23話 【現在】 激辛お菓子と甘い鞭
【現在】
それは学院の放課後の事だった。
日が傾き、徐々に赤みを帯びていって、空にその色が映し出される夕暮れの時、私は放課後の学院の中を歩いていた。
「どうもこういうのは慣れませんね……」
私は手紙を持ちながら、小さく呟く。
放課後の下駄箱の中に私宛の手紙が入っていたのだ。
『リーズリンデ様、あなたにお話ししたい事があります。放課後の5時に音楽室に来てください。 カルヴァロッサ』
そう言う手紙だった。
カルヴァロッサという名前は私の隣のクラスの男子生徒だ。そんな男子が放課後の私を呼び出すなんて、多分目的は……あれだろう。
自分でこう言うのもなんだが、私は学園内ではモテる方だった。告白も何度か受けている。今まで全部を断っているのだが、断るということは何度やっても慣れるものではなかった。
今の所誰かと付き合う気は、何故か起きない。
なんというか、今では無いという感じがする。
何かを待っている。
……一体何を待っているというのか。
でも、じっと待っていればいつかその時が来るだろうと、自分でもよく分からない感覚を覚えている。
待っていれば白馬の王子様でも迎えに来てくれるとでも思っているのか? 少女じみた考えに、自分に対して苦笑が零れる。
あぁ、でもカイン様は素敵だなと感じている。
でも片や世界を守る為に戦う最強の勇者、片やただの普通の女学生。
釣り合う訳も無いのだけれど。
そんなことを考えながら学校の廊下を歩いていると、音楽室の前に辿り着く。当然だろうけど、今日は音楽部や休みの様だった。中から音楽部の演奏は聞こえてこない。
外は夕暮れ。学院の校庭から部活動の掛け声が聞こえてくる。部活動の生徒たちがボールを片手に、大会に勝つ為の必死に練習を積んでいた。
「失礼します」
私は音楽室の扉を開け、声を掛けて中に入った。
音楽室の中は夕暮れの光が差し込み、部屋全体がうっすらと赤く染まっていた。大きなピアノが1台存在感を発しながらその場に佇み、片付けられていない為か、木琴とチェロがその部屋の中にぽつんと放置されていた。
「待っていたわ」
「え……?」
女性の声が私を出迎える。
その部屋の中にいたのは手紙の差出人であるカルヴァロッサ様では無かった。
少女がくるりと振り向いた。
「……アイナ様?」
「えぇ、驚いた? リーズリンデ?」
音楽室にいたのは男性に媚びを売ることで有名なアイナ様であった。そんな彼女は夕暮れの赤色を頬に受け、怪しい笑みを浮かべている。
「あ、あの……私はカルヴァロッサ様に呼び出されたのですけど……」
「残念だけど、呼び出したのは私よ」
「…………」
彼女はそう言って大きなピアノのへりに腰かける。所作にいちいち猫の様な滑らかさをはらんでいる。
女性特有の妖しさが1つ1つの行動に現れていた。
「一体何故……」
「リーズリンデ、あなた、カイン様に近づかないで頂戴」
「え……?」
アイナ様は目を鋭くさせて、私を睨む。
「私、見たの。あんた、保健室で勇者様を誘惑して体を売っていたでしょう? このまま勇者様に近づくようだったら、それ、学校中に言いふらすから」
「…………」
保健室で体を売っていた……。
保健室。
保健室……。
「……あっ!?」
「…………」
「いっ、いやいやいやいやっ……! ち、違うんですっ! あれは違うんですっ……! アイナ様っ……!」
私は慌てて大きく手を振った。
以前、私は学校の保健室でブラジャーのみの上半身裸の姿でカイン様に抱き着いてしまったことがあった。
そう言えば確かにあの場面でアイナ様が扉を開けて、その場面をガッツリ見られてしまっていた。
でもあれは違うのだっ! 聖女メルヴィ様の治療を受けて、きっとその副作用で私の感覚がおかしくなってしまっていたのだ!
