魔王と背水の天使達
:魔王と背水の天使達
時間は一日前に遡り、3月13日
セレンディアグランプリ決勝の直後
「あ・・・貴方は・・・!!!」
「・・・あ!!!」
ジョシュア達の前に現れたのは、モニター越しに彼らに指示を与えていた男だった
「その手を下ろすのだ、ジョシュア・レドヴァイン上級天使」
「ッ!・・・ハッ」
渋々ながら振り上げた手を下ろすジョシュア
(クッ・・・何故この方がこの星に直接・・・?)
ジョシュアの頬を一筋の汗が伝わり落ちる・・・
決して失敗出来ない作戦を失敗してしまった、その事実がジョシュアの心に大きく圧し掛かかる
そして・・・
「さて、ジョシュア・レドヴァイン上級天使、そしてフィーリス・ミルドヴァルド二級天使。どうやら作戦は失敗に終わった様だな」
「・・・ッ!!!」
「・・・は、はい」
そう淡々と告げる男
それは二人の天使に取っては死刑宣告にも近い物だった
「・・・で!ですがこれは!この二級天使が・・・!」
その言葉に焦るジョシュア、だが
「いや、今回フィーリス・ミルドヴァルド二級天使の行動に落ち度は無かった。各部署への指示の伝達からレースのマシンの調整まで、彼女にミスは無い」
「・・・あ」
男はフィーリスの責任を追及しようとするジョシュアの言葉を、バッサリと切り捨てる
「だったら・・・!!!」
俺の責任だと言うのか!?
そう言葉を荒げようとするジョシュアに対して、男は意外な言葉を告げた
「いや、ジョシュア・レドヴァイン上級天使。君の作戦遂行にも何の落ち度も無かったと、私は判断している」
「・・・な?」
そう、男は二人を処分する為に現れたのではなかった
その意外な事実に困惑する二人
「・・・あえて責任の所在を問い詰めるなら、それは私にあると言っていいだろう。あの魔王軍を甘く見ていた私の判断ミスだとな」
「・・・」
男の言葉にジョシュアはその口を閉ざす
責任は自分にある。直属の上司である男がそう言うからには従う他無い
「だが、当然話はこれで終わりではない」
そして男は一度話を区切ると、改めて言葉を続けた
「今回の作戦の失敗により我々は、これ以上この星での作戦行動の継続が困難となった」
「はっ・・・」
そう、今回の作戦で天使達はかなりのリソースを費やしてしまった
本国からの支援があればどうという事は無いが、隠密での作戦行動は限界を迎えている
「そ、それはつまり・・・!」
作戦行動の中止
魔王軍を放置する事は出来ないが、暫くは監視体制に移行する事となるだろう
(そうすれば、彼らに危険性が無い事を証明する十分な時間が取れるっス!これでようやく・・・!)
だが、男が告げたのは作戦行動中止の命令ではなく
想像しうる最悪のシナリオの始まりだった
「よって、私の権限でここに緊急事態案件と認定。規則24条の限定解除をもって、この事態の対処に当たる事を決定した」
「24条の限定解除・・・!?それは・・・!!!」
その言葉を聞いたフィーリスは思わず声を上げる!
そして、同じくその言葉を聞いたジョシュアは俯くと
「クックックッ・・・ハッハッハッハッハッ!!!」
次の瞬間!大声で笑い出した!
