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魔王軍はお金が無い  作者: 三上 渉
最終章:魔王と星が降る日
117/145

魔王とミケの聖域

:魔王とミケの聖域


ロケット防衛戦が開始されてから既に10時間程が経過し、太陽が沈みかけていた頃


「スライムタンク部隊!後退しつつ応戦!C隊とD隊はタンク部隊の援護を!」


俺達と天使の戦いはまだ続いていた!


「ぷるぷるぷる!(砲塔回せ!4時の方向の敵を!)」

「ぷるぷるぷる!(・・・!8時の方向より敵!こちらに照準!)」

「ぷるぷるぷる!(緊急回避!)」

「ぷるぷるぷる!(間に合いません!!!)」


ドオンッ!!


天使のロボットが発射したロケット弾がスライムタンクを貫通!

タンクはその場で爆発し、搭乗していたスライム達が吹き飛ばされる!


「ぷるぷるぷる!(28号車撃破されました!他の部隊と合流する!)」


そして更に進軍してくるロボット達により、次々と撃破されていくスライムタンク部隊!

その頃、司令室では!


「28号車撃破されたにゃ!」

「これでタンク部隊は残り18輌しか残ってないにゃ!」

「くっ!」


マウの報告に俺は苦々しい表情を浮かべる

100輌あったタンク部隊がもう5分の1程度しか残っていないなんて・・・!


「ウラム様の航空部隊が敵飛行部隊を撃破にゃ!けど!」

「ウラムの航空部隊もあと5機・・・」


その時、ウラムから通信が入る!


「魔王様、敵増援です。数は数えるまでもないと思われますが」

「敵部隊レーダーレンジに入ったにゃ!数は1000!」

「またか・・・!何度目だ!?」

「きっちり1時間置きに増援が来ていますから、これで10回目ですね」


そう、当初感じた嫌な予感は完全に的中

敵増援は1000づつ、この10時間の間きっちり1時間毎に現れた

その時、リィが叫んだ!


「ミケから報告にゃ!弾薬がヤバイにゃ!」

「あとどれくらい残ってる!?」

「あと3割切ったにゃ!」


マズイ・・・!

ロケット発射まであと11時間もある・・・!

弾薬を失えばスライムの攻撃力は著しく低下する

そうなれば、敵を押しとどめておくのは到底無理

とてもじゃないが、残り11時間なんて耐え切れない!


「くそっ!どうにかしないと!」

「打ち止めに期待するのは・・・希望的観測でしょうね」


そう、もしこのペースが続くなら敵の増援はあと10回

つまり残り10000の敵が残っているという計算だ


「こんな状態でロケット発射まで耐えきるなんて、もうどうやっても無理にゃーー!!!」


あまりの絶望的な状況にそう叫ぶリィ、そして


「戦力差が圧倒的すぎるにゃーーー!!!」


と、リィが続けて大声で叫んだ・・・その時!


(ん?)


俺はその言葉に大きな違和感を抱いた・・・!


(「圧倒的な戦力差」だって?いや確かにそうだ、リィの言う通りそれは間違いない。しかし・・・だとしたらこの状況はおかしい・・・。一体何故?)


圧倒的な敵の数、きっちり1時間毎に現れる敵増援・・・・

そこから導き出される違和感の正体は・・・!


「そうか!そういう事か!」


その違和感の正体に気づいた俺は全員に通信を入れる!


「全員聞こえるか!?」

「はい!聞こえますにゃ!」

「おとうさん何・・・?」

「こちらギガメリウスです、如何されましたか?魔王殿」


ミケとティスとギガスがすぐ応答する

そして少し遅れて、ウラムも通信に応答した


「なんですか魔王様?こちらはこちらで色々と忙しいのですが」

「いいから聞け!ウラム!俺達と敵の戦力差は圧倒的!そうだな!?」

「・・・?ええ、間違いありません」


そう答えるウラム、そして俺は続けて質問する


「それじゃあ、お前が天使側の指揮官の立場だった場合どうやって攻める!?」

「どうやっても何も・・・戦力差は圧倒的なわけですから、全軍で一気に・・・」


とそこまで言いかけた所で、ウラムは俺の意図する所を察した


「ああそうだ、誰だってそうする俺だってそうする」

「おとうさんの言うとおり、戦力の逐次投入なんて馬鹿のやる事・・・」

「にゃ?でも、じゃあ何で」

「敵はそんな愚行を繰り返しているのか?ですね」


そう、これがまず第一の違和感。そして・・・


「それと1時間毎に現れる増援だ。少なくとも現時点で俺達は10000ものロボットを撃退している。だが、そこにも不審な点がある」

「どういう事ですか?ソーマさま」

「そんな大量の敵が「何処から」現れたのかって話だ」

「何処から・・・?」

「なるほど・・・。我々は敵の妨害を予測し準備を整え、当然周辺地域の偵察は念入りに行っていた。ですが・・・」

「ああ、そんな大量の敵は影も形も無かった。10000ものロボットなんて、たとえ光学迷彩をしていたとしても見逃すはずがない」

「ならば・・・敵は一体何時何処から現れたのでしょうか、魔王殿?」

「消去法だ。今まで何処にも居なかったのなら、答えは一つしかない。敵は「突然その場に現れた」んだ」

「「!?」」


そう、敵は突然現れた・・・!

