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35歳の憂鬱。  作者: 武 画美
番外編。
21/21

ハタチのとき。(後編)


京子は、今日は、残業だった。週末ということも、忙しく、それに、調理場のスタッフが二人も休んだのである。洗い物もたまっており、京子は、一時間残ってほしいと言われた。


「リョウタくん、待ってたの?」

京子が残業をおえて、従業員出入口から、出てきた。

「残業っていったから、待ってなくても、良かったのに」

「京子と帰りたかったから」

先にバイトが終わったオレは、京子か出てくるのを外で、ずっと待っていた。

「寒かったでしょう。こんなに冷たくなって」

京子は、オレにマフラーをかけてくれた。

「今日も京子んちに、泊まる」


オレは、週の半分以上は、京子のマンションに泊まっていた。

「来週からテスト始まる」

「じゃあ、バイト休むの?」

学生のアルバイトは、テスト前とテスト期間に、アルバイトを休む人が多い。しかし、オレは、京子に会いたいので、休まないことにした。


「リョウタ、テスト前だけど、合コンあるんだけど、来いよ。今度は、服飾専門学校のめちゃ可愛い子ばっかりだぞ」

クラスメイトの翼が言った。

「行かない。オレ、バイトだから」

「テストだからとか言って休めよ。まじで、可愛い子ばかりだって。行くしかないよ」

「いい。バイト行く」

「なんだよ。最近付き合い悪いな。彼女できたのか」

「ああ」

「もしかして、バイト先の年上?」

「ああ」

「かなり、まじ?リョウタが合コン行かないなんて。」


オレは、やばいくらい京子のことばかり考えていた。ほんとは、学校なんて休んで、京子と居たかった。

でも、京子は、昼は就活したり、資格の勉強をしたりしてた。いつも京子は、「学校は行きなよ。ちゃんと卒業しなきゃ」と、言っていた。


男子更衣室。

「京子さんを映画に誘ったら、資格の勉強あるからと、断られたよ。京子さん、なかなかガード固くてさ」

フリーターの武川さんが、他のスタッフと話をしてた。

「彼氏いるんじゃないですかね」

「前、いないって言ってたよ。就活してるから、彼氏どころじゃないって」

武川さんも、相手にされてないのに、しつこく京子を誘わないでほしい。武川さんなんか興味ないから、断ってるのに、気づかないなんて、バカじゃねーの。

「あー。1回でいいから、京子さんと、やりてー。年上だし、やらしてくんねーかな」

武川さんは、本音を漏らした。

「なんだ?リョウタくん怖い顔して」

武川さんは、オレを年下だと思って、上から目線で、笑っていた。

「京子は、オレと付き合ってるんだから、誘わないでください。迷惑です」

オレは、頭にきて、京子と付き合ってることを言ってしまった。

「オマエ、バカじゃないの?京子さんが、オマエみたいなガキを本気な訳ねーだろ。若い子も、たまには、いいかなーって、軽い気持ちで、遊ばれてんだよ」

そういって、武川さんは、大笑いした。

「オマエ、京子さんに、まじになってんの?かわいそー。これだから、ガキは、ダメなんだよ。大人の付き合いを知らないから」

「ガキでも、オレは、京子を知ってますから。武川さんこそ、京子に相手にされてないのに見苦しいですよ」

「なんだとっ」

「オッサンが、人の女に、ちょっかいだすなよ」

「生意気なガキがっ」

武川さんは、オレに殴りかかってきた。オレもムキになり、殴り返した。

他のスタッフが、止めに入ったが、オレと武川さんは、譲らなかった。



「リョウタ、遅かったね。」

外で、京子が待っていた。

「顔どうしたの?口から血がでてる」

そういって、京子は、ハンカチで、オレの口をふいた。

「何かあったの?」

「なんでもない」

京子は、心配そうだったが、オレは、武川さんとケンカしたことは、言わなかった。

「京子、一緒に他のバイト探そうよ」

武川さんと、一緒に働きたくないし、京子を武川さんが狙ってるかと思うと、京子にも、今のアルバイトを辞めて欲しかった。

「えー。正社員の仕事みつかるうちは、今のバイトでいいよ。正社員の仕事が見つかったら、どーせ辞めるんだし」

オレだけ辞めたんじゃ、京子と武川さんが一緒に働いてると思うと、気になって、何も手につかなくなる。


アルバイトが休みの日に、アパートで、テスト勉強してると、京子が来た。

「お腹すいてるだろうと思って、お弁当作ってきた」

「うん。腹へってた」

京子が作った弁当には、オレの好きなものばかりが、入っていた。