なんだか体が熱くなって……、あれは本当の私の姿でないのだ! いつもの私はあんな風に男性に縋ったりしないのだっ!
それにエッ〇していないのは本当なのだ!
「ご、誤解ですっ! アイナ様っ……! わ、私決してカイン様を誘惑したりはしていませんっ! わ、私は誰ともそう言う関係になったことはございませんっ……!」
「ふぅん? 嘘つくんだ、リーズリンデ?」
アイナ様から冷たい声が漏れる。
「とぼけるというのなら、いいわ。私にも考えがあるから」
そう言って、アイナ様はぱちんと指を鳴らした。
すると、音楽室にあった扉がばんと大きな音を立てて開いた。
「え……?」
その扉は音楽準備室に繋がる扉だった。
その扉が開き、そこから8名ほどの男子生徒が姿を現す。
「な、なんなんですか……? あなた達……?」
「へっへっへ……」
突如現れた男子生徒たちはニヤニヤと笑いながら、私を取り囲むように位置取りをする。私は後退る。
「…………」
アイナ様は男子生徒の出現に一切の動揺を見せない。彼らがアイナ様の手下であることは明白だった。
「ねぇ、リーズリンデ?」
彼女がピアノから腰を下ろし、私に向かって歩き出す。男子生徒達がアイナ様に道を譲る様にぱっと割れ、そこをどく。
「この誓約書にサインをしなさい」
「え……?」
「今後、勇者様に近づかない、声を掛けない、誘惑をしない。勇者様から永遠に手を引きなさい?」
彼女が1枚の紙を取り出し、私に突きつける。
そこには彼女の言った通り、カイン様と疎遠になる為の約束事が箇条書きにされて書かれていた。
今後一切カイン様と親しく接しないと約束させる為の誓約書であった。
「分かってるでしょ、リーズリンデ? 今自分がどういう状況にいるか。あんたはその誓約書にサインをするしかない。そうでしょ?」
「…………」
確かに8名ほどの男子に囲まれてしまっては、私に出来る事なんてない。抵抗は無意味であることは分かる。
でも……。
「私だって乱暴をしたいわけじゃないの。こいつらに腕掴まれて、無理矢理サインさせられたくなかったら、大人しくサインして頂戴? 分かるでしょ? リーズリンデ?」
「…………」
私は誓約書から視線を外し、アイナ様を見る。
「……なによ、その目は」
「…………」
甘いなぁ、って思う。
こんな誓約書に何の意味も無いし、適当にサインして、後は知らぬ存ぜぬをすればいいだけだ。保健室の出来事を脚色されて言いふらされるのは困るけど、それはまぁ、頑張って火消しをしよう。
アイナ様は意外と抜けていて、甘々な人であった。
だからこのアイナ様の行動には何の意味も無くて……、
「お待ちください、アイナ様」
「ん……?」
私を取り囲む1人の男子が声を上げた。
「そんな紙切れ1枚では甘いです。アイナ様に楯突く女には、少し痛い目を見せてやらないといけませんよ」
「え……?」
とある男子の言葉に、アイナ様は目をきょとんとさせる。
そう言ったのは隣のクラスの男子のカルヴァロッサ様だった。私への手紙の宛名に書いてあった名前の人である。
「アイナ様に喧嘩を売る様な奴は、貴女との約束なんて破ってしまう可能性がございます。ここはしっかりと痛い目を見せ、もう逆らえない様にしてやるべきでしょう」
「……別にそんなことしなくても、誓約書にサインさせればいいでしょう、カルヴァロッサ? そこまでやる必要ないし、そんなことしたくないわ、私」
「そうですか……。仕方ありません。……おい」
「はい」
「え……?」
カルヴァロッサ様が視線だけで指示を出すと、1人の男子がアイナ様を後ろから羽交い絞めにした。
「ちょっ……!? 何するのよっ……!」
「分かって下さい。全てはアイナ様の為なのです」
アイナ様は暴れるけれど、男子の羽交い絞めからは逃れられない様だった。