どんなにありえないと思っても、現状がそれを物語っている!

なら、あとはその方法を暴くだけだ!


「敵は何も無い所から突然現れた・・・?」

「突拍子も無い話だが不可能じゃないはずだ。似たような事を俺も経験してるわけだしな」

「ソーマさまも?それって!」

「なるほど、空間転移・・・!私の様に異なる次元から連れてきたと言う訳ではないでしょうが、敵はどこかから「転移」してきているという訳ですね」

「天使が科学力に優れた種族だってのは明白だ。よって恐らく、奴らは転移装置の様な物を使ってロボット達を送り込んできているんだろう」

「確かに。彼等が持っているという過去の超技術、その一つに転移装置などがあってもおかしくはありません!」

「ふむ・・・それで最初の話に繋がるわけですね」

「ああ。敵は1000機づつしか戦力を「投入してこない」んじゃない、1000機づつしか戦力を「投入出来ない」んだ」

「それがロボット達を転移装置で転移させられる限界数。きっかり1時間置きと言うのも、機械的な動作だと考えれば辻褄が合いますね」


その時、その話を聞いていたウナから報告が入る!


「敵がやって来ている方向は東、西、南の3方向からだにゃ!魔王の仮説が正しいなら!」

「その3箇所に転移装置がある・・・!そして、それを破壊さえすれば勝ちの目がある・・・!」

「ああ!ティスの言うとおりだ!」


ティスの言うとおり、転移装置を破壊すれば敵増援はストップする!

そうすれば、ロケット発射までの時間を稼ぐ事が出来るかもしれない!


「ならば善は急げですね、早速転移装置の破壊に向かいましょう。ですが、悠長に一つづつ潰して回る余裕はありません」


そして続けて、ウラムが言った


「ここは三方向同時に攻めるべきでしょう」


ウラムの提案に全員が同意する

しかし、スライム部隊に転移装置破壊に回す戦力の余裕は無い

ここは戦闘能力、機動力共に優れた幹部4人のうち3人に

単独で転移装置の破壊に向かってもらうべきだろう


「承知致しましたウラム殿。では、誰が向かうか・・・いえ・・・」

「誰が残るか・・・決める」


そう、3箇所に同時攻撃を仕掛けている間、誰か一人がこの場に留まって敵を押しとどめる必要がある

いくら幹部とは言え、一人でロケット周辺の防衛を行うのは容易ではない


「ここは私が・・・」


そうウラムが言おうとした瞬間・・・!


「ここは私に任せてください!」


ウラムの言葉を遮り、ミケが言った!


「ですがミケ・・・」


すかさずウラムがミケを止めようとするが・・・


「転移装置の破壊に向かうなら敵の大群の中を突破しなくちゃいけません。でもこの4人の中で私だけ飛べませんから、私以外の3人が行った方が効率的です。それに、防衛だけに専念するなら私の得意分野です!」


そう言って胸を張るミケ。そして


「それに、いざと言うときの切り札もありますし!」


そう全員に向かって、堂々と言ってみせた

それを聞いたウラムは、少し考え込んだ後答える


「・・・分かりました、この場はミケに任せましょう。いいですね魔王様?」

「ああ・・・ミケ頼む!」

「はい!ソーマさま!」


同時に、ウラム、ティス、ギガスの3人がそれぞれの方向に飛んでいく!


「速攻で潰して戻ってくる・・・!」

「ミケ殿、御武運を!」


そして一人ロケットの側に残ったミケは、防衛線を突破してくる敵に目を向ける!


「ここは震央将軍ミシュケイオスが死守します!かかってくるですにゃーーー!!!」


そう叫び戦闘態勢に入るミケ!

そして、たった一人の防衛戦が始まったのだった!






戦場にミケの声が響くと同時に!ミケは今までにない程の俊敏さで地を走り抜けた!


「敵接近」


高速で近づいてくるミケに対して攻撃しようとする敵だったが!


「アースカットクロー!!!」


ザシュッ!!!


それよりも早く!ミケの一撃が敵ロボットを両断していた!


「さあ!どんどん行きますにゃ!!!」


ザシュッ!!!ドガガガガガッ!!!ザンッ!!!


素早い動きで敵ロボットを翻弄しながら、魔力で作られた斬撃で敵を両断!

ロケット周辺まで防衛線を抜けてきた敵を一人で倒していくミケ!しかし!


「ミケ!また敵が抜けてくるにゃ!」

「了解ですにゃ!」


次から次へと、新たな敵が防衛線を抜けロケット近くまで侵攻してくる!


「マズイ!敵の数が多すぎる!スライム部隊は!?」

「スライム部隊も頑張ってるけど!それ以上に敵が多すぎるんだにゃ!」


大量の敵を相手に孤軍奮闘するミケ!だがその時!


