺は首を傾げた
「「少ない」?「多い」じゃなくてか?」
その俺の疑問に対して、フィーリスは真面目な表情で答える
「本人の魔力を自分の身体に流しこむのと違って他の物質に流し込むなら、物質に含まれている魔力は少ない方が伝達効率は良くなるっス。魔力が多く含まれた物質の場合、抵抗も大きくなってしまうっスからね」
「なるほど・・・」
フィーリスの言葉に俺は頷きながら考える・・・
(魔力が少ない方が伝達効率は良い・・・か)
その時!俺の脳裏に一つの閃きが走った!
(いや待て!魔力が含まれていない物質だって!?あるだろ!うってつけの「物質」が!!!)
そして、俺はニヤリと笑いながらフィーリスに問いかける
「フィーリス・・・魔力が含まれてなけりゃ、素材は何でもいいんだな?」
俺の閃き、それは恐らくこの状況を打破する起死回生の一手になるだろう
俺は更に詳しく作戦を練っていくのだった
ウラムの前に力尽き、倒れたギガス
そしてウラムは倒れたギガスを見下ろしながら、背後に向かって問いかける
「それで・・・次は貴方ですか?ラグナ」
ウラムの背後には銀髪の魔神、ラグナの姿があった
「別に、ギガスと同時に仕掛けてきても良かったんですよ?」
「嫌よ、そんな事したらギガスに一生恨まれそうだったもの」
そのラグナの言葉に、ウラムは首を傾げて言う
「・・・昔の貴方なら「そんな事知った事じゃない」って言いそうですが」
今度はラグナが、そのウラムの言葉に目を丸めた
「・・・そうね、確かにその通りだわ。どうしてかしら・・・?」
「「変わった」・・・という事では?誰がどの様に貴方を変えたかは知りませんが」
その時、ラグナの脳裏に浮かんだのは金色の髪の青年の姿だった。しかし・・・
「まあどうだっていいわ。私が何であれ、アンタと戦う事に変わりない」
「そうですか。・・・では、始めますか?」
そう言って振り向くウラム、だが
「けど、その前に質問があるわ」
その意外なラグナの言葉に、ウラムはやや驚きながら問いかける
「私に質問とは意外ですね、何ですか?」
そして、ラグナはウラムに言った
「アンタが前々からイカれた奴だってのは分かってた。けどそれでも、アンタは次代の魔王となる為の訓練に何一つ不満を言わず従っていた」
「イカれているとは失礼ですね、私は至極真っ当だったと思いますが」
「けど、そんなアンタが本格的にイカれた日があの日だった」
「・・・あの日とは?」
「エキザカムよ」
それまで笑みを浮かべたままラグナの言葉を聞いていたウラムが、その言葉にピクリと反応する
「ウラム、今度は私が質問するわ。アンタはあの日エキザカムで何を見た?何がアンタを変えたの?答えなさい」
「・・・・・・」
そのラグナの言葉にウラムは沈黙する
だがしばらくして、ウラムはその口を開いた・・・
「私がエキザカムで見た物ですか・・・」
そしてウラムは語りだす
世界に魔神王の驚異を知らしめ、そして同時に魔神王が姿を消した日の事を