カルヴァロッサ様は手提げ袋から1本の鞭を取り出し、それで床を叩いた。
バシンという、弾ける様な音がする。
「なっ……!?」
「鞭っ……!?」
「おっと、誤解しないで下さい。これはただの雰囲気作り。こんなものは使用しないに限ります。……えぇ、使用したくは、無いですねぇ……」
カルヴァロッサ様の厭らしい笑みに、私とアイナ様の顔が引きつった。
「本命はこちら……、ふふふ……こちらですよ……」
そう言って、カルヴァロッサ様はその手提げ袋から別の何かを取り出した。
それは……、
「ん……?」
「え……?」
今度は私達の目が丸くなる。
「……シュークリーム?」
「ふふふ、ご名答……」
そこにあるのは何の変哲もないシュークリームだった。
普通のデザートのシュークリームだ。生地がふわふわと膨らんでいて、適度な焦げ目がついており、とても美味しそうだった。
「ところがどっこい、ふふふ……、これはただのシュークリームじゃないんですよ……」
「…………」
「実はこのシュークリーム……」
カルヴァロッサ様がニヤリと笑った。
「……中が激辛マスタードで一杯になっているのですよっ!」
「……は?」
「はい……?」
「ふははははっ……!」
カルヴァロッサ様は高らかに笑い、私達は首を傾げた。
「ははははっ……! こんな激辛シュークリームを口に入れたが最後……悶絶、絶叫は必死! 阿鼻叫喚の地獄は間違いなしですよ……!」
「…………」
「これを2つも食べればほとんどの人間は大人しくなりますっ! 5つも食べきれた人などいやしませんっ……!」
テンションの高いカルヴァロッサ様を尻目に、私とアイナ様はぽかんとしていた。
カルヴァロッサ様がシュークリームを片手にじりじりとにじり寄ってくる。私は思わず後退る。
「さぁさぁ、アイナ様に逆らう愚かなリーズリンデ! 激辛シュークリームという痛い目を咥えて頂きましょうか……!?」
「ちょ、ちょっと、こっち来ないで下さい……」
「や、止めなさい! あんた達っ……!」
「それとも熱々のおでんを無理矢理口にねじ込まれる方が良いでしょうか……!?」
にやにやと笑いながら私を囲う男子達が距離を詰めてくる。
私は音楽室の隅に追い詰められた。
男子が私を囲う。逃げ場はない。
「さぁっ……! 激辛シュークリームの刑でございますっ……! ふふふふふっ!」
「いやーーーっ……!」
私の叫び声は音楽室の吸音設備に阻まれて、外の校庭には届かなかった。
* * * * *
学院の廊下をとある男女が並んで歩いていた。
「全く、教師の手伝いなんてだりぃ事しちまった」
「ふふふ、それでも何だかんだ断れないところがカイン殿らしいぞ?」
廊下を歩いているのは勇者カインと姫騎士シルファであった。
時刻は夕方。彼らは教師の仕事の手伝いをして、この時間まで学院に残っているのだった。
「うるせぇ、シルファ。俺は外では猫被ってなきゃいけねぇからめんど臭ぇんだよ」
「まるで今のリズの姿のようだな」
「……まぁあいつの今は今で、面白れぇっちゃ面白れぇな」
カインの言葉にシルファがくすくすと笑う。リズの本来の姿を知る者としては、今の彼女の姿はとてもちぐはぐで、ある意味愉快であった。
「まぁ、でも早く力を取り戻して元気になって欲しいものだな」
「……まぁな」
「カイン殿はリズとエッチな事出来なくて、さぞ生殺しであろう?」
「うるせぇ、バカ」
「いひゃいいひゃい……」
カインはシルファの頬を引っ張った。
「……おっと、カイン殿。廊下で葉巻は駄目だぞ?」
「……ちっ」
彼は無意識の内にポケットから葉巻を取り出して、それを口に咥えようとしていた。シルファに咎められてはっと気付き、それをまたポケットにしまった。
「あーあ……、模範的な生徒っていうのは、マジでめんどくせぇぜ」
「一度学園内で暴れてみればどうだ? カイン殿? 今までの評価が吹っ飛ぶぞ?」
