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35歳の憂鬱。  作者: 武 画美
本編。
10/21

腐れ縁。


腐れ縁でも、友情が壊れるのは、一瞬だ。


日曜日、リョウタのバイト前に、二人でカラオケ行った。

リョウタは、実は歌が上手い。ボーカル向きだと思うのだが、どうしてもギターをやりたいらしい。

リョウタがhideの「everfree」を歌ったとき、不覚にも、hideを思い出して泣いてしまった。

あれから何年たっただろう。私は、まだ学生だった。

ピストルズのシドも、そうだが、偉大なるロックスターの早すぎる死は、辛くて悲しい。



「そろそろバイト行かなきゃね」

カラオケ屋を出ると、小学からの同級生の香織にあった。

「京子、最近返信くれないわよね」

「ああ。忙しかった」

香織は、結婚してから、主婦の上から目線で、カチンとくる奴になっていた。

香織が、リョウタを見て、驚いた顔してた。

「香織、ごめんね。私達、急ぐから」

なんだかんだ言われのが嫌だから、逃げるように、急ぐふりをした。

「あの人、京子の友達?」

「同級生なんだけど、最近は、あまり付き合いないの」

「なんだか、オレをじろじろ見てた」

「ごめんね。」

リョウタは、バイトに行った。



案の定、夜に、香織から、電話が、かかってきた。

「京子、あの年下の彼と、まだ続いてるの?」

「最近、復縁した」

「京子、いい加減落ち着いたら?あんな年下に、遊ばれてるだけよ。35歳のオバサンを本気で、付き合うわけないじゃない」

おまえも、35歳のオバサンだろーが。

「やめなさい。もう、すぐ別れたほうがいい。私が旦那の独身の同僚を紹介するから、ほんとに結婚考えたら?」

香織の旦那の同僚?公務員でも、冴えないんだろうな。

「結婚は、まだいい」

「何言ってんの。もう35歳よ。子供だって早く産まないと、ダメでしょう。すでに、高齢出産よ。あんな年下と、付き合って、親だって反対するでしょう。あの年下の彼、京子と結婚する気なんて、絶対ないわよ。どーせ彼、お金もないんでしょう。京子、いい年して、恥ずかしくないの?子供も産まないで、いつまで自由でいる気なの?早く結婚しなさいよ」

散々、言いたいこと言われて、私も、怒りをとおりこして言った。


「結婚しない。子供産まない。私が恥ずかしいなら、もう付き合ってくれなくて、けっこう。子供も産まない未熟な人間の私より、結婚して、子育てしる立派な人達と、付き合ったら、いんじゃないの。じゃあ。元気で」

そう言って私は、電話を切った。


ったく、親でもないくせに、うるせーんだよ。

腐れ縁の友達と言っても、所詮他人なんだよ。

他人に、私の人生まで、どーのこーの言われる筋合いない。

どんだけ、上から目線なんだよ。

あー気分悪い。子供っ、子供って。むかつく。



そう、私は、妊娠が難しい体だった。

30歳過ぎたとき、婦人科検診に行った。

その時に、妊娠する可能性は、低いだろうと、先生に言われた。

このことは、親にも、誰にも言ってない。


だから、結婚目的で、交際を申し込まれた男性は、全て断ってきた。

結婚したい男は、子供も欲しいだろう。たとえ相手の男性が、子供いらないと、言っても、その男の親が、孫、孫と、うるさいだろう。


だから、私は結婚しなくてもいい。

結婚したい男は、子供を産める女性を探したらいい。



だから、結婚を考えてないリョウタといるのは、ラクだった。


いつか、リョウタも結婚するだろう。

でも、それは私ではない。子供を産める女性と結婚するだろう。



だから、私は母性が人より強いのかもしれない。母親になることのない私は、母性を、もてあましてる。

それが、リョウタで、満たされていた。



「なんか京子、元気ない。」

バイトから帰ってきて、リョウタが、言った。

「年だから、疲れがとれにくいだけよ」

「なら、いいけど。」

「明日、仕事だから、先に寝るね」

そう言って、私は寝室に行った。

友達なんて、いなくてもいい。リョウタがいてくれればいい。




「京子、久しぶりっ」

会社帰りに、ミサエに、あった。ミサエとは、小学、中学と一緒だった。ミサエも、独身である。

「京子、最近、香織に会った?」

「日曜日に、偶然あった」

香織の名前を出されるのも、むかつく。

「香織。同級生で、かなり評判悪いみたいね。私にも、しつこく結婚しないの?と言ってきたり、結婚してる人には、旦那が公務員だから、それを鼻にかけてるみたいよ」

「そうなんだ」

「ここだけの話なんだけど、私の兄が、香織の旦那と一緒の役所で働いてるんだけど、香織の旦那、若い女性職員に、かなり入れ込んでるみたいよ。でも、香織は、旦那が公務員だから、絶対に離婚しないと言ってるらしい」


あんな旦那でも、若い女性にモテるとは、人の好みって解らないものだ。



自分が不幸だと、もっと不幸な人を探したがる。

そうして、自分より、不幸な人がいたと、嘲笑う。

不幸な人を、見つけて、自分が上に立った気分になる。

あれこれアラを、探し、自分は勝ってる人間だと勘違いをする。



勝ち負けじゃない。

勝ってる人間にも、必ず欠点がある。

負けてる人間にも、必ず利点がある。


そんなことで、人間の価値は決まらない。



土曜の休みに、母親から電話が、あった。

「親戚からもらった松阪牛、送ったから、リョウタくんに食べさせてあげて」

「松阪牛?お父さんやお兄ちゃんに、食べさせなくても、よかったの?」

「いいの。あの人達に、そんな贅沢なもの食べさせるの、もったいないわよ。リョウタくんは、若いだから、肉食べたいんだから、いっぱい食べさせてあげたいのよ」

公務員好きだった母親が、リョウタをかなり気に入ったようだった。


届いた松阪牛見ると。肩ロースで、かなり良い肉だ。

さっそく、焼いてリョウタに食べさせた。

「めちゃ美味いー。こんな美味い肉食べたの初めてだ」

「お母さんが、リョウタに食べさせてって送ってくれた」

「京子のお母さんに、お礼言わなくちゃ」

こんなに喜んでくれると食べさせたかいが、ある。


母親が、父親や兄に、食べさせないで、リョウタに送ってくれたのは、そんなわけだろう。

無反応な父親と兄。高級な肉も哀しむかもしれない。



食事の片付けをしてると、キッチンにリョウタがきた。



「オレ、京子のマンションに引っ越すから」



こうして、私、笹原京子、35歳にして、10歳年下の彼と、同棲を始めることになった。


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