第006話「テープ大好き(カメラもね)」
連続投稿6話目です。
俺は色々と考えて出来るだけ底の面積が狭く、かつ容量が多い袋を取って置いたのだ。
あの時の俺を褒めてあげたい。
これならば小さめのカゴに入るので、倒れないように自転車に紐で括っておけば大丈夫だろう。
ここで、賢い人ならば残り1つのリュックサックには何が入っているのかと考えるだろうが、こちらはこちらで大事なアイテムを満載しているのだ。
初めに説明しておかなければならないのだが、優貴が使うコスプレセットは俺の手作りであり、剣や鎧と言っても所詮はコスプレ用なので、普段使いの実用に耐えるような頑丈な作りではない。
それどころか、落としたり変に引っ掛けたりでもすれば、簡単に壊れたり破れたりしてしまう可能性が高いプアな代物なのだ。
なので、自転車での移動中に落としたり、着替える際に破いたりした場合を考えて、応急処置が可能な道具類を入れている。
まず、頼れる応急処置グッズであるガムテ―プを用意している。
ちなみに俺の言うガムテ―プは布の奴だ。
紙のは使い勝手が悪いし用途に見合わないので、俺の中の彼はガムテ―プ(笑)だ。
最近はホ―ムセンタ―なんかでいろんな色の物が売っていて、ガムテ―プ工作好きの俺としては売り場に行くと心が踊る。
現地で裁縫している時間もないだろうし、応急処置用なので色も黒だけだ。
鞘の色付けにも黒のガムテ―プを使っているので剥げた時にも使えるだろう。
後は金属テ―プを2種類。
片方はアルミテ―プで、もう片方は金色の金属テ―プだ。
金色の方の金属テ―プは材質を忘れてしまったので金色テ―プと呼んでおこう。
今度ホ―ムセンタ―で追加購入の際には材質を確認しておかねば……
実はこの金属テ―プ達、これがまた工作に便利なのだ。
強粘着で固定力が強く、手やハサミで簡単に切れるし、木工だと上に貼った後で粘土用のかきべらでグリグリと模様を描いたりも出来るから、優貴も頑張って刃にル―ン文字っぽい模様を彫っていたしな。
その分、伸びがないので引っ張りに弱かったり、丸まった部分に貼るのが難しかったり、皺になると見栄えが悪かったりするのが欠点かな。
今回、刃となる部分や鞘の装飾なんかの本来金属で出来ている部分については、この2つの金属テ―プが実に大活躍した。
簡単工作の割りに、遠目にはこれがまたなかなかに豪華に見えるのである。
――俺、テ―プ好きすぎじゃない?テ―プ様と呼ぶべきか?――
自身の趣味や商売なんかでこう言ったモノを普段から作っている人からすればフッと鼻で笑われてしまうのかもしれない。
正直、金属やレジンで作って作れない訳ではないし、木工であっても塗装を考えなかった訳でもない。
子供の為の物とはいえ、俺の中でこの手の工作関はコスト削減が最優先だ。
如何に安く、早く、それらしく仕上げるか。
そこで行き着いた先がこの度の作品(笑)なのだ。
どうせすぐに飽きて、別の剣や服を作る事になるのは目に見えているしね。
優貴には日頃から、何でもセロハンテ―プで工作するのはダメだと言っているのだが、何かとガムテ―プや金属テ―プで工作する俺にツッコミを入れて来ないのは優貴の優しさなのかもしれないな。
――安心してください。衣装にセロハンテ―プは使ってませんよ優貴くん!――
えっとなんだっけ?持ち物の話だっけ?
フッフッフッ……今、俺のリュックサックの中には黒のガムテ―プ、金属テ―プ2種類、カッタ―とハサミ、そして本日の一番大事な物が入っている。
俺のカバンを逼迫しているその正体、それは……一眼レフデジタルカメラセットだ!ババ―ン!
子供の貴重な一瞬を画像や映像で残すのは親である俺の使命!このために買ったとも言えるF2.8通しの中望遠ズ―ムレンズが火を噴くぜ!!
いや、レンズから火は噴かないし、噴いたらマジ泣く……お高いレンズだし。
まぁ、カメラを語りだしても仕方がない、語りたいが仕方がない……
さて、荷物についてはこんな感じで、つい先ほど30分掛けてやっと纏め終わった所だ。
優貴を起こすにはまだ時間があるし、スマホ片手にトイレに籠ってネット小説でも読みますかね。
ヒナタには悪いけど、トイレが終わるまでお待ちくだされ。
「あ、そう言えば財布入れてねぇや……というか、財布には殆ど金が入ってないんだったか……」
すっかり忘れていたが、道場へ行く前に途中で銀行に寄らないといけない。
昨晩、ずっと貯めていた10万円貯まる貯金箱が概ね満タンになったので、缶切りで憎き封印を解き放ったのである。
――もちろん500円玉で貯めてますよ!やったね!――
数えたところ、14万1千500円も入っておりましたよ?結構入るんだねぇ。
今はお札がほしいから、これを銀行口座へ入金してからカ―ドで引き出す必要がある。
――両替?あれ手数料とられちゃうからパス。――
貯まった500円玉は既に布の巾着に移してあるから、これも一緒に持って出ないとな。
俺は急いで隣の自室へ行き、ほぼ空の財布と巾着に入った500円貯金を持って、急ぎリビングに戻る。
「やべ、ちょっとお腹痛くなってきた……」
各種テ―プ様の入ったリュックサックのファスナ―をもう一度開き、持ってきた二つを放り込んでファスナ―を閉じつつポケットにスマホがある事を確かめる。
俺はグルグルするお腹を摩りながら、小説の続きを読むベく急いでトイレへと向かった。
車を手放してチャリにしました。
今の所不便はありません。