エピローグ・そして・・・
:エピローグ・そして・・・
とある日の夜
魔王城地下に隠された秘密の部屋に、二つの影があった
「・・・報告は以上になります」
「ご苦労様でした」
部屋に居たのはウラムとギガス
ウラムは今回の騒動の事後処理について、ギガスの報告を受けとっていた所だった
「ロードガイウスは今回の件で相当の権力を失い、そして彼と同じく彼が所属していた天界の「強硬派」と呼ばれる派閥はその勢力を衰えさせた」
「はっ。天界のパワーバランスは崩れ「穏健派」が天界の主権を握る事となるでしょう。仮にあのロードガイウスがその力を取り戻し、この星への再度の侵攻を企てたとしても・・・」
「まあ、数百年はかかりますね。つまり、この星を襲う驚異は全て排除されたと言う事で間違いないでしょう」
そう、これにより魔王軍とロードガイウスの争いは完全に終結したという事だ
「フッフッフッ・・・」
だがウラムの思考はすでに天界の事ではなく、次の計画について移っていた
その口から笑いがこぼれる
「何やら愉快そうですねウラム殿」
「ええまあ、愉快ですよ」
そしてウラムは、いつも通りの冷静な口調で
だが、どこか楽しそうに言った
「ただの人間がメギドを破壊し、天界からの侵攻を防いでみせた。こんなに愉快な事はそうそう無いでしょう?本当に期待以上でしたよ、魔王様は」
そう語るウラムに、ギガスは前々から疑問に思っていた事を質問する
「そういえばウラム殿、ずっと疑問に思っていたのですが」
「何ですか?」
「何故?「あの方」だったのでしょう?何故ウラム殿はあの「四十万宗真」殿を魔王に選ばれたのですか?」
「ああその事ですか。その質問の答えなら簡単です」
そしてウラムは、笑みを浮かべたままこう言った
「ただの偶然です」
その答えを聞いたギガスは目を丸める
いや、実際にはギガスの端末に付いているのは目ではなくカメラなのだが
「偶然・・・ですか?」
「ええ、そうです。私は彼を選んだわけではありません、私は魔王になる人間を「無作為」に選び出したのです。それがたまたま彼だったという事ですね」
「ではあの方が魔王になられ、そして天界の侵攻を防いでみせたのも・・・?」
「全て偶然です。いえ、それこそ「奇跡」と呼ぶべきでしょう。彼がこの魔王城に現れた事、それが一番の「奇跡」だったのです」
そう言って笑うウラム
だが対照的に、ギガスは緊張した面持ちになり・・・
「「奇跡」は成ったと・・・そうお考えなのですね?」
そう神妙な様子で問いかけた。そして・・・
「ええ。つまり、私の計画も最後の段階を迎えたと言う事です」
そう答えると、ウラムは天を仰ぐように顔を上げると呟く
「奇跡を呼び寄せる人間「四十万宗真」、そしてあの男の末裔「アリスティア・ハーフェン」。これ以上のピースが揃う事は今後ありえないでしょう」
「では・・・」
部屋の中に緊迫した空気が流れる
だが、ウラムはフッと息を吐き出すと笑う
「いえ。最終段階に入ったとは言え、今すぐにという訳にもいきません。相応しい時と場が揃うまで、しばし待つとしましょう」
そう言って、ウラムは部屋から立ち去るべく歩いていく
そして部屋から出て行く直前・・・
「では、最後の戦いを始めましょう魔王様。貴方の起こす奇跡で・・・」
邪悪な笑みを浮かべて呟いた
「私を、倒してみせて下さい」
そんなウラムに対して、ギガスは頭を下げたまま言う
「全てはご随意のままに、ウラム殿・・・いえ」
そしてギガスは、自らが仕える「真の主」の名を告げた
「魔神王ウィズ=ウラム様・・・」
はるか昔、「魔王」と呼ばれた少年が居た
皆は彼を世界を闇に包む者、新たなる闇の王として讃えた
その声に対して少年は「まあ、そうなのだろう」と納得していた
事実少年にはその為の力が備わっていたし、世界がそう望むならそうあろうと生きてきた
だがふとした時に、少年はこう思ったのだ
「もしも世界の誰もが僕を魔王だと呼ばなかったのなら、もしも僕が僕としてこの世界に誕生していたのなら。一体・・・」
僕は何者だったのだろう?
次章・完結編 LORD of EVIL
全ての始まりにして終わり
これは・・・もう一人の魔王の物語




