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35歳の憂鬱。  作者: 武 画美
本編。
19/21

結末。


「一週間も休みまして、申し訳ございませんでした。」

私は、出勤して、課長に、これまで休んだことを詫びた。

「体調悪いときは、無理しないで、言ってくれ。なんだかんだ言っても体が一番だからな」

普段の課長らしくない言葉を頂いた。本音は、どうかは知らないが。

「笹原、もう大丈夫なのか?無理するなよ。でも、笹原いなくて、大変だったよ」

営業のエースの板谷が声をかけてくれた。


「京子さーん。大丈夫なんですか。京子さんいなくて、オレ寂しかったです」

新人の田中くんが、来た。


どうやら、南美は、私が流産したことは、みんなに言ってないようだった。南美には、悪いことをした。病院まで、付き添ってもらったり、リョウタに連絡してくれたり。


「南美さん、色々ありがとう」

「京子さん、まだ無理しないで下さいね。言ってくれれば、私やりますから」

南美から、私がやりますから。と言う言葉を初めて聞いた。若いからと、南美をいい加減と決めつけてたけど、いざというときは、頼りになるのかもしれない。



「京子、おかえり」

リョウタは、今日はバイトが休みだった。

「夕飯、作った。美味くないかもしれないけど」

野菜ミックスを炒めただけの野菜炒めだった。でも、今日から出勤した私に、気を使ったのだろう。

「美味しい」

リョウタが作った野菜炒めは、見た目は悪かったが、美味しかった。

「今日はバンドの練習は?」

「休んだ」

私のために、休んだのかも知れない。

「片付けオレが、やるよ。京子、久しぶりに仕事して疲れたろうから、くつろいでていいよ」

「ありがとう」


キッチンで、片付けをしてたリョウタを見て、申し訳ない気持ちで、いっぱいだった。

リョウタに優しくされればされるほど、私は、リョウタを縛ってるのだろうかと思ってくる。


私は、リョウタと、このまま一緒にいて、いいのだろうか。



京子が、流産を気にして、オレと別れを考えてる気がした。

オレは、どうすればいんだろう。京子に何をしてあげられるのだろう。



あれから二週間がたった。

最近、リョウタは、ひどく疲れてるようだった。

土日の昼も、何処かに出掛けてる。

「京子、バイト終わるのを待ってなくていいから、寝てていいよ」

居酒屋のバイトから帰ってきて、私にそう言って寝てしまった。

食欲も、あまりないみたいだった。痩せたようにみえる。

いったい、何をしてるのだろう。私は、リョウタの体が心配だった。



「裕太くん」

リョウタのいない土曜日に、一人で買い物していると裕太くんと会った。

「裕太くん。教えて。居酒屋のバイトそんなに忙しいの?リョウタ毎日疲れてるみたいで。」

裕太くんは、気まずそうだった。

「リョウタに、京子さんが心配するから、言うなっていわれてて」

「お願い教えて。知らないほうが心配するから。お願い、裕太くん」

「リョウタ、昼は、酒屋の配達のバイトしてる」

「昼も働いてるの?」

「時給がいいからって。でも、飲食店街への配達だから、かなりの量を時間までに配達しなきゃいけないから、かなりハードみたいで」

「どうして?リョウタ、何か欲しいものがあるの?」


「リョウタ、京子さんが流産したこと気にしてて。自分がちゃんとしてれば、京子に無理させることなかったって。だから、自分が京子さんの分まで働けば、京子さんが働かなくていいからって、昼もバイトしてる」


どうして、そんな無茶するのだろう。私がリョウタを追い詰めてるのかもしれない。




「京子、寝てていいって、言ったろ」

リョウタが、居酒屋のバイトから、帰ってきた。

「昼も働いてるんだってね」

「裕太が喋ったんだな。あのお喋りがっ」

「私が無理に聞いたの。裕太くんは悪くない」

「ったく。あのやろう」

「バイト、掛け持ちやめて。どっちか、辞めて」

「辞めない」

「どうして?リョウタ、こんなに疲れてるのに、このままじゃ体壊しちゃうよ」

「オレが、働けば、京子、仕事辞めれる。あんな残業が多い会社なんて、辞めろよ。オレが、夜昼働けば、バイトでも30万円は、稼げる。だから、京子は、仕事辞めて、家にいればいい」


こんなにまでリョウタが、無理してまで、一緒にいたって、私は、苦しくなるばかりだった。


「バイト、どっちか辞めないなら、別れる。ここからも、出ていって」


「京子」


「リョウタが、そんなに無理して、生活したって嬉しくない。辞めないなら、本当に別れる」


「わかった。バイト辞めるから」


「もう無理しないで。リョウタに何かあったら、私どうすればいいの」

私は、涙が止まらなかった。


「京子、ごめん。心配させて、ごめん」


やっぱ、オレは、ガキだ。

結局、オレのやってることは、京子に負担をかけている。

なんで、オレは、大人に、なれないんだろう。



リョウタは、昼の酒屋の配達のバイトを辞めた。

「リョウタごめんな。オレが京子さんに喋ったから」

裕太が、すまなそうに言った。

「いいよ。オレが悪い」

「リョウタ焦るなよ。かえって京子さん心配するんじゃねーの」

「うん。そうだな」

誰が見ても、オレがやってることは、計算できてなくて、無茶苦茶にみえる。成長しないまま、このままバイトやってていいのだろうか。




父親が、話があるから、実家に来てほしいというので、土曜日に、私一人で、実家に帰った。

「和明が、今マイホームを建ててる。完成したら、和明夫婦は、この家を出ていくだろう。」

父親は、言った。

「だから、京子、家に戻ってきてほしい」

急な話で、私は、すぐに答えられなかった。

「私も、もうすぐ定年だが、おまえ一人くらい、まだ、食わしてやれる」

父親は、私が子供ができにくい体だということを知って、気にしてるのだろうか。

「ここで、店を開きたいなら、その資金を私が出してもいい。リョウタくんも一緒にと言いたいが、リョウタくんは、まだ若い。リョウタくんを縛ることは出来ない」


「京子、帰ってきなさい。もう一人で頑張ることはない」

定年まで、公務員で、頭が固くて、融通のきかない父親だと思っていた。自分勝手にやってる私など、どうでもいい娘だろうと思っていた。


「お父さん、なぜ、あのとき、リョウタとの交際を許したの?」


「少年が、そのまま大きくなったような子だったから、悪い子じゃないと思った」



私は、リョウタのいるマンションに帰った。

「リョウタ、私、実家に戻ることにした」

私は、リョウタに父親に言われたことを話した。

「実家に帰って、店をやることにした」

リョウタは、私の話を黙って聞いていた。

「リョウタは、どうする?リョウタの好きにしていいよ。ここに残るんなら、このマンション、このままリョウタが使っていいよ。」


「オレ、京子と一緒に、京子の実家に行くよ」

「いいの?」


「ああ。京子と一緒に店をやるのが、オレの夢だから」




5年後。

「おばあちゃんー。ママは?」

「ママは、お店でしょう」

「ママのところに行く。ママー」


「ほんとに、恭ちゃんは、パパそっくりね」








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