「それはつまり!奴等に対しての、直接的な武力行使が可能となったと言う事ですね!?」
「その通りだ」
「クックッ・・・そうですか!ハッハッハッハッハッ!!!」
「・・・」
笑い続けるジョシュアに対して、男はその淡々とした態度を乱す事はなかった
男は、ジョシュア・レドヴァインという天使の狂暴な精神性を十分承知している
いや、「その為の要員」だと理解しているからだ
「では、早速部隊を動かして奴等を・・・!!!」
そう嬉々として語るジョシュア。しかし・・・
「いや、部隊は動かさない」
だが男は、作戦行動を開始しようとするジョシュアを止める
「なっ!?武力行使の許可をしておきながら部隊を動かさない!?一体どういう事ですか!?」
男の支離滅裂な発言に、思わず声を荒げるジョシュア
それに対して、男が答えたのは
「この件に関しては、他に適任者が居る」
「適任者・・・?」
「そうだ。この世界が産み出した悪はこの世界自身が打ち倒さなくてはならない、我々はあくまでその手助けをする為の存在である。形骸化したルールではあるが、無視も出来ない」
そうジョシュアに答えながら、男は考える
(我々とは教えを異なる考え方だが、穏健派にこちらを非難する材料を与えてしまうのも避けたい。それに・・・「あの女」の介入だけは、なんとしても避ける必要がある・・・)
その時。男の答えに対して、ジョシュアが更に質問をした
「この世界自身・・・?ですが奴らを倒せる様な、そんな人間がこの世界に居るのですか・・・?」
それに対し、男はジョシュアに向かって「ソレ」を告げた
「「半神計画」・・・その成果を確かめる時が来たのだ」
「半神計画・・・?」
その言葉に首を傾げるジョシュアに対し、男は淡々と「ソレ」について語り始めた
・・・・・・
そして、天使達は行動を開始する
「彼女」の覚醒を促す為に
そしてその翌日、魔王城の一室
「ん~」
執務室兼自室のデスクで、俺は書類と睨み合いをしていた
だが、その表情は以前の様に苦々しい物ではなく・・・
「フッフッフッ・・・」
俺は書類を眺めながら笑みを浮かべる。その時
コンコンコン
「失礼します」
部屋のドアが3回ノックされ、ウラムが入ってくる
「どうしました?何か問題でも?」
書類と睨めっこしている俺に、ウラムが質問してくる
「いや、むしろ逆だな」
「逆ですか?」
「ああ。つい先日とは言え、セレンディアグランプリ優勝はかなりの知名度アップに繋がったみたいでな。これは全部、新しいビジネスのオファーの書類だ」
そう、それらは共同ビジネスや新規事業立ち上げの共同開催の企画
それに加え、魔王軍の面々のイメージキャラクター起用なんてオファーまであった
「一日でそれだけ反響が大きいとは。それで、受けるのですか?」
「いくらなんでも全部は無理だ。そこで受ける内容を吟味してたわけだが・・・」
とは言え、引く手は数多
かなり好条件で仕事を請け負う事が出来そうだ
「なるほど。ところで魔王様、報告したい事があるのですが」
突然、ウラムの表情が真面目な物になる
その表情から俺は話の内容を察し、ウラムに言った
「GAか?」
「はい。GAは先日のセレンディアグランプリ終了後、即座に全ての業務を停止し市場から姿を消しました。まだ先日の事なので大きな混乱は起きていませんが、いずれは大きな騒ぎとなるでしょうね」
「なるほど。それで、裏で糸を引いてた奴等は?」
「そちらに関してですが、おそらく・・・」
GAの裏で糸を引いていた組織とは?
ウラムがそれを答えようとしたその時、ウラムは急にその口を閉ざした
そして、俺に質問をする
「・・・魔王様。突然で申し訳ありませんが、アリアさんは何処へ?」
「アリア?一体どうした突然?」
「彼女にも少し話をしようと思っていたのですが、城の中にアリアさんの気配が感じられません」
「ん?ああ。近くの町まで買出しに行くって言って出かけたぞ。朝ぐらいだったかな」
「そうですか・・・」
俺の言葉に何やら考え込むウラム。その時!
ウーー!ウーー!ウーー!
突然!城全体にサイレンが響き渡った!
「な!これは確か!?」
「緊急事態警報!敵の襲撃があった際の物です!」
「襲撃!?一体誰が!?」
「十中八九、「例の敵」が仕掛けてきた物と思われます」
「直接仕掛けてきたってわけか!」
「・・・とにかく、今は状況の確認に向かいましょう」
「分かった!」
俺とウラムは執務室を飛び出し、全速力で城の外へ向かう!
(敵の動きが早すぎる・・・レースでの敗北の翌日に仕掛けてくるとは。それにこのタイミング・・・。もしかしたら、事態は最悪のケースを迎えているのかもしれません)
そして、城の外へ飛び出してきた俺達が見た物は・・・
「ギガスが・・・」
真っ二つに両断されたギガスと
「あれが、敵ですか・・・」
その側に立つ白い甲冑を纏った騎士、アリアだった




