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35歳の憂鬱。  作者: 武 画美
本編。
17/21

実家。


明日は、実家だ。憂鬱だ。

最近、肌が悪い。お風呂上がりに、肌の手入れをしていた。もう、この年になると、高い化粧水を使っても、さほど変わらない。むしろ、調子悪いくらいだ。パックしたところで、効果もない。


「ただいま」

リョウタがバイトから帰ってきた。

「おかえり」

リョウタは、肌がツルツルだ。しかも、肌の手入れ何もしてないのに。

やっぱり若さには勝てない。

「明日、休みとれたよ」

「そう」

「京子、明日、気乗りじゃないみたいだな」


「実は、私達の付き合い、反対されたりして?」

「そうなん?」

「ありえなくは、ないでしょう」

「だったら、最初から、オレの親父反対するよ。わざわざ京子の実家まで行かないって」

私の父親が、反対するかもしれない。

「明日、早い新幹線だから、寝よ」

そうして、私達は、早く寝た。




10時に、リョウタの両親が私の実家にきた。

和室の客間にはいり、リョウタの父親は、正座して

「うちのバカ息子が、京子さんに、ご迷惑をおかけしまして、申し訳ございません。京子さんに負担して頂いてる分は、私が責任持って払いますので、どうぞ、うちの息子との交際を許してやってください。」

と言って、私の両親に、頭を下げた。

「オマエも頭下げるんだよ」

リョウタの父親は、リョウタの頭をつかみ無理矢理、頭を下げさせた。

「いや。うちの娘こそ。35歳なのに、こんな若い息子さんとお付きあいなど、申し訳ない。こんな年上の娘より、リョウタさんは、若いんだから、もっと若い娘さんのほうがいいのではないかと」

私の父親は、私とリョウタとの年の差を知って、恐縮していた。


「いや。リョウタみたいなバカ息子は、しっかりした娘さんのほうがいいと思います。京子さんに、負担かけるのは分かってますが、私は京子さんのような人に、リョウタをお願いしたいと思っております」


「うちの娘でよければ、お願いします。」

どうしたんだ?頭の固い私の父親が、認めるなんて。リョウタのお父さんにお願いされたから、この場だけ、仕方なくなのかもしれない。


「さあ。足を崩してください。そろそろお昼なので、支度しますね」

私の母親が言った。

「京子。手伝って」

寿司はとったが、それだけでは、味気ないので、煮物と、サラダと、リョウタの好きな唐揚げを作った。


「挨拶で忘れてましたが、これ、うちの会社で卸してるものなので、食べてください。」

そう言って、リョウタの父親は、米と沢山の野菜と、手作りウィンナーを持ってきた。


「こんなに、いっぱい、ありがとうございます」

野菜や米は、買えば高いので、母親は、喜んだ。



昼食を、食べながら、リョウタの父親が言った。

「今日は、京子さんのお兄さんは?」

「今日は、息子夫婦は、温泉に行きました。明日の午後まで帰ってこないと思います。」


「同居なんですか?」

「はい。もう息子の嫁が、これまた大変で」

母親が、よせばいいのに、兄嫁の愚痴を話し出した。

「わかります。うちは、別居なんですが、息子だけ帰ってきて、嫁は顔を出さないですよ」

その話にリョウタのお母さんが、乗っかり出した。

「うちの嫁も、二階から降りてこないですよ」

私の母親もテンション高く、喋り、話が止まらなくなった。


母親達が、嫁の話で意気投合してるのよそに

私の父親が、リョウタの父親に言った。

「では、今の会社をご長男さんが継がれるんですか」

「今は、他の会社で働いてますが、いずれは、継いでもらいたいんですが、どうでしょうね。嫁の言いなりになって、何を考えてるか、わかりません」

「うちの息子も、嫁の目があるのか、私達と交流を持とうとしませんね。とりあえず、夕食は一緒に食べますが、話などしません。孫がいるから、なんとか、やっているようなもので」

