実家。
明日は、実家だ。憂鬱だ。
最近、肌が悪い。お風呂上がりに、肌の手入れをしていた。もう、この年になると、高い化粧水を使っても、さほど変わらない。むしろ、調子悪いくらいだ。パックしたところで、効果もない。
「ただいま」
リョウタがバイトから帰ってきた。
「おかえり」
リョウタは、肌がツルツルだ。しかも、肌の手入れ何もしてないのに。
やっぱり若さには勝てない。
「明日、休みとれたよ」
「そう」
「京子、明日、気乗りじゃないみたいだな」
「実は、私達の付き合い、反対されたりして?」
「そうなん?」
「ありえなくは、ないでしょう」
「だったら、最初から、オレの親父反対するよ。わざわざ京子の実家まで行かないって」
私の父親が、反対するかもしれない。
「明日、早い新幹線だから、寝よ」
そうして、私達は、早く寝た。
10時に、リョウタの両親が私の実家にきた。
和室の客間にはいり、リョウタの父親は、正座して
「うちのバカ息子が、京子さんに、ご迷惑をおかけしまして、申し訳ございません。京子さんに負担して頂いてる分は、私が責任持って払いますので、どうぞ、うちの息子との交際を許してやってください。」
と言って、私の両親に、頭を下げた。
「オマエも頭下げるんだよ」
リョウタの父親は、リョウタの頭をつかみ無理矢理、頭を下げさせた。
「いや。うちの娘こそ。35歳なのに、こんな若い息子さんとお付きあいなど、申し訳ない。こんな年上の娘より、リョウタさんは、若いんだから、もっと若い娘さんのほうがいいのではないかと」
私の父親は、私とリョウタとの年の差を知って、恐縮していた。
「いや。リョウタみたいなバカ息子は、しっかりした娘さんのほうがいいと思います。京子さんに、負担かけるのは分かってますが、私は京子さんのような人に、リョウタをお願いしたいと思っております」
「うちの娘でよければ、お願いします。」
どうしたんだ?頭の固い私の父親が、認めるなんて。リョウタのお父さんにお願いされたから、この場だけ、仕方なくなのかもしれない。
「さあ。足を崩してください。そろそろお昼なので、支度しますね」
私の母親が言った。
「京子。手伝って」
寿司はとったが、それだけでは、味気ないので、煮物と、サラダと、リョウタの好きな唐揚げを作った。
「挨拶で忘れてましたが、これ、うちの会社で卸してるものなので、食べてください。」
そう言って、リョウタの父親は、米と沢山の野菜と、手作りウィンナーを持ってきた。
「こんなに、いっぱい、ありがとうございます」
野菜や米は、買えば高いので、母親は、喜んだ。
昼食を、食べながら、リョウタの父親が言った。
「今日は、京子さんのお兄さんは?」
「今日は、息子夫婦は、温泉に行きました。明日の午後まで帰ってこないと思います。」
「同居なんですか?」
「はい。もう息子の嫁が、これまた大変で」
母親が、よせばいいのに、兄嫁の愚痴を話し出した。
「わかります。うちは、別居なんですが、息子だけ帰ってきて、嫁は顔を出さないですよ」
その話にリョウタのお母さんが、乗っかり出した。
「うちの嫁も、二階から降りてこないですよ」
私の母親もテンション高く、喋り、話が止まらなくなった。
母親達が、嫁の話で意気投合してるのよそに
私の父親が、リョウタの父親に言った。
「では、今の会社をご長男さんが継がれるんですか」
「今は、他の会社で働いてますが、いずれは、継いでもらいたいんですが、どうでしょうね。嫁の言いなりになって、何を考えてるか、わかりません」
「うちの息子も、嫁の目があるのか、私達と交流を持とうとしませんね。とりあえず、夕食は一緒に食べますが、話などしません。孫がいるから、なんとか、やっているようなもので」
「これまで、育てても、そんなもんですかね」
こっちでは、父親同士が息子の批判だ。
「京子、唐揚げ美味い」
