魔王と600年前の話・大戦の終結
:魔王と600年前の話・大戦の終結
会議のすぐ後
ロケット捜索任務へと向かったウラムとラグナは、飛行魔法で辺境のとある地方へ向かっていた
「・・・それにしても、私も空を飛べるなんて・・・便利になった物ね。模倣魔法だっけ?」
「ええ。人間達が我々の使う魔法を元に作り上げた物です」
「人間が魔法を使うなんて、600年前は考えられなかったわ」
「そうですね。人間の世界は日々進歩していく物という事です」
「ふーん?私には何処かの魔族が、人間達に懇切丁寧に魔法の使い方を教えたんじゃないか?って思ったけど」
「はははっ。だとしたらその魔族は、よっぽどの酔狂な考え方の持ち主ですね」
ウラムはいつもの笑みを浮かべたままラグナの質問に答えた
ラグナはそのとぼけた態度に対してフンッと顔を背ける
そして少し落ちついた後、ラグナがウラムに質問した
「そう言えば・・・600年前、魔族と人間の争いがどうやって終わったのか聞いてなかったわね。ティスに聞いても知らないって言ってたし」
「気になりますか?」
「それなりにはね。私は最後まで付き合えなかったから」
魔王軍の幹部として、最後まで彼等を導く事が出来なかった事
ラグナにとってそれは未練、以前の自分の時の心残りだった
「私もこの目で見たわけではないので、ギガスに聞いた話になりますが・・・」
その言葉にラグナは少し首をかしげたが、そのままウラムの話を聞くことにする
「ラグナが消滅した後、主だった幹部の殆どを失った魔王軍はじょじょに戦線を後退させていき。そして一年後、魔王軍はミダス砦まで追い詰められていたそうです」
「ミダス?辺境も辺境、正にどんづまりね」
「ええ。ミダス砦を包囲した人間の連合軍は魔王軍に対して降伏を勧告。これに対して魔王軍・・・と言うより、魔王軍残党を率いていた最後の幹部「覇獣将軍グラシュラオス」はこれを拒否。最後の決戦の火蓋が幕を上げようとしていたという訳です」
「グラシュラオス・・・?ああ、グシオね」
「そう言えば彼は第二軍団所属ですから、ラグナの部下でもありましたね。まあそれはともかく。人間と魔族の最後の戦いが始まろうとしたその時、人間側から一人の男がそのグラシュラオス将軍に対して一騎打ちを申し込んだのです」
「一騎打ち?グシオ相手に?」
「ええ。一騎打ちを申し込んだのは当時人類側では最強の存在、勇者アルゼアです」
「アルゼアが・・・」
「二人の戦いはまさに魔族と人類の最後の戦いに相応しい、凄まじい物だったそうですよ。そしてグラシュラオス将軍と勇者アルゼアの一騎打ちは勇者アルゼアの勝利に終わり、グラシュラオス将軍は降伏勧告を受諾。魔族と人間の気が遠くなる程長い長い争いは終結したという訳です」
ウラムの話を聞きながらラグナは遠い過去、自分に向かって理想を語った少年の言葉を思い出していた
(人間と魔族どちらかが滅びるまで戦うなんて間違ってる!僕は違う手段でこの戦いを終わらせてみせる!)
あの時、私は下らない理想だと彼を突き放した
そんな物は実現出来るはずの無い夢物語だと、それなのに・・・
(あの時の坊やがね・・・)
あの時の少年が青年になり、そして勇者として人間と魔族の戦いを終わらせた
ラグナは少しだけフッと笑うと、何事も無かったかの様にウラムに質問する
「あれ?って事は、グシオってまだ生きてるの?」
「ええ。辺境の魔族の村でのんびり暮らしている様ですよ」
「へえ。それなら、今回の仕事が終わったら会いに行ってみるのも面白いかもね。アイツきっと驚くわよ」
「そうですね。いつもミケにはお世話になっていますし、一度会いに行ってみるのも良いかもしれません」
その時、唐突に現れたその名前に疑問を抱き眉をしかめるラグナ
「ミケちゃん?どうしてそこでミケちゃんの名前が?」
「おや?気付かなかったんですか?ミケはグラシュラオス将軍のご息女ですよ」
「は!!!???ミケちゃんがグシオの娘!!!???」
ウラムの言葉に思い切り動揺するラグナ
「いやいやいやいや・・・全然似てないでしょ!共通点なんて種族くらいしかないじゃない!」
それもそのはず、覇獣将軍グラシュラオスと言えば魔王軍でもかなりの武闘派
いや、戦闘狂と呼んでもいい程の男だ。少なくともラグナはそう記憶している
「ミケは母親似なのでしょう。それに人だけでなく魔族も変わる物ですよ。彼も今では、子煩悩な父親と言った感じらしいですし」
そのウラムの言葉に、やや放心した様に呟くラグナ
「あー・・・600年も経ったって今改めて感じたわ・・・時代に置いていかれた感じ・・・」
そのラグナの様子にフッと笑った後、ウラムは改めて表情を引き締めると言った
「・・・彼等の為にも、必ずメギドを破壊しなくてはなりません」
「ええ、そうね・・・。こんな事で世界を台無しにしたら、アルゼアにもグシオにも怒鳴られるわね」
