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第002話「夢の出来事」

連続投稿2話目です。


――いや、だって、気になるし――


「そうですねぇ、どう言えばいいでしょうか。私はこの世界の何処にでも居る存在であり、出向くという表現は当て嵌まりません。解りますでしょうか?強いて言うなら、この場合は夢の中で優貴君に会うために準備した服……になるのだと思います」


うん、最初の方の話はどうでもいいか、まぁ会社行く為の恰好じゃない事は分かった。


「よくわかんないや。でも僕はパジャマで裸足だよ?この場所は真っ白で何もないし、ここでその恰好の意味ってあるの?」


事実、僕の服装は昨晩眠るときに来ていたボタンタイプのパジャマ上下であり、足元は裸足のままだ。


「これは申し訳御座いません。服や景色については君の夢の中のものですので、自分の服や景色は君が思った通りになります。自由に着替えると良いですよ」


――なんと、思った通りに自由に着替えられるなんて!――


僕は早速着替えを試すべく、昨晩も遊んでいたTVゲームの主人公の服装を頭に思い浮かべた。

すると、一瞬でパジャマ上下は黒い革と銀の鎖帷子を組み合わせた複合鎧と黒の革パンツに変わった。

手は素手からこげ茶の革グローブに変わり、裸足の足にはベルトに巻かれた同色のブーツが履かれる。

背中には鞘に入った2本の剣、鋼のロングソードと銀のショートソードを担いだ状態だ。

ゲーム中の装備とはちょっと違うんだけど、お父さんがハロウィンのコスプレ用に作ってくれた物とよく似ている。

僕のお父さんは結構器用で、木やアルミテープ、カラーのガムテープなんかを使ってちょちょいとゲームに出てくる剣っぽいのを作ってくれたり、手芸屋さんで材料を買ってきてミシンでそれっぽい服を作ってくれたりする。


ちなみに、お父さんはコスプレをしない。

している所は見た事がないし、お父さん自身もやらないと言っていたしね。

今、僕が着ている装備はお父さんに作ってもらった物に良く似てはいる。

けれど、革や鎖帷子の素材、背中の剣の重さなんかで、木や薄い布じゃなくて、本物のようにみえる。


夢で好きにできるのはいい。


装備が変わると共に、周りの風景は殺風景な草原に変わった。

昨日ゲームを終わるときにセーブした安全地帯のあたりだと思う。


けど、今は周りの風景はどうでもいい。


「やったー!本物??カッコいい!!」

「うんうん、カッコいいですね。私がスーツで来た意味はなかったようです……ジーンズで良かったですかね……うん……」


王慧おうけいさんの顔が困ったような切ないような感じになっていた。


「所で……質問、はもう良いですか?」


そうだった、忘れる処だった。


「えっとね。何か用なの?」


まさにガーン!という擬音が浮かびそうな形相で王慧おうけいさんが停止した。

大体2秒ほど停止しただろう所で王慧おうけいさんは気を取り直し、表情をキリリとさせて僕に話し出した。


「えー、オホン。ところで君」

優貴ゆうきだよ」

「あー、すみません。優貴ユウキ君。優貴ユウキ君は剣と魔法のファンタジー世界、スキルとチートで大冒険なお話は好きですか?」


それはお父さんが大好物な小説のジャンルだね。

僕も漫画化やアニメ化されたのを一緒に見たりしてたし知ってる。


「えっと、剣と魔法のファンタジーは好きだよ。今やってるゲームも中世っぽい世界で剣と魔法で戦うし、スキルもあるから大体のイメージは分かるかな。でも、チートは自分でゲームを買うようになってからにしなさいってお父さんに言われてるから微妙。チート使ってゲームをやると、すぐに飽きちゃってゲームが勿体ない?って言われたから。」


正直、本当はレベルマックスで無限のお金、在り得ない程の荷物が持てて、倒れず死なずの体力に打ち放題の魔法でチート無双は憧れる。

でも、コツコツとレベルを上げながら操作を練習して自分の腕を磨き、金策や持ち物の配分、敵の攻略を考えて知恵を高め、その結果として強敵を倒して強い装備や高価な報酬を得る楽しさは大事だと思う。


「そうだね。確かに、ゲームに関しては私もその通りだと思うよ。ただね、これが現実だった場合はどうだろう?例えば……うん、遊園地のアトラクション、ジェットコースターで考えてみましょう。ああいったアトラクションが安全に運用されているのは、出来る限り100%に近い確率で事故を防止出来る設計がされ、日々確認、整備をしているからであって、ふとした事で事故は起こります。その時に死んでしまう人も居るかもしれません。他には、飛行機やヘリコプターなんかの乗り物が解りやすいでしょうか。さすがに空を飛ぶ物だけあって、それはもう綿密に事故防止が策が考えられています。しかし、それでも飛行機もヘリコプターも落ちます。そして人が死にます。ゲームの中なら落ちて死んだっていいでしょう。いい加減な設計で整備も碌にやらなくったって、落ちて死んだらまたやり直せますからね。ですが、現実の場合はそうはいきません。この世界に絶対なんて物はないのです。では、剣と魔法のファンタジー世界において、出来る限り死なないように過ごすための安全策は何だと思いますか?」


「うーん、この場合はチートになるのかな?チート押し?でも、現実で剣と魔法のファンタジー世界を過ごせって言うなら僕もチートは欲しいと思うよ」


ちょっと前に、お父さんに中世ファンタジーRPGの世界に行きたいって言った時、文明が発達していない時代では、町や村は汚くて臭く、そこに暮らす人もやっぱり臭く、放置された汚物から伝染病が蔓延し、飲める水を確保する事も大変だったりするんじゃないか?って言われたのを思い出した。

そんな世界で素で生きていけるか?って聞かれると、正直僕には難しいと思う。

これは僕の偏見かもしれないが、生まれてから10年間、現代日本の都心部近郊のマンション暮らしで育った僕が、同じ日本とはいえ少し昔の片田舎へ行ったとして、ボットン便所でそこかしこから虫が入り込んでくるような家屋で暮らす事なんて考えたくもない。


そもそも僕は虫が苦手だ。


「うーん、難しい顔をしていますね。あんまり時間も無くなってきましたのでサクッと本題に行きましょう。優貴君には現実の剣と魔法の世界、そう、異世界へ行って頂きます」


ルビ設定が難しい……

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