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35歳の憂鬱。  作者: 武 画美
本編。
1/21

35歳。

笹原京子。35歳。中小企業OL。


「笹原、南美ちゃんが風邪気味で早退するから、南美ちゃんがやってる資料を笹原が今日中にやってくれないか」

若い子に、甘い課長が、私の仕事を増やしてきやた。




どーせ、仮病で街コンに行くんだろーが。


この新入社員の南美は、いたって普通の顔なのだが、男性社員への媚びが、徹底している。

なので、顔は普通だが、モテない男性社員は、勘違いして、南美に甘い。


南美の口癖、「素敵な彼をみつけて、20代で、早く結婚したいんですよ」である。

そんなわけで、顔は普通なのに、レベルの高い街コン参加に精をだしてる。



今日も残業だ。



6時過ぎて、パソコンをカシャカシャやってると、同期の鈴木がきた。冴えない男である。

「おまえ、また残業してるのか。若い奴等は、帰ったぞ」

うっせー。邪魔だ。来るな。その若い奴に、仕事を押し付けられたのである。

「おまえも要領悪いな」

うっせー。おまえも要領悪いだろ。

「オレは、これから後輩と飲むに行くんだよ。慕われてるから、毎回誘われて、