リョウタは、そんなの気も止めず、唐揚げを食べてた。
「そういえば、京子さんは、調理師の免許持ってるそうですね」
リョウタの父親が、言った。
「そうなんですか。この子なんにも言わないもんですから」
母親が驚いたようだった。
「年老いたOLなんて、いつリストラ対称になるかわからないから、取ったんです。リストラになったら、店でも、やろうかなと思って」
私は、いちおう説明した。
「もし京子さんが、お店を開くようだったら、うちの会社で、仕入れしてください。」
リョウタの父親が言った。
「とんだ長居を、しまして。もう、こんな、時間なので、そろそろ帰ります」
リョウタの父親が言った。
「遅いし、泊まっていかれたら、いかがですか」
「ありがとうございます。今日は、帰ります」
そう言って、リョウタのご両親は、帰っていった。
「私達も、帰ろうか」
私は、リョウタに言った。
「あら。あなた達は、泊まっていきなさいよ。和明夫婦もいないんだし」
和明とは、兄である。
「えー。帰るよ。ねっリョウタ」
「オレは、泊まっていっても、いいよ」
何で、そんなこと、言うのー。
「じゃあ決まりね。夕食は、肉にしようか。リョウタくん好きでしょう」
母親は、嬉しそうだった。
夕食の買い出しに、私と母親とリョウタで、近くのスーパーに行った。
「リョウタくん、ビール飲むでしょう」
「はい。」
「今日は、お父さん、晩酌相手が、いていいわね」
そう言って、母親は、ビールを2ダース買った。
「あれ、兄さん、お酒飲まなかったっけ?」
「飲むけど、郁恵さんがうるさいから、ダラダラ飲めないのよ」
「へえー。子供いるしね」
郁恵さんとは、兄嫁である。
「ロースと、牛タンと、カルビと、」
母親は、高い肉をバンバン、カゴに入れた。
「野菜は、リョウタくんのお父さんに頂いたのがあるし、あと何があればいいかな」
母親、浮かれていた。そうして、肩ぱっしから、食材をカゴに入れた。いくら4人いるにしたって、こんなに食べないよー。
「じゃあ、お父さん、乾杯」
そう言って、リョウタは、父親のグラスに合わせた。
父親は、飲み相手がいて、なんだか嬉しそうだった。
「リョウタくん、肉焼けたら、どんどん食べてね」
母親は、次から次へと肉を焼いた。
「このリョウタのお父さんが、持ってきたウィンナー、めちゃ美味しいー。」
手作りとはいえ、こんな美味しいウィンナー食べたことない。
「たぶん、レストランに卸してるウィンナーじゃないかな」
「そうなんだ。美味しいー」
宴は、10時まで続いた。
片付けをしたら、11時だった。なんだか、いつもより疲れた。
次の日、新幹線の駅のホームまで、両親は、私達を見送りに来た。
「ありがとうございました」
リョウタは、私の両親に、頭を下げさせた。
「リョウタくん、また来てね」
母親は、まるで、でかい孫を見送るように、名残惜しそうだった。
私達の乗った新幹線を見えなくなるまで、両親は、見送っていた。
「行ってしまいましたね。昨夜、夕飯の時に、あんなに笑ったの久しぶりでしたね」
母親は、父親に寂しそうに言った。
「京子、家に戻ってこないだろうか。リョウタくんと一緒に」
父親が、ポツリと言った。
「だって、和明夫婦がいるじゃないですか。」
「和明夫婦は、いずれ出ていくさ。郁恵さんが、私達と同居が嫌みたいだからね。マイホームを建てたら出ていくと思う。それに、嫁の郁恵さんに介護されるのも、なんだか嫌でね」
「お父さん。大丈夫ですよ。郁恵さんが、私達の介護するわけないですよ。私達、動けなくなったら、施設です」
「それも、そうか」
父親は、寂しく笑った。
リョウタのバイト先の居酒屋。
「リョウタ、京子さんの実家どうだった?」
裕太が聞いてきた。
「けっこう、楽しかったよ」
「両親同士が会ったんだ?」
「うん。だから、オレと京子は、もう親公認。」
リョウタは、嬉しそうに言った。




