嘘。
金曜日に、リョウタがバイトしてる居酒屋に、バツイチの慶子と飲みに行った。
「京子さん、いらっしゃい。」
仕事を掛け持ちしてる成子さんがいた。
「京子っ」
リョウタが、嬉しそうに、私と慶子を席に案内した。
「あー今日も疲れたー。リョウタくん、生、二つね」
慶子は、早速ビールを頼む。慶子は、締め切りで、そうとう忙しかったらし
「んじゃ、おつかれ」
慶子と二人で、ジョッキーで、乾杯する。
「京子さんですか?」
奥から、店長の奥さんらしき人が来た。
「お盆は、調理場を手伝って頂いて、ありがとうございます」
そう言って、奥さんは、私にお礼を言った。
「いいえ。お体のほうは、大丈夫ですか?」
「もう大丈夫です。元気です。今日は、ゆっくりしてって下さいね」
「ありがとうございます。」
小柄な可愛いらしい奥さんだった。夫婦二人で店をやってる。ずっと一緒にいられるんだから、仲いんだろうな。
「ところで、慶子、クラス会どうだった?」
「それなりだったんだけど。里子が来てさ。」
「里子?あの里子」
「なんでも10年付き合った彼氏にフラレたらしく、クラス会で、酔っ払って号泣よ」
「10年ー。」
10年も付き合って、35歳でフラレるのは、キツイ。
「彼氏が26歳の若い子に、行ってしまったらしい」
「うー、それはキツイね」
「もう、今まで結婚してくれると待ったのにー。もう、結婚もできない。子供も産めないって号泣」
「彼氏って、何歳だったの?年下?」
「それが45歳のオッサン」
「ひえー。キツイね」
「だから、ピチピチの若い彼氏見つけて、見返してやれって言ったわよ」
若い彼氏見つけても、いつか、捨てられそうだけど。
でも、35歳まで、結婚を期待させ待たせておいて、捨てるなんて、酷い話だ。10年の付き合いじゃ、立ち直るまで、時間かかるだろうな。
「京子、リョウタくんの友だちを里子に、紹介してやったら?」
「えー。それは無理でしょう」
「京子ばっかり、若いイケメンの彼氏いて、良い思いをしてるだから、その幸せを分けてやんないと」
「私だって、いつ捨てられるか、わかんないもん。人の世話してる場合じゃないよ」
「それを覚悟の上、付き合ってるんだ?」
「私は、結婚考えてないから」
「私も、結婚は、しばらくいいやー。元旦那で、懲りた」
35歳で男にフラレて、結婚できないと泣く里子。でも、そういう男と、結婚しなくて良かった気がする。どんな男でも、結婚できればいいのだろうか。10年も付き合えば、情はあるかもしれない。でも、里子を捨てた男は、里子に、そんな情も無かったということだ。
「リョウタ、先帰ってるね」
そう言って、私と慶子は、店をでた。
「相変わらず、リョウタくんと仲良いね。同棲、うまくやってるんでしょう」
歩きながら、喋った。
「ケンカは、するけどね」
「ケンカできるんだもん。上手くやってるんだよ。私なんて、元旦那と、ケンカすらしなかった。私の言い分は聞き入れようとしてくれなかったから、ケンカ以前」
慶子の元旦那は、服従夫だったらしい。
「やっぱ、お金あればいいわけじゃないよ。家で、安らぎがないのは、キツイよ」
慶子は、結婚生活を振り返るように言った。
「リョウタくん見てると、お金なくても、安らぎは持ってるんだなって感じる」
ちょっと、駄々っ子の安らぎだけどね。
リョウタは、いつまで、私に安らぎを与えてくれるんだろう。
「あれ?ねーな」
リョウタを何かを必死にさがしてた。
「アイツか。ったく、クソがっ」
リョウタから、LINEがあった。
「今日は、バンド練習のあと、メンバーと飯食うから、少し遅くなる」
じゃあ、私の分だけ、ご飯作るの面倒くさいから、私も、どっかで食べて帰ろうかな。
そうして、仕事が終わったあと、街に行った。
「あれ?リョウタ?」
リョウタが、カフェに居た。誰かと一緒だった。
それは、メンバーじゃなく、若い女性だった。
なぜ、嘘をついたのだろう。
「京子、ただいま」
リョウタがマンションに帰ってきた。
私は、おかえりも言わないで黙った。
「どうしたんだよ。京子、機嫌わるそうだな」
「なんで嘘つくの?」
「何が?」
「カフェに、リョウタが若い女性といるところ見たの」
「ああ。元カノ。CD返してもらったんだ」
「だったら、そう言えばいいじゃないの。なんで嘘つくの」
私はリョウタを責めた。
「言ったら、京子、心配すると思ったから」
「正直に言ってくれたら、心配なんてしないわよ。嘘をつくから、心配するんでしょう」
「ごめん」
リョウタは、気まずそうだった。
「やましい気持ちがあるから、嘘つくのよ」
そう言って、私は寝室に行った。
リョウタを責めてしまって、私は自己嫌悪に落ちいった。
責めたって、仕方ないのこと。
いつかくる別れが早くなったのかと、私は不安になった。
別れは、仕方ないこと。
人の気持ちが変わるのも仕方ないこと。
責めたって、しょうがない。
リョウタは、リビングに立っていた。
あの時と、違う。
20歳のとき、オレが浮気した時、京子は、オレを責めなかった。
仕事が忙しくて、会えなかったから、京子は、休みの日にオレのために、弁当を作って、朝、オレのアパートに来た。
そのとき、オレのアパートに女がいた。
でも、京子は、責めなかった。取り乱しもしなかった。
分かったという顔して、弁当をおいて、出ていった。
そんな京子を見て、オレが想うほど、京子は、オレのことを想ってなかったんだなと思った。
だから、今日、オレを責めた京子を見て、安心した。
「京子、ごめん」
リョウタが寝室に入ってきた。
「20歳のとき、京子に貰ったCDをアイツが、勝手に持って行って、どうしても、返して欲しかったんだ。だから、会った」
私は、リョウタを責めてしまったバツの悪さから、顔をあげられなかった。
「やましいことなんて、ないから。もう嘘つかないから。信じてほしい」
「もう不安にさせないで」
「ああ。約束する」
これからも、不安はあるだろう。でも、リョウタの無邪気な顔をみて、不安が、安らぎになる。
不安を打ち消して、一緒にいたい。
寝室の窓から、月が見えた。
月は、輝いていた。
そのまわりの星は、変わることなく、月の周りにいるんだろうか。
いつか別れがきても、この星を私達は、それぞれの場所で、見るだろう。




