第004話「夢での約束」
連続投稿4話目です。
優貴部分の区切りです。
「じゃあ、今さっき王慧さんが言っていたスキルは全部ほしいかな。あと、目が良くなったり、素早く避けれたり、敵の攻撃が効かなくなったり、空を飛んだりテレポート出来たりするといいな。今までの話からだと無さそうだけど、出来れば死なないスキルがあれば欲しい」
「ふむふむ、了解致しました」
「あ、あと、魔法は全部使えるようになりたい!」
魔法はロマンだ。
離れた敵を派手な攻撃でババーンと倒したいよね。
「ムム、えぇっとですね、魔法全部は無理なのです。ですがまぁ、出来るだけ何とかしておきましょう。異世界チートだ何だと言いましても、ある程度の節度がないと異世界側を破滅させかねませんからね。種族限定魔法や異世界人の個人オリジナル魔法、向こうの守護神だけが使える魔法等のスキルはさすがに差し上げられませんのでご了承下さい。それと、死なないスキルですが、あることにはあります……しかし、優貴君が思ってるのとは違う不死ですので、やめておいた方がいいでしょう。その代わりと言っては何ですが、私の方で死に辛くなるスキルを見繕っておいてあげましょう」
使えない魔法があるのは残念だけど仕方がない。
ゲームのチートでも出来ない事はあるしね。
それにしても死なないスキルって、もしかしてアレな感じなのかな?
アルファベットなウィルスに感染した人たちみたいになって生きていくのかな?
――うわぁ、なにそれ、怖い――
別のでいいです。是非、別のでお願いします。
しかし守護神とか居るんだね。
創造神の部下みたいな神様なんだろうか。
「向こうのって言ってたけど、こっちの世界にも守護神とか居るの?」
「あぁ、この世界に守護神はおりませんよ?作ってませんので。他の世界は生命の居る星に対し、大体1体以上は居るようですね。他には御座いませんか?」
野球チームやサッカーチームには居るのに……
実際のこの世界には守護神は居ないんだ……夢がないね。
「そういえば無限に荷物が持てるスキルはないの?物の説明がわかる鑑定?とか、あとは念話とか出来たらカッコいいかな。」
「おっと、無限収納は守護神のスキルとなります。逆に向こうの世界では守護神以外にそのスキルを持っている存在は居りません。付与魔法で鞄等に限定的なインベントリを付与する方式が一般的に使われておりますので不便はないでしょう。まぁ、そのあたりは何とかならない訳ではありませんので考えておきます。あと念話、鑑定もそうですし言葉の問題もありますが、悪いようにならないよう何かしら対策しておきますので、楽しみにしておいてください」
――あれ?もしもの話だし、楽しみも何もないよね?――
「絶対に行かないからね?」
「あぁ、うん。そうでしたね。さて、そろそろ君が夢から覚めてしまう時間になったようです」
王慧さんが僕に向かってニッコリと微笑んだと同時に、不意に僕のお腹の辺りにカシャカシャと引っ掻かれるような感覚が走ったかと思うと、これまで鮮明だった周りの景色が急速に色褪せていく。
「では優貴君、ごきげんよう。また会いましょう」
その言葉を聞いた途端、色褪せた景色は真っ暗空間になり、僕は視界と意識を同時に失った。
ガサッ
ガサガサッ
ガサガサガサガサ ハッハッハッハッ
聞き覚えのある音と息遣いがする場所に眠い目を凝らす。
すると、僕のお腹に掛けられた布団の上で、ヒナタが穴掘りで僕を起こそうと頑張っていた。
目を開けた僕に気が付いたのか、ヒナタは僕の顔に飛び掛かり、ペロペロと息つく暇もない速さで口の周りを舐め回す。
ペロペロペロ
「やめてー」
ペロペロペロ
ヒナタが口と鼻を高速で交互に舐め続けるので、苦しくなった僕はヒナタを抱いて顔から離し、急いで布団の上で体を起こした。
「ぶぁはぁっ、苦しかった……」
僕の目が完全に覚めた事を確認したヒナタは、布団から降りて横の床に座り、ブンブンと尻尾を振っている。
――そういえばさっきの夢はなんだったんだろう?――
目が覚めた場所は自宅の布団の上だし、服も寝た時のパジャマのままだ。
僕を起こして得意げに尻尾をブンブンとちぎれんばかりに振るヒナタもいつも通りだ。あれ?
ヒナタの振っている尻尾がブレて見える……
ゴシゴシと自分の目を擦り、もう一度見直しても、やはり尻尾は何重にも見える。
「優貴ー!起きたんだったら着替えて顔洗って朝ごはん食べろよー。今日の空手は午前の稽古の後でハロウィンパーティだから。早く食べて用意して出ないと間に合わないぞー!」
――この声はお父さんだ。――
そうだ!変な夢を見たから忘れてたけど、今日は空手道場主催のハロウィンパーティだった。この日のためにお父さんに作って貰った衣装を着て参加するのを何か月も前から楽しみにしてたから、今日は絶対に送れる訳にはいかない。
「いまいくー!」
ヒナタの尻尾のブレは気になったけど、変な夢も見たしなんか疲れてるのかな?なんて思いつつ、僕はいそいそと朝の準備を始めた。
次話から別キャラになります。