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35歳の憂鬱。  作者: 武 画美
本編。
3/21

体調不良。

足が痛い。電車でオヤジに、足を踏まれた。

あのオヤジ、謝りもしないで、知らんぷり。いい年して、謝ることも知らないなんて、恥ずかしい人だ。


生理前の私は、ちょっとしたことでも、イラついている。

しかし、経理の明子さんみたいに、ヒステリック全開になりたくないので、会社では、イラつきを押さえなくては、いけない。



仕事の合間にトイレ行くと、トイレで、新人の南美が泣いていた。

「どうしたの?」

一応、聞いてやった。

「経理の明子さんに、怒られたんです」

「どうして?」

「休憩時間終わっても、営業の加藤さんと話をしてたら、怒られたんです」

そりゃ、怒られて、当然だ。さすが明子さん。


「泣いてないで、早く席戻ったほうがいいよ。また怒られるよ」


新人の南美は、泣く暇があって、羨ましい。

私は、やっとトイレに、これた状態だというのに。

今日は、生理前で体調悪いから、仕事早く片付けて、定時で帰りたい。


「笹原、明日の会議で使うマニュアル作ってるか」

「はい。あと少しで、終わりそうです」


「悪いんだけど、大幅に、変更あるから、修正して、差し替えてくれ」

早く言えよ。もう終わりそうなのに、今更変更なんて、嫌がらせにしか思えない。イラつく。くそ課長。



また残業だ。体調悪くて、ぐったり。



明日出勤すれば休みだ。頑張ろ。



昨日の残業のせいか、今日は、更に体調が悪い。しかし、今日は会議の準備しなくちゃいけないので、休めない。

青ざめて、急騰室で、会議のコーヒーの準備してると、経理の明子さんが来た。

「笹原さん、顔色悪いわよ。大丈夫?」

「ちょっと生理前で体調悪いだけなので、大丈夫です」

「少し休んだら?」

経理の明子さんは、いつもはヒステリックだが、優しいところもある。男性社員など、私の顔色など、気づかないが、同じ女性である明子さんは、気づいてくれた。

「会議の準備あるので、大丈夫です」

「そう?無理しないようにね」

生理前は、徐著不安定なので、優しさが身に染みる。


無事に今週も休まずに出勤した。

どっと疲れがでて、着替えないで、ソファで、寝てしまった。

化粧も落としてない。肌もボロボロだ。

明日の休みは、一日寝てよう。



昼に起きると、ふらふらした。でも、具合は、悪いが腹は減る。

買い物してないから、冷蔵庫に何もないはずだ。

買い物に、出掛ける気力もない。


携帯が、なった。

また、元カレのリョウタだった。

「あのさ」

「どうしたの?」

私は、喋るのも、やっとだった。

「京子、声がへん。寝起き?」

「うん。具合悪くて寝てた」


「大丈夫?」

リョウタが、大丈夫という言葉を知っていたなんて、驚きだ。

「ごめんね。今日は具合悪いから、治ったら聞くね」

リョウタには、悪かったが、そう言って電話を切った。


お腹はすいたが、今日は寝てよう。



二時間くらい寝たみたいで、もう3時だ。

貴重な休みが、寝て終わりそうだ。


ピンポーン



誰だろ?勧誘か?

インターホン出ると

「オレ」

オレオレ詐欺?今のオレオレ詐欺って訪問するんだ?

