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35歳の憂鬱。  作者: 武 画美
本編。
11/21

同棲生活。

くっしゅん。

新人の南美が、クシャミをした。

「南美ちゃーん。大丈夫か?風邪?」

げっ。気持ちわるい。猫なで声をだして、課長が、クシャミをした南美を心配をする。

48歳にもなって、いくら若い子が、好きとはいえ、こういう気持ち悪い声をだすとは。

仕事に私情をいれ、機嫌悪いときは、部下に八つ当たりし、気分にムラがある課長だ。こういう人が課長になるのが納得できない時がある。会社もどういう人選してるのだろうか。

新人の南美も、こういうオッサンに気に入られて嬉しいものだろうか。その辺は、不思議だ。



「京子さん、お弁当作ってきたんですか」

昼休憩中に、南美が、私のお弁当を見て言う。

「二週間だけね」

「でも、女子力アップしますね」

別に、女子力をアップするために、お弁当作ってきたわけじゃない。今さら、この年で、男性社員の好感度を上げる気もない。


リョウタが、新しいギターが欲しくて、二週間だけ、昼に工事現場で、働きだしたのである。夜は、居酒屋で、掛け持ちしている。

二週間とはいえ、肉体労働なので、私は朝、5時に起きて、リョウタにお弁当を作っている。一個二個作るのも変わりないので、ついでに自分のお弁当も作ってきてるわけだ。



「リョウタくん、毎日お弁当豪華だな。母ちゃんに作ってもらうのか」

「いえ、彼女です」

「彼女?若いのに、随分手の込んだお弁当作るんだな」

「彼女、年上なんで」


「こりゃ、いいや。姉さん女房は、金のわらじを掃いてでも探せと言うからな」

工事現場の60歳に近いオジサンは、豪快に笑った。

「いいよな。オレなんて、結婚二年目なのに、これだけだぜ」

30歳のアキラさんは、コッペパンをかじってた。肉体労働で、コッペパンだけは、キツイ。奥さんの尻に敷かれてるんだろうか。




「疲れたー」

リョウタが居酒屋のバイトを終えて帰ってきた。

「もう寝る」

そういって、ベットに倒れた。

「お風呂入ってから寝なよ」

工事現場で、働いた汗と、居酒屋で働いた汗が、ベットに染み付くー。疲れてるのは、分かるが、今日は暑かったし、これは、いかん。

「起きて」

と言いながら汚い靴下を脱がしてやる。絶対、お風呂入ってほしい。

「風呂、面倒くさい」

面倒くさい気持ちは分かるが、かえたばかりのシーツに、だめだめ。

「だったら。京子、髪洗ってくれよ」

もう、おまえは、三歳児か。小学生でも髪くらい自分で洗える。



こんな感じで、リョウタとの同棲生活は、なんとかやってる。

でも、いつまで、続くのかは、分からない。




「あれ?田中くん、まだいたの?」

南美と同期で、新人の田中くんが、7時過ぎたというのに、一人残っていた。

「京子さん。板谷さんに資料、ダメだしされて、今日中に、やらなきゃいけないんですけど、どこを直していいか、全然分からなくて」

営業の田中くんは、営業のエースの板谷さんのアシスタントとして、まだ一人立ちは、出来てない。

「見せて。前置きが長すぎるのよ。前置きを短くして、商品の説明をもっと詳しく書いたほうがいんじゃないかな。こういう田中くんの感想みたいな文はいらない。感想文じゃないんだから。あくまでも、商品の説明に重点を置かなきゃ」


「京子さん、ありがとうございます。やってみます」

新人の田中くんは、リョウタより年下の23歳だ。まあ、今時の若い人って、こういう感じなんだろうか。頼りないというか。

でも、これから、色んな経験をして、成長するんだから、頼りないと言っては、失礼だね。私も、そうだったんだから。

「じゃあ、頑張ってね」



「リョウタ、とうとう京子さんのマンションに転がり込んだんだって?ヒモ道、まっしぐらだな」

そう言って居酒屋の店長が笑った。

「ヒモじゃないですよ。やっぱ定職についてないと、ヒモと言われるんですかね」

「そりゃ、言われるだろ。年上の彼女のマンションに転がり込んで。バンドやってれば」

「やっぱサラリーマンなるしかないですかね。でもオレ、サラリーマンは向いてない気がする」


「京子さんと、店やればいいじゃん。リョウタ、けっこう向いてるよ」

店かー。そういえば、京子、老後、やりたいって言ってたな。




また喫煙ルームで、男性社員が、くだらない話をしてる。

「南美ちゃん、彼氏いるのかな」

「えっ、加藤さんって、南美さんがいいんですか?どこがいんですか?」

南美と、同期の田中が言う。

「田中、南美ちゃんと同期なんだし、よさが分からないのか?愛想よくて、可愛いだろ」

「なんか、ぶりっこって感じで、別に」

「じゃあ田中は、誰がいんだよ?」

「オレは、断然、京子さんです。普段はクールだけど、彼氏といるときは、甘えてきそうじゃないですか」

「ツンデレってやつか?ってか、笹原って、田中より、一回りも年上だぞ」

「年関係ないですよ。」


「田中、笹原のこと、好きだって言うまえに、仕事覚えろよ。じゃなきゃ笹原に、相手にされないぞ。半人前が」

エースの板谷が、厳しいことを言った。



でも、嫉妬深いリョウタに知られたら、面倒くさそうです。





「うん。分かった。仕事の調整して、来週までに、返事するね」

「誰と話してたんだよ」

お風呂から、上がってきたリョウタが電話を聞いてたらしい。

「高校の同級生だよ。今度、クラス会やるらしいから、その話」

「男の声だったろ」

「クラス会の幹事の佐々木くんだよ。皆に、電話してるみたいだよ」

「ふーん」

今日は、大人しく納得したみたいだ。




「京子さーん。こないだの資料、取引先に、評判よくて、商談通ったんですよ。京子さんのおかげです」

営業の新人の田中くんが、嬉しそうに、わざわざ報告にきた。

「田中くんが、残ってやって、頑張ったからよ」

「京子さんのアドバイスのおかげです」


「田中っ、なにサボってんだよ。取引先に行くぞ」

エースの板谷が、田中を呼んだ。

「板谷さん、厳しくて、京子さん、オレ折れそうです。」

「呼んでるから、早く行ったほうがいいよ」

なんだか、年下のほうが、扱いが慣れてるのは、気のせいだろうか。



そういえば、クラス会の返事のことで、幹事の佐々木くんに電話しないと。

スマホで、佐々木くんの連絡先を探すと、見当たらない。

「おかしいな。登録したはずなんだけど」

えー。佐々木くんどころか、男性の連絡先が全部削除されてる。


父親と兄の電話番号も消えてる。


またリョウタの仕業だ。




まあ、バックアップとってるから、いいけど。


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