「京子、泊まっていけよ」

「ううん。帰る。勉強の邪魔になるから」

「邪魔になんねーよ」

今のオレに京子が邪魔になるなんてことはない。一緒にいたいし、一緒に寝たい。

ずっと京子といたいから、オレも就活しようと思った。オレも卒業したら、正社員で、働いて、京子と一緒に社会人なろうかと考えていた。


バンドは、趣味で、やればいいだろう。



女子更衣室。

「えー。京子さん、今月でバイト辞めちゃうんですか」

「うん。この間、受けた会社に正社員で、採用決まったから」

京子は、商社の面接に受かった。前の会社よりは、規模が小さい中小企業の会社だが、30歳では高望みをしてられないと言って、その会社に行くことに決めたらしい。

「京子さん辞めると、寂しくなる。リョウタくんもバイト辞めるって言うじゃないかな」

「リョウタは、どうだろうね」



京子が、正社員に決まった会社で働き出すと、一緒のバイトの時より、会えなくなった。

平日は、入ったばかりでも、残業があるみたいだった。土日も、疲れてるからと、あまり会ってくれなくなった。


アルバイトが休みの日に、オレは、京子のマンションの前で京子の帰りを待っていた。何時間待っても、京子は帰って来なかった。メールをすると、会社の飲み会で遅くなるから、帰っていいと返信が来た。



正社員の京子と、学生のオレ。だんだん、生活がズレて来ていた。


男子更衣室。

「リョウタくん、京子さんと会ってるの?」

武川さんが、イヤミぽっく聞いてきた。

「会ってますよ」

オレは、強がって、嘘をついた。

「京子さんはOLでしょう。会社に安定したサラリーマンの男が沢山いるわけだし、大人の男に目移りしちゃうよな。リョウタくんじゃ、学生だし、おごってくれないしね。京子さん色っぽいし、オッサンに誘われてるかもよ」

「うっせーなっ」

オレは、ロッカーをいきなり閉めて、帰った。



京子にメールしても、返信は、遅かったり、こなかったりした。

京子が休みの土曜日は、会いたい。とメールしたら、今度の土曜日は、休日出勤だからと、返信がきた。


ほんとに、仕事なんだろうか。土曜日に、オレは、京子に会いたくて、アルバイトを休んで、京子の会社の近くで待っていた。

二時間くらい待ってると、京子は、オフィスビルから、出てきた。

でも、一人じゃなかった。同じ会社の人なのかスーツを着た30代の男と一緒に出てきた。


一緒に、歩きながら、京子は、その男性と笑いながら話をしていて、楽しそうだった。


あんな男と一緒に帰る暇あるんだったら、オレにメール出来るはずだ。あんな男と、一緒に帰るんだったら、オレに電話出来るはずだ。


なんで、オレに会えないんだよ。




次の日の日曜日。

午前中の10時頃、オレのアパートに誰かが来た。

「誰?」

ドアを開けると、京子だった。

「まだ寝てた?今日、休みだから、リョウタ、ろくなもの食べてないと思って、お弁当作ってきた」

オレは、バツが悪かった。

「リョウタくん、だあれ?」

オレの後ろに、昨夜、持ち帰りした下着姿の冴子が来て言った。

「リョウタ・・」

京子は、哀しそうな顔をした。

「これ、リョウタの好きな唐揚げも入ってるから・・。じゃあ、サヨナラ」

そういって、京子は、オレに弁当を渡して、帰って行った。


「誰?リョウタくんのお姉さん?」

気にしない冴子に、イラついた。

「うっせーなっ、早く帰れよっ。ブスがっ」

「なによっ。失礼ね。ブサイクがっ」

持ち帰りした冴子は、帰っていった。



京子に、言い訳を並べて、メールした。オレは、京子と別れたい訳じゃなかった。ただ、京子に構ってもらえなくて、ヤケになっただけだ。


「いいよ。人の気持ちは、冷めたって、仕方ないよ。リョウタが好きな子と、付き合えばいいよ。今まで、付き合ってくれて、ありがとう」


京子から、そう返信がきた。




やっぱり、オレは、ガキだ。

こうしたら、大切なもの失うとか、予測ができなかった。

なんで、オレは、待てなかったんだろう。

あんな訳のわからない持ち帰りした女を抱いたって、満たされることはないって、分かってたはずなのに。



温かい大切なものが、オレから、冷たくなって消えていった。




それから、オレは、レストランのアルバイトを辞めた。

就活もやめた。

仕事も決めずに、専門学校を卒業した。




オレは、どの道を歩けばいんだろう。







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