「目標射程内、ミサイル発射」


ボシュッ!


敵ロボットの一機が、ロケットに向かってミサイルを発射した!


「にゃ!ロケットが!!!」


すかさず!ミケがロケットに向かっていくミサイルに飛びかかる!


「うにゃ!!!」


ザシュッ!!!


そしてその爪でミサイルを両断する!だがその瞬間!!!


ドオオオオォォンッ!!!


ミサイルはその場で爆発し!ミケは爆風に巻き込まれる!


「ミケ!!!」

「だ、大丈夫ですにゃ!」


爆風から飛び出し着地したミケは、すかさず接近してきていた敵に向かっていく!


「お返しですにゃ!」


ザシュッ!!!ドオオオオンッ!!!


そして、ミケの一撃で破壊される敵ロボット!しかし・・・!


「ハァ・・・ハァ・・・」


息を荒くするミケに、俺は通信機越しに叫ぶ!


「ミケ!怪我は!?」

「大丈夫です、ちょっと手を火傷したぐらいですにゃ」


何でもないと言うように返事をするミケ

だが、致命的なダメージは無いにしても

少しづつ、ダメージはミケの身体に蓄積されていた


(このままじゃ・・・耐えきれない・・・)


ミケがそう考えていた、その時!


「マズイにゃ!敵の航空部隊が防衛線を突破!!!」

「数は!?」

「50は居るにゃ!!!」

「なっ!50機だと!?マズイ!!!」


ミケはよくやってくれているが、空を飛ぶ敵相手にはどうしても後手になってしまう!

しかも敵は50機、ロケットを守りきるのは不可能に近い!

だが、その時!


「大丈夫ですソーマさま!」

「ミケ!?だが!」

「見ていてください!今こそ私の「切り札」を使う時です!」


ミケは俺に向かってそう叫んだ!そして!


「私は世界に接続する・・・」


その「世界への宣言」と同時に!


ゴゴゴゴゴッッッッッ・・・!!!


ミケは精神を集中させ魔力を高めていく!


「この魔力量!まさか!」

「にゃ!?ミケ!?」

「そんな魔法!出来るにゃ!?」


魔力を高めながら、ミケは2週間前の事を思い出していた・・・






「究極魔法ですか?」

「はい!」


2週間前の事

ミケはウラムに究極魔法の使い方を教わるべく師事をお願いしていた。だが・・・


「あれはラグナやギガスの様な、所謂「魔神」クラスの魔族が使う魔法です。ミケも四天将軍の一人ではありますが彼ら魔神達には及びません。貴方の様な通常の魔族が究極魔法を行使しようとした場合。下手をすれば、魔法を発動する為に全身の魔力を使い果たし、死に至る可能性もあります。ハッキリと言います、ミケに究極魔法を扱うのは無理でしょう」


そうきっぱりとミケの師事を断るウラム。しかし


「それでも、使い方だけでも教えてもらえませんか!?」


そう食い下がるミケ

いつになく真剣なミケに、ウラムは困った表情で言った


「何故そこまで力を求めるのですか?ミケ達の様な普通の魔族が戦わなくてはならない時代は600年前、既に終わったのです。この様な戦いは私やラグナやギガス、過去の時代の遺物に任せてよいのですよ」

「それは・・・」


ウラムの言葉に俯くミケ

そして、ミケはウラムに師事を願った理由を語った


「あの天使との戦いの時、皆が戦っていたのに私だけ何も出来なかった・・・」


精神を制御されたアリア、そして上級天使ジョシュアとの戦い

その中で傷ついていく仲間達、そして大事な人まで


「もう私だけ何も出来ないのは嫌なんです・・・皆が戦っているのに私だけ傍観者ではいられない!傍観者でいたくない!だから!」

「・・・」


そのミケの言葉に考え込むウラム

そして少しだけ息を吐いた後・・・


「・・・分かりました。それでは、究極魔法の一つをミケに教えましょう」

「本当ですか!?」

「ええ。ですがこれはあくまでも最後の手段。どうしても必要な時以外は使わないと約束して下さい」

「分かりました!」


ミケの返答を聞いたウラムは少し微笑むと言った


「では修行を始めましょう。ミケに教えるのは土属性の究極魔法です」






ウラムとの修行を思い出しながら、ミケはその時教わった魔法を練り上げていく


(今がその時です、ウラムさん・・・)


ゴゴゴゴゴッッッッッ!!!


そしてミケは、凄まじい量の魔力を制御しながら「宣言」する!


「是なるは震央将軍ミシュケイオスの究極魔法、全ての分子を結集させ領域を守護する究極の一!!!」


その世界への宣言と同時に!ミケは両手を地面に付けて叫んだ!


「ミシュケイオスの聖域!!!」


ドガガガガガガガッ!!!!!


その瞬間!地面が隆起すると土がミケとロケットを全て覆う!そして!


「あれは!土で出来た城か!?」


全てを守護する、巨大な土の城がその場に現れたのだった!!!

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