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マヨラー、異世界にて死す  作者: 信濃の梅
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04

訓練場で聖剣と戯れることしばし。性能は大体把握できたと思う。


 まずは身体強化。

 聖剣を手にして走ればおおよそ百メートルの距離を三秒で走ることができ、その速さのまま数分間走り続けても体力に余裕があった。

 魔法でスカラジャほどの大きさの石の塊を作ってもらい、それを持ち上げることもできた。


 次に視力の強化。

 動体視力が強化されているようで、数人がかりで大量の小石を投げられても、全て避けることができた。

 素の視力は別段変わっているようではなく、おそらく元の二.〇のままだろう。


 最後に天を駆けるとかいうファンタジー要素。

 できました。空中を走れました。

 最初は怖くて二段ジャンプ程度しかできなかったが、何度か繰り返すうちに二メートルほどの高さまでなら走れるようになった。

 空中に立った状態で居ることは一秒が限界なので、必然的に走ることになる。慣れればちょっと楽しいんだけどね。


 残念ながら斬撃を飛ばす事は出来なかったが、魔法は練習すれば使えるかもしれないと言われた。

 俺自身は魔力を持っていないが、聖剣が魔力を蓄える性質を持っているらしく、使うとしたら聖剣経由での魔法になるとのこと。

 なんにせよ遠距離攻撃の手段があることは心強い。まだ使えないけど。


 聖剣の訓練を終え、ここでようやく俺はこの世界に来て初めてマヨネーズを摂取した。

 石の部屋を出た時には日がすでにてっぺんから傾き始めていたので、日が沈み始めた今まではおよそ五時間ほどだろうか。

 このくらいが限界だと思う。だが、このまま同じペースで摂取を続けるとすぐになくなってしまうため、少しずつでも限界を伸ばしていかなければなるまい。


 防壁内に水源はちゃんとあるらしく、訓練場の近くにはシャワールームのような場所が用意されていた。シャワーはなかったけれども。

 聞いた話では、魔法で上の貯水槽に水を貯め、所定の位置でボタンを押すと一回分の水が落ちてくるのだという。流れてくるのではなく、まさに水の塊が落ちてくる感じで、割と強めの衝撃に襲われた。

 服のまま浴びてくださいと言われたときは驚いたが、水が地面から排水された後に温風が吹き、一瞬で全身服ごと乾いた。魔法ってすごい。


 魔法を使う練習は明日にすることになり、晩ご飯を食べた後に色々とお話を聞かせてくれるらしい。

 主に壁の外の生物に関することだ。あくまでわかっている範囲だけの話らしいが。


「ハジメ様をもてなすには相応しくないかもしれませんが、出来うる限りの食事を用意いたしました」


 そういって運ばれ来た料理は、マヨネーズがかかっていないことを除けば、とても美味しそうに見える。量も十分にあり、自分のために蓄えていた食料を使わせてしまったのなら申し訳なくなってしまう。

 そんな気持ちが顔に出てしまったのか、量が多いのはさっきのスガラジャの肉を使っているからだという。スガラジャが定期的にやってくるなら、食料問題はそこまで深刻ではなさそうだ。