「リョウタだよ」

うわーリョウタか。


「どうしたの?」

「京子、具合悪くて、飯食べてないと思ったから、買ってきた」

どうしたんだろ。何か頼みごと、あるんだろうか。なんか怖い。


「家よく覚えてたね」

「覚えてるよ。付き合ってた頃、何回も来たから」


「コンビニから、おにぎりとサラダ買ってきた。あと熱あると思ってアイス買ってきた」

無邪気な顔で、リョウタは袋からアイスを出した。

「熱ないよ。お金ないんだから、何も買ってこなくても、よかったのに。でも、ありがとう」


「京子に、彼女のことで、迷惑かけたりしたから」


この間のリョウタの今の彼女が、私に電話してきたこと気にしてたんだ。

「じゃあ。オレ帰るわ」

でも、リョウタは、何か話がありそうだった。

「なんか話あったんじゃないの?」


「今日は、いいよ。京子、具合悪そうだし」

「気になるから、言って」


リョウタは、ソファに座った。

「オレ。東京に行こうと思ってる」

「もしかして、バンドで?」


「うん。バンドで。東京で、活動しようと思ってる」


いやいやいや、あのヘタクソなバンドでは、無理でしょー。

こういうのを無謀と言う。

無理無理無理、ボーカルは、歌うまくないし。ボーカルのルックスもイマイチだし。リョウタのギターは、うまいほうだけど、それでも東京で、活動なんて、無理。


「だって、ベース脱退したばっかりでしょう」

「この間サポートしてくれたカンちゃん、オレらのバンドに入ってくれることになったんだ」


それにしたって、東京は無理でしょ。

「今は、地元で、活動して、人気あるバンドいるよ。なにも東京行かなくても、ツアーできるよ」

「そうだけど。東京で、ライブやりたいし」

「生活どうすんの?」

「ホストやろうと思って。金いいし」

でたよ。ホストで、稼げると思ってるところが甘い。


「ホストやって、そこで、金持ちの女みつけようと思って」


また始まった。貢いでもらうしか、考えられないのかね。

「なんで、そういう発想しか出来ないの。ホストだって、若いほうがいんだから、今25歳だったって、年とるんだよ。30歳になってもホストやるの?」

私はリョウタの甘い考えに、イラついた。

「誰だって、楽して、お金稼ぎたいよ。でも、楽な仕事なんかないから、我慢して働いてるんだよ。そういう人が働いたお金で、貢いでもらおうなんて、リョウタは、甘いよ」

もう私はイライラが、止まらなかった。


「京子は、わかってくれると思ったのに」

リョウタは、哀しそうな顔をした。


いくらイラついてるとはいえ言い過ぎた。

「ごめん。体調悪いから上手く言えない」


「オレ。帰るよ」


そういって、リョウタは帰って行った。



私は最低だ。いくら生理前で、イラついたとはいえ、リョウタが挑戦しようとしてることを否定するなんて、最低だ。


私も、20代の頃、やろうとしてることを、親や友だちに、否定されて、悔しかったはずなのに、なんで、リョウタに、あんなこと言ったんだろ。

私が言われて嫌なことを、私も人に言っていた。

そんな年のとり方、嫌だったのに。


私はリョウタの親でも、家族でもない。ただの他人だ。

それを説教ぽっいこと言って、やめさせようとして、私は何様なんだろう。


生理前で、イラついて、リョウタに当たるなんて、情けない。

自己嫌悪で、いっぱいだった。



テーブルのアイスが、溶けていた。



結局。土日は、寝て終わった。

月曜日は、朝の満員電車が、辛かった。

私は、まだ自己嫌悪をひきづっていた。



生理が終わったら、リョウタに、謝ろう。





貸しスタジオで、

「リョウタ、あのさ。上京すること親に反対されてさ。もうちと、待てないかな」

ボーカルの裕太が言った。

「他のメンバーも、反対されたらしいし」


「うん。いいよ。やっぱ、まだ早いかもな」

「なんだー。リョウタ東京行く気満々だから、受け入れないと、思った」


「なんか、オレの一番の理解者だと思ってた人に反対されて、ちょっとショックだったから」


「女?その人、リョウタに東京に行かれたら、寂しかったんじゃないかな」


「それはないよ。オレいなくても、やっていける人だから」


「そうかな?」


「裕太、なんか良いバイトない?」

「オレの働いてる居酒屋来る?今、人足りないんだ。時給もいいし、髪の色も自由だし、休みも融通きくよ」


「じゃあ、頼むよ」



リョウタから、着信が何回かあった。

でも、私は、でなかった。生理中で、またイラついて、上手いこと言える自信がなかった。



「笹原、南美ちゃん今日、風邪で、休むそうだから、南美ちゃんやってた仕事頼むよ」

どーせ、街コンで、疲れて起きれなかったんだろーが。

また残業か。疲れるな。何もかも嫌になった。


5時すぎて、新人の南美の分の仕事を終えて、トイレに行こうと立とうしたら、目の前がグラグラして、回った。


気づいたら、私は医務室にいた。


「目覚めた?仕事中に倒れたのよ」

経理の明子さんが、いた。

「具合悪いのに、新人の女の子の分の仕事まで、したんだってね。具合悪いときは、はっきり断らなきゃダメよ。小林課長は、なんでもやらせるんだからね。融通の効かない男ね。部下の体調もみなくちゃ。」

「仕事、私の分の仕事残ってて、やらないと」


「大丈夫よ。さすがに小林課長も気にして、自分で、やったみたいよ」


あの課長が、自分で、資料作りするなんて、信じられない。

「私、頭きて、小林課長に言ったわ。早く出勤させて、新人に仕事覚えさせろって。若いんだから、体力ありあまってるんだから、働いてもらわないとね」


明子さんは、笑って、そう言った。


一人で、やれると、思っても、人に頼らなくちゃいけない時があるんだね。


「もう、8時だし、私、車できたから、家まで送っていくわ」

こんな時間まで、帰らないで、明子さんは、付いててくれたんだ。

家庭があるのに、申し訳なかった。


マンションに、ついて、部屋まで、明子さんに、付き添ってもらうと

「あれ?弟さん?」

部屋の前に、リョウタが立っていた。

「弟さん、お姉さんが心配で来たのかな。じゃあ、あとは、弟さんに、任せて、私は帰るわね」


「色々と、ありがとうございました。」

私は、明子さんに頭を下げた。


「どうしたんだよ。あの人、会社の人?」

リョウタは、ずっと待ってたのだろうか。

「会社で、倒れたから、送ってもらったの」


「ごめん。オレのせい?あん時、京子、体調悪いのに、オレが無理な話したから」


「違うよ。私が体調管理出来ないから悪いんだよ」


リョウタをみると、顔が腫れていた。

「顔どうしたの?」


「彼女と、別れた。そうしたら、彼女にボコボコされて。金も返せーって言われて、彼女に買ってもらったのも、全部売って、有り金はたいて、バイト代を前借りして、全部返した。」



「その顔じゃ、イケメン台無しだね」



「バイトだけど、真面目に働いて、まだ、ここで、バンドやってみるよ」



リョウタが、少し大人になったように、見えた。


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