腐れ縁。
腐れ縁でも、友情が壊れるのは、一瞬だ。
日曜日、リョウタのバイト前に、二人でカラオケ行った。
リョウタは、実は歌が上手い。ボーカル向きだと思うのだが、どうしてもギターをやりたいらしい。
リョウタがhideの「everfree」を歌ったとき、不覚にも、hideを思い出して泣いてしまった。
あれから何年たっただろう。私は、まだ学生だった。
ピストルズのシドも、そうだが、偉大なるロックスターの早すぎる死は、辛くて悲しい。
「そろそろバイト行かなきゃね」
カラオケ屋を出ると、小学からの同級生の香織にあった。
「京子、最近返信くれないわよね」
「ああ。忙しかった」
香織は、結婚してから、主婦の上から目線で、カチンとくる奴になっていた。
香織が、リョウタを見て、驚いた顔してた。
「香織、ごめんね。私達、急ぐから」
なんだかんだ言われのが嫌だから、逃げるように、急ぐふりをした。
「あの人、京子の友達?」
「同級生なんだけど、最近は、あまり付き合いないの」
「なんだか、オレをじろじろ見てた」
「ごめんね。」
リョウタは、バイトに行った。
案の定、夜に、香織から、電話が、かかってきた。
「京子、あの年下の彼と、まだ続いてるの?」
「最近、復縁した」
「京子、いい加減落ち着いたら?あんな年下に、遊ばれてるだけよ。35歳のオバサンを本気で、付き合うわけないじゃない」
おまえも、35歳のオバサンだろーが。
「やめなさい。もう、すぐ別れたほうがいい。私が旦那の独身の同僚を紹介するから、ほんとに結婚考えたら?」
香織の旦那の同僚?公務員でも、冴えないんだろうな。
「結婚は、まだいい」
「何言ってんの。もう35歳よ。子供だって早く産まないと、ダメでしょう。すでに、高齢出産よ。あんな年下と、付き合って、親だって反対するでしょう。あの年下の彼、京子と結婚する気なんて、絶対ないわよ。どーせ彼、お金もないんでしょう。京子、いい年して、恥ずかしくないの?子供も産まないで、いつまで自由でいる気なの?早く結婚しなさいよ」
散々、言いたいこと言われて、私も、怒りをとおりこして言った。
「結婚しない。子供産まない。私が恥ずかしいなら、もう付き合ってくれなくて、けっこう。子供も産まない未熟な人間の私より、結婚して、子育てしる立派な人達と、付き合ったら、いんじゃないの。じゃあ。元気で」
そう言って私は、電話を切った。
ったく、親でもないくせに、うるせーんだよ。
腐れ縁の友達と言っても、所詮他人なんだよ。
他人に、私の人生まで、どーのこーの言われる筋合いない。
どんだけ、上から目線なんだよ。
あー気分悪い。子供っ、子供って。むかつく。
そう、私は、妊娠が難しい体だった。
30歳過ぎたとき、婦人科検診に行った。
その時に、妊娠する可能性は、低いだろうと、先生に言われた。
このことは、親にも、誰にも言ってない。
だから、結婚目的で、交際を申し込まれた男性は、全て断ってきた。
結婚したい男は、子供も欲しいだろう。たとえ相手の男性が、子供いらないと、言っても、その男の親が、孫、孫と、うるさいだろう。
だから、私は結婚しなくてもいい。
結婚したい男は、子供を産める女性を探したらいい。
だから、結婚を考えてないリョウタといるのは、ラクだった。
いつか、リョウタも結婚するだろう。
でも、それは私ではない。子供を産める女性と結婚するだろう。
だから、私は母性が人より強いのかもしれない。母親になることのない私は、母性を、もてあましてる。
それが、リョウタで、満たされていた。
「なんか京子、元気ない。」
バイトから帰ってきて、リョウタが、言った。
「年だから、疲れがとれにくいだけよ」
「なら、いいけど。」
「明日、仕事だから、先に寝るね」
そう言って、私は寝室に行った。
友達なんて、いなくてもいい。リョウタがいてくれればいい。
「京子、久しぶりっ」
会社帰りに、ミサエに、あった。ミサエとは、小学、中学と一緒だった。ミサエも、独身である。
「京子、最近、香織に会った?」
「日曜日に、偶然あった」
香織の名前を出されるのも、むかつく。
「香織。同級生で、かなり評判悪いみたいね。私にも、しつこく結婚しないの?と言ってきたり、結婚してる人には、旦那が公務員だから、それを鼻にかけてるみたいよ」
「そうなんだ」
「ここだけの話なんだけど、私の兄が、香織の旦那と一緒の役所で働いてるんだけど、香織の旦那、若い女性職員に、かなり入れ込んでるみたいよ。でも、香織は、旦那が公務員だから、絶対に離婚しないと言ってるらしい」
あんな旦那でも、若い女性にモテるとは、人の好みって解らないものだ。
自分が不幸だと、もっと不幸な人を探したがる。
そうして、自分より、不幸な人がいたと、嘲笑う。
不幸な人を、見つけて、自分が上に立った気分になる。
あれこれアラを、探し、自分は勝ってる人間だと勘違いをする。
勝ち負けじゃない。
勝ってる人間にも、必ず欠点がある。
負けてる人間にも、必ず利点がある。
そんなことで、人間の価値は決まらない。
土曜の休みに、母親から電話が、あった。
「親戚からもらった松阪牛、送ったから、リョウタくんに食べさせてあげて」
「松阪牛?お父さんやお兄ちゃんに、食べさせなくても、よかったの?」
「いいの。あの人達に、そんな贅沢なもの食べさせるの、もったいないわよ。リョウタくんは、若いだから、肉食べたいんだから、いっぱい食べさせてあげたいのよ」
公務員好きだった母親が、リョウタをかなり気に入ったようだった。
届いた松阪牛見ると。肩ロースで、かなり良い肉だ。
さっそく、焼いてリョウタに食べさせた。
「めちゃ美味いー。こんな美味い肉食べたの初めてだ」
「お母さんが、リョウタに食べさせてって送ってくれた」
「京子のお母さんに、お礼言わなくちゃ」
こんなに喜んでくれると食べさせたかいが、ある。
母親が、父親や兄に、食べさせないで、リョウタに送ってくれたのは、そんなわけだろう。
無反応な父親と兄。高級な肉も哀しむかもしれない。
食事の片付けをしてると、キッチンにリョウタがきた。
「オレ、京子のマンションに引っ越すから」
こうして、私、笹原京子、35歳にして、10歳年下の彼と、同棲を始めることになった。