 マヨネーズがかかっていなかったので美味しいかどうかの判断はうまくできなかったが、まずくはないと思う。


 食事中に聞いた話では、壁の外にいる生物は確認できる範囲では三種いるそうだ。

 まずはスガラジャ。でかいだけの雑魚らしい。

 次にギリウドム。大人三人分くらいの狼のような奴。五人がかりでようやく一匹倒せるくらいの強さらしい。

 最後にニハディハス。スガラジャの半分ほどの大きさで、腕が異様に大きい猿っぽい奴。ギリウドムを数匹まとめて叩き潰せるくらいの強さらしい。

 これはあくまで壁から見える範囲限定の話。もっと先へ行けば、どの程度の強さなのかもわからない生物がうようよいるそうだ。


 そして食事が終わってから、すこし雰囲気を変えて王様が話を切り出した。


「今話した奴らは、私たちだけでもどうにか対処できる生物です。ですので、見かけても倒していただかなくても結構です」


 聞いた感じニハディハスは一匹倒すのにかなりの犠牲が出そうだけど、本当に倒さなくていいのか。いや、俺なら余裕で倒せるとかいうわけでもないんだけど。


「ハジメ様に倒していただきたいのは魔法の効かぬ生物、ヴァラドガムスです」


 ここからまた長い話が始まった。胃の中の物の消化の進み具合から、大体三十分ほどだろうか。

 出会い頭の姫様といい食後の王様といい、嫌な所で血のつながりを感じる。

 王様による情感たっぷりの戦闘シーンなんかは右から左に聞き流しながら、頭の中で話をまとめていく。


 重要そうな部分だけ抜きだすなら、


・毛むくじゃらの饅頭のような生物らしい。大きさはスガラジャの三分の二ほど。


・魔法、もとい魔力で構成されたものは毛皮で弾かれるし、その生物の食料にもなるという。


・魔力を伴わない攻撃も試してみたが、魔法を使い防御結界を張られて通じなかったらしい。


 このくらいだろうか。


 防御結界とやらを聖剣で斬ることができるかが問題なので、明日姫様の防御結界を斬らせてもらおう。スガラジャのときに使ってたみたいだから、おそらく得意なのだろう。

 あとは数がどの程度いるかが問題か。百匹に囲まれたら流石に一人ではどうしようもあるまい。いや、空を走って逃げればいいのか。


 とにかく、ヴァラドガムスさえいなければ防壁で守りきれるらしいから、そいつらを全滅させて卵探しの旅に出るとしようじゃないか。


 外はすっかり暗くなってしまっているが、部屋の中は魔法の光で十分に明るい。この世界の魔法は発達しすぎているようにも思える。

 ヴァラドガムスは魔法に頼り切った人類に与えられた試練なのでは、と思えるくらい魔法が便利すぎる。料理はどうやって作ったのか聞いたら、「調理魔法で作りました」とか言われるし。


 前の世界での生活水準とあまり変わらないような状況で、時計がない事が非常に気になった。聞いてみれば時間の単位が存在していないっぽかったので、それ以上追及するのはやめた。


 王様が目頭を押さえて口をつぐんでうつむいたので、ようやく話が終わったのかと姫様の方を見る。とてもいい笑顔を返されたので、下手くそな愛想笑いを返しておいた。

 俺の愛想笑いをスルーして姫様は優雅に立ち上がり、俺を寝室に案内してくれると言った。

 食べてすぐ寝るのは体に良くないが、別にすぐに寝ろという意味ではないだろう。うつむいたままの王様を放置して、姫様の後について部屋を出ていった。


「申し訳ありません。父の話が長くなってしまい……」


 いや、それを謝るなら他にも謝るべきことがあるでしょうよ。

 とは思ったものの口には出さず、気にしていないと伝えておく。事実、聞き流していたのでそこまで気にしていない。


「この部屋でお休みくださいませ。それと、用意できるかどうかはわかりませんが、必要なものがあればおっしゃってください。私も、どのような事でもいたしますので」


 そうだ、王様のせいで話ができなくなってしまい頼むのを忘れていた。


「では、一ついいですか」

「はい。なんなりと」


 何故か覚悟を決めたような目で見られたが、マヨネーズが足りていないのでそのつもりはない。


「明日も聖剣の訓練に付き合ってください。それでは、おやすみなさい」

「えっ、あっ、はい。おやすみなさいませ」


 無駄な装飾の一切ない扉を閉めると、部屋の中は真っ暗だった。俺魔法使えないからね。

 おやすみなさいと言った手前、部屋を明るくしてくれとは頼みづらい。

 仕方ないので手探りでベッドを探し、横になった。


 朝になって部屋の中に照明具があったら悲しいな、等と思っているうちに眠りに落ちた。

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