魔族と人間の最後の戦いを行い、そして戦い以外の道を選んだ二人
今の世界は彼等と、そして大勢の人達が選び取った末にある物なのだ
それを天使達の勝手な都合で破壊させる事は絶対にさせてはならない
そしてウラムとラグナは、目的地へ向かって急ぐのだった
それから一日、24時間ほぼ休み無しで飛び続けたウラムとラグナは、とある辺境へとたどり着いていた
その時、ラグナが訝しげな顔でウラムに言った
「ウラム・・・もしかして今私達が向かってる場所って・・・」
「気付きましたか?」
「まあ、これだけ近くまで来ればね。上空からとは言え、知ってる風景も所々あるし」
「ラグナの予想通りです。ほら、もう見えて来ましたよ」
そして二人の目の前に現れたのは、おどろおどろしい城だった
そこは人間はおろか、もはや魔族すら近づかない場所
世界を我が物にしようとした存在の城
「魔王城・・・」
「ええ。懐かしの我が家と言った感じでしょうか?」
「・・・どの面下げてって感じね」
だが、もはやそこにあるのは住む物も居なくなったただの廃城
闇の残滓すら感じられない、ただの壊れかけた建造物だ
少しの間、ラグナは城を無言で眺めていたが
しばらくした後、ラグナは気を取り直すとウラムに問いかける
「それで?何でこの場所に?確か私達はロケットを探す為に来たのよね?」
「ええ、そうです。これはフィーリスさんの端末にあった記述なのですが、彼女は天使査定に来る際、場所を間違えたそうです」
「場所を間違えた?」
「地図データの更新がされていなかったとかなんとか・・・見せてもらいましたが、彼女が持っていたデータは600年前のセレンディアの地図でした」
「・・・ああ、そう言う事」
そこまで聞いた所で、ラグナは納得した様に首を縦に振る
「ええ。600年前のデータなら我々が今住んでいる城はエキザカム城となっているはずですからね、彼女が間違えるのも無理もありません。それでは、彼女は最初一体何処へ向かったのか?・・・答えは当然「魔王城」です。ただし600年前の地図にある「旧魔王城」ですが」
「つまり、ロケットもこの近くに着陸したはず・・・って事ね」
「はい。残念ながら、ここからは周辺のロケットが着陸出来そうな場所を虱潰しにと言う事になります」
「それでこの辺りの地形を把握してる私が呼ばれた訳ね」
「そう言う事です。それでは早速行動に移りましょう、この魔王城を中心に北を私がラグナは南を探して下さい」
「了解」
そして二人はそれぞれの方角へ飛んでいく
だがその後
旧魔王城を中心に周辺を捜索していく二人だったが、ロケットは見つからず時間だけが過ぎていく
「聞こえる?ウラム」
イライラした様な声で通信機に喋るラグナ
「聞こえていますよ。その様子ではロケットが見つかったという報告ではなさそうですね」
「ええ、もう結構範囲を広げてるけどそれらしき物は影も形も無いわ。アンタの予想が外れてたんじゃないの?」
「もちろんその可能性はありますが。ロケット程の巨大な物体が見つからないとは。もしかしたら光学迷彩の類かもしれませんね」
「光学迷彩?天使が姿を隠してたアレ?」
前回の戦いで、何も無い空間から突如現れたジョシュアの姿を思い出すラグナ
「ええ、そうです。しかしその場合捜索は難しくなるかもしれませんね・・・」
「難しいって、それじゃあどうすれば・・・!」
ラグナがウラムにそう怒鳴ろうとした、その瞬間!
(ラグナ待って!)
「ティス?」
突然、ティスの声が頭の中に響きラグナはその場で停止した。そして
(あの場所・・・何かおかしい)
「あの場所?」
ティスの思考に合わせ視線を移動させていく、だがラグナの目の前にあるのはただの森だった
「どう見てもただの森よティス?とてもじゃないけどロケットが着陸出来そうな場所じゃないわ」
(うん、でもおかしい。ラグナ代わって)
すぐさま人格が交代しティスが表に出る
そしてティスは、しばらくその森の周辺を飛び回っていた
「やっぱり・・・あの辺りの森だけ命を感じない」
(どういう事?)
「魔力があの森を避けて移動してる、だからあの森には命を感じない・・・。よく出来た作り物、ゲームの風景みたいな物」
そしてティスは森の上空で停止し・・・
「多分これでいける・・・」
そう呟き、魔力を集中させると違和感のある森に向かって手をかざす
「風と・・・土・・・魔力の流れを正常に戻す・・・!」
(!?)
ゴオッ!
そしてティスの手から魔力の波が放たれる!
すると森があったはずの場所が歪み、そこにあったはずの木々が消えていく
(ティス、今の魔法は・・・!?)
「そんな事よりあれ」
その場所に着陸したティスはすぐにラグナと交代する
目の前の物体を見上げながら、ラグナは通信機に向かって言う
「ウラム聞こえる?例の物・・・見つけたわよ」
そこに有ったのはまさしく
フィーリスがこの星に来るのに使ったと思われるロケットだった