「これまで、育てても、そんなもんですかね」

こっちでは、父親同士が息子の批判だ。


「京子、唐揚げ美味い」

リョウタは、そんなの気も止めず、唐揚げを食べてた。


「そういえば、京子さんは、調理師の免許持ってるそうですね」

リョウタの父親が、言った。

「そうなんですか。この子なんにも言わないもんですから」

母親が驚いたようだった。

「年老いたOLなんて、いつリストラ対称になるかわからないから、取ったんです。リストラになったら、店でも、やろうかなと思って」

私は、いちおう説明した。

「もし京子さんが、お店を開くようだったら、うちの会社で、仕入れしてください。」

リョウタの父親が言った。



「とんだ長居を、しまして。もう、こんな、時間なので、そろそろ帰ります」

リョウタの父親が言った。

「遅いし、泊まっていかれたら、いかがですか」

「ありがとうございます。今日は、帰ります」

そう言って、リョウタのご両親は、帰っていった。


「私達も、帰ろうか」

私は、リョウタに言った。

「あら。あなた達は、泊まっていきなさいよ。和明夫婦もいないんだし」

和明とは、兄である。

「えー。帰るよ。ねっリョウタ」

「オレは、泊まっていっても、いいよ」

何で、そんなこと、言うのー。

「じゃあ決まりね。夕食は、肉にしようか。リョウタくん好きでしょう」

母親は、嬉しそうだった。



夕食の買い出しに、私と母親とリョウタで、近くのスーパーに行った。

「リョウタくん、ビール飲むでしょう」

「はい。」

「今日は、お父さん、晩酌相手が、いていいわね」

そう言って、母親は、ビールを2ダース買った。

「あれ、兄さん、お酒飲まなかったっけ?」

「飲むけど、郁恵さんがうるさいから、ダラダラ飲めないのよ」

「へえー。子供いるしね」

郁恵さんとは、兄嫁である。

「ロースと、牛タンと、カルビと、」

母親は、高い肉をバンバン、カゴに入れた。

「野菜は、リョウタくんのお父さんに頂いたのがあるし、あと何があればいいかな」

母親、浮かれていた。そうして、肩ぱっしから、食材をカゴに入れた。いくら4人いるにしたって、こんなに食べないよー。



「じゃあ、お父さん、乾杯」

そう言って、リョウタは、父親のグラスに合わせた。

父親は、飲み相手がいて、なんだか嬉しそうだった。

「リョウタくん、肉焼けたら、どんどん食べてね」

母親は、次から次へと肉を焼いた。

「このリョウタのお父さんが、持ってきたウィンナー、めちゃ美味しいー。」

手作りとはいえ、こんな美味しいウィンナー食べたことない。

「たぶん、レストランに卸してるウィンナーじゃないかな」

「そうなんだ。美味しいー」

宴は、10時まで続いた。

片付けをしたら、11時だった。なんだか、いつもより疲れた。


次の日、新幹線の駅のホームまで、両親は、私達を見送りに来た。

「ありがとうございました」

リョウタは、私の両親に、頭を下げさせた。

「リョウタくん、また来てね」

母親は、まるで、でかい孫を見送るように、名残惜しそうだった。

私達の乗った新幹線を見えなくなるまで、両親は、見送っていた。



「行ってしまいましたね。昨夜、夕飯の時に、あんなに笑ったの久しぶりでしたね」

母親は、父親に寂しそうに言った。

「京子、家に戻ってこないだろうか。リョウタくんと一緒に」

父親が、ポツリと言った。

「だって、和明夫婦がいるじゃないですか。」

「和明夫婦は、いずれ出ていくさ。郁恵さんが、私達と同居が嫌みたいだからね。マイホームを建てたら出ていくと思う。それに、嫁の郁恵さんに介護されるのも、なんだか嫌でね」

「お父さん。大丈夫ですよ。郁恵さんが、私達の介護するわけないですよ。私達、動けなくなったら、施設です」

「それも、そうか」

父親は、寂しく笑った。



リョウタのバイト先の居酒屋。

「リョウタ、京子さんの実家どうだった?」

裕太が聞いてきた。

「けっこう、楽しかったよ」

「両親同士が会ったんだ?」

「うん。だから、オレと京子は、もう親公認。」


リョウタは、嬉しそうに言った。






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