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35歳の憂鬱。  作者: 武 画美
本編。
16/21

初恋の人。


「もしかして、笹原京子さん?」

「はい?」

会社帰りに、男性に声をかけられた。

「オレだよ。同じ中学の高橋圭介」

「あー圭介くん?」

高橋圭介は、私の初恋の人だった。

「京子、変わってないから、すぐ分かったよ。中学のときより、綺麗になったくらいで」

そう言われると、中学は、ひどかったように聞こえる。

「圭介くんも、変わってないよ」

中学の時より、背が高くなったくらいで、爽やかな感じは、変わらない。

「帰るとこ?ちょっと一杯やらない?」

今日は、リョウタは、バイト休みで、バンドの練習だから、早く帰りたい。

「ちょっとだけだよ。久しぶりに話もしたいし、行こうよ」

ほとんど、無理矢理に、立呑屋に連れていかれた。


「えーじゃあ、京子は、まだ独身なんだ。オレは、去年結婚した。今、女房は、妊娠中」

「じゃあ、パパになるんだね。おめでとう」

圭介も、若い女性と結婚したらしい。

「オレ、中学ん時、京子のこと、好きだっだよ。気づいてた?」

「ううん。全然」

今更、そんなこと言われても、どうしろって言うんだ。

私も圭介が初恋だったけど、それだけ。

どんな恋心だったかも、忘れた。


もうすぐリョウタが帰ってくる時間だ。早く帰って、ご飯作りたい。

「ごめん。私そろそろ、帰るね」

「送るよ」

「いい。一人で帰れるから」

「じゃあ駅まで、行こう」

仕方なく、駅までの道を圭介と歩いた。


「京子、ちょっとだけ、ここに入ろうよ」

圭介が指差した先は、ホテルだった。

初恋の相手がこれじゃあ、ガッカリだった。

「嫌だ。帰る」

そうすると、圭介は、私に抱きついてきた。

息が荒く、やばかった。

「離して。気持ち悪いっ。このオッサンがっ」

「オッサンって。おまえも同じ年だろーが」

「だってキモイ。奥さんが妊娠してるからって、ただの欲求不満なオッサンだよ。キモイ。キモイ。触んないでー」

そういって、私は走って逃げた。


圭介が追ってこないように、ヒールで必死に走ったら、ヒールのカカトが折れて、転んだ。

「痛い。もう最悪」

膝から血が出ていた。カカトは、折れるし、これじゃ裸足で帰るしかない。

私が困って、ぼーぜんとしていると、三人組の腕にタトゥーをしたチャラい若者と目があった。

絡まれるー。今日は、ほんと最悪。


「おねえさん、どうしたの?」

「血が出てるじゃん」

「痛そうー」

三人は私の膝を見て言った。

「はい」

若者の一人が、私にポケットティッシュを渡した。

「さっき、そこで貰ったやつだから、やるよ」

「あ、ありがとう」

風俗のティッシュだったが、ありがたく貰った。

「じゃあ、おねえさん、気をつけて帰れよ」

そう言って、三人は、去っていった。


人は見かけに、よらない。35歳の爽やかサラリーマンの圭介が、実は欲求不満のオッサンだったというのに、タトゥーだらけの腕をした若者の方が、優しかった。



ベンチに座って、さっき若者に貰ったティッシュで、膝の血をふいた。はあー。どうやって帰ろう。やっぱ裸足で帰るしかないか。

LINEが鳴った。

「まだ仕事おわらないの?オレ、帰ってきたよ」

リョウタからだった。

「帰る途中、ヒールのカカト折れて、転んだ」

「どこ?迎えに行く」

そうして、30分後に、リョウタが来た。


「靴持ってきた」

「リョウタ、ごめんね」

「膝を擦りむくって、小学生じゃん。徒競走でもしたの?」

そう笑いながら、リョウタは、私の膝に、バンドエイドを貼った。

「ちょっと走ったら、コケた。」

「ちょっと走っただけで、コケるなんて、もう足腰弱ってるんじゃねーの」

「ひどいー」

まるで年寄り扱いだ。


「京子が、足腰弱って、動けなくなったら、オレが介護してやるから、大丈夫だよ」

そう言って、リョウタは笑った。


どうして、リョウタは、そんな思ってもない口先だけのこと言うんだろう。

そんなこと言われたら、ずっと一緒にいれると期待してしまう。



「もう遅いから、お弁当買ってかえろうか?」

「うん」

そうして、リョウタと手を繋いで帰った。




「ええー。リョウタさんの彼女さんって年上なんですか」

大学生のバイトのサトシが言った。

「じゃあ、結婚をせかされませんか?」

「別に。言われたことないよ」

「オレの友達が、30歳の女性と付き合ったら、毎日結婚をせかされて困ってますよ。就職も決まらないのに、結婚なんて考えられないって」

「ふーん。オレは、一度も言われたことない」

「女性って30歳過ぎると、出産も考えて、結婚に焦るみたいですよ」

「そうなんだ」

「リョウタさん、妊娠は避けたほうがいいですよ。もし妊娠したら、逃げられませんよ」

オレが、バイトだから、京子は、言わないんだろうか。

結婚しても、やっていけないと、諦めてるんだろうか。

どっちにしろ。オレが、父親になるのが、想像できない。




「リョウタのお父さんから電話きて、私の実家に行って、わたしの両親に挨拶したいって言われた」

「親父が?」

「リョウタ、私の実家まで、行くの嫌でしょう?」

「別に、行ってもいいよ」

「無理しなくていいよ」

「いや。行くって。京子のお父さんにも挨拶しないと」

はあー。私はため息をついた。憂鬱だ。

「なん?実家に行かれたら困るの?」

「お兄さん夫婦もいるし。リョウタ嫌じゃないかなと思って」

「別に。」


私の実家に、両親同士が会って、どうするつもりなんだろう。実は、10歳も、年上の彼女は認めませんと、直に私の両親に言うんだろうか。私の父親にリョウタを会わすのも憂鬱だ。父親が、リョウタに失礼なことを言わないといいけど。



今度の土日は、兄夫婦が温泉に行って、いなくて都合いいからと、うちの母親が、リョウタの両親が来ることに大歓迎だった。



私は、体のことを親にもリョウタにも言ってないのに、お互いの両親同士が会うほど大事になり、罪悪感で、いっぱいだった。





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