「……魅力的な誘惑、やめろ」
「あはは」
そんな会話をしながら、彼らは音楽室の前を通り過ぎようとした。
「……ん?」
「なんだ、この音……?」
その音楽室の中から奇妙な音が聞こえてきたのだ。
「……鞭の鳴る音……か?」
それはぴしゃりと、破裂音の様な鞭の音であった。
音楽室の吸音設備のせいか、すぐ傍にいるというのにその音は消えかかる様に霞んで聞こえてくる。音楽室には似つかわしくない鞭の音。その中には人の悲鳴も混ざっているように感じる。
「おいっ! 中で何をしてやがるっ……!」
カインは一も二も無く音楽室の中に飛び込んだ。
音楽室の扉が雷のような音を立てて乱暴に開かれ、中にいた人物が全員びくっと体を震わせた。
「あ……、カ、カイン様……」
中にいたのはリズだった。眉は垂れ、目は涙目になっている。
カインは目を見開いた。そこには異様な光景が広がっていた。
「ち、違うんです……、カイン様……。これは、何かの間違いなんです……」
リズの手には鞭が握られていた。元気に仁王立ちをしている。
アイナは部屋の端で、恐怖に震えている。
カインの後に入ってきたシルファも目を丸くする。音楽室の中は異様な光景が広がっていた。
「はぁ、はぁ……! じょ、女王様っ……! ぼ、僕に鞭を下さいっ……!」
「お、俺にも……! 俺にもお仕置きを下さいっ……!」
「女王様っ……!」
「女王様っ……!」
そして、8名の男子生徒たちが四つん這いになって鼻息を荒くしていた。何故か着ているものはパンツ一丁である。
音楽室の中は異様な光景が広がっていた。
「…………」
「…………」
カインとシルファは言葉を失っていた。
「ち、ちち、違うんですっ……! カイン様! シルファ様! これは何かの間違いなんですっ!」
「じょ、女王様……! は、早く私に、貴女の鞭を……!」
「う、うるさいですよっ……! この豚……!」
バシンっ!
リズが鞭を振るう。
「お゛ぅっ……! あ、ありがとうございますっ……!」
「あぁっ……! 口と手が勝手に……! ち、違うんですっ。こんなの私知らないんですっ……!」
リズは音楽室の女王として君臨し、涙目になって首をふるふると振るっていた。
シュークリームと熱々のおでんを手に男子生徒に迫られ時の事だった。リズは決死の覚悟で反撃に出た。
不意を討って前に出て、リズは鞭を持つ男子生徒に襲い掛かった。彼女は何とか武器を奪取することに成功したのだ。
とは言え状況は絶望的な事には違いが無かった。
相手は男子8人。いくら鞭があっても取り囲まれて、為す術も無い筈だった。
しかし、どういう訳だろう。
リズが鞭を振るうと、それを受けた男子はビクンと大きく身震いをして、そして1撃でがくりと膝をついた。ダメージが大き過ぎた訳でもなく、体力が尽きた訳でもない。
ただ、その男子はリズに襲い掛かる事はもう一切無くなり、顔を赤くして熱い吐息を漏らす様になった。
そして言うのだ。
もう一回お願いします、と……。
それからはリズが天下無双であった。
リズがばしんと鞭を振るう。男子から嬌声が漏れる。彼らは勝手に四つん這いになる。鞭をもっとねだられる。リズは女王様と呼ばれるようになる。
リズの振るう鞭は気持ち良過ぎたのだ。
彼女自身覚えていないだろうけど、リズは鞭の扱いがとても得意だった。
「女王様っ! 女王様っ……! もっと! もっと鞭を下さいっ……!」
「私に……! 鞭を……! 私をもっと痛めつけて下さいっ……!」
「…………」
「…………」
「ち、違うんですっ! カイン様シルファ様っ……! こんなのっ……! こんなの私知らないんですっ……!」
「じょ、女王様っ……! 鞭をっ、鞭を下さいっ……!」
「だ、黙りなさいっ……! お仕置きだよっ……!」
バシンっ!
「ありがとうございますっ……!」
「あぁっ……! ち、違うんですっ! 違うんですっ……!」
ここは地獄絵図だった。
「リズ……」
「カ、カイン様……」
カインは言葉を発した。
「……あんまり堅気の人に迷惑かけるなよ?」
「違うんですーっ! 迷惑かけられていたのは私の方だったんですー!」
涙目になりながらリズは訴えかける。でもその訴えはカイン達には届かなかった。
「おう、あんたは……アイナだったか……?」
「え……?」
カインに声を掛けられて、音楽室の隅で小さくなって震えていたアイナは顔を上げる。
彼女は鞭で叩かれず、正気を保ったままだった。しかしそれ故か、どんどん豚になっていく男子生徒たちを見て、この地獄絵図に恐怖して身を震わすしかなかった。
「今日はもう帰れ。この光景は……まぁ、忘れた方が幸せだな……」
「で、でも……」
「いいから帰れ。お前にリズをどうこうするとか、無理だから。ここにいても百害あって一利ねぇ」
カインは呆れたように声を発し、アイナは戸惑った。
バシンっ!
一方でリズは鞭を振るっていた。
「お゛うっ!」
「ありがとうございますっ! 女王様……!」
「うるさい、うるさいぃっ……! 貴方達が勝手に豚になるのがいけないんですぅ……!」
バシンっ! バシンっ……!
「お゛うっ! おお゛うっ……!」
「ありがとうございます! 女王様……ありがとうございますっ……!」
「もっとぶって下さいっ、女王様! もっとぶって下さいっ……!」
「くっそーーー……!」
バシンっ! バシンっ!
リズはやぶれかぶれになっていた。
アイナはただただ戦慄し、身をすくませることしか出来なかった。
「なぁ、リズ……」
「シ、シルファ様……! ち、違うんですっ! これは何かの間違いなんです……! わ、私に幻滅しないでくださいっ……!」
リズの必死な懇願に、シルファは恥ずかしそうに頬をぽりぽりと掻いた。
「その……なんだ、折角だし……久しぶりに私も鞭で叩いてくれないか……?」
「何言ってるんですかっ……!?」
リズは驚き大きな声を出す。シルファの頬は紅潮していた。
「やですっ! 嫌ですよっ! っていうか、久しぶりっていうか、私は鞭なんて振ったこと今まで一度だってないですよ……!」
「そ、そんな……」
拒否されて、シルファは膝を付き項垂れた。
「本当に久しぶりなのに……」
「リズの鞭は上手過ぎて、マゾじゃない奴もマゾにしちまう劇薬だからな」
「何言ってるんですかっ!? 訳分かんないですっ……!」
リズの鞭は既にシルファを陥落させていた。でも当の本人のリズはそんな事知る由も無かった。
「女王様ーっ! もっと鞭をっ! 鞭を下さい……!」
「女王様ーっ! もっと私達を虐げて下さいぃぃぃっ……!」
「あ゛ーーー! もうっ! くそーーーっ……! ちょっと楽しいって感じちゃうのが、更にムカつくーーーっ! お仕置きだよっ! この豚どもっ……!」
バシンっ! バシンっ!
「あ゛うっ……! ありがとうございますっ……!」
「ぶひぃっ! ぶひぃっ……!」
「いいなぁ……。羨ましいなぁ……」
阿鼻叫喚の悲鳴が音楽室の中で音楽を奏でていた。
「ちくしょお゛お゛お゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛っ……!」
豚たちの宴は留まる事を知らなかったのだった。
『でも片や世界を守る為に戦う最強の勇者、片やただの普通の女学生。』
……普通? 普通って、なんだ……?
ちなみに、「リズの鞭は上手過ぎて、マゾじゃない奴もマゾにしちまう劇薬だからな」というカインの証言だが、シルファはそうじゃなくてもマゾ。
次話『24話 【過去】 Sとは慈愛と見つけたり』は1時間後に投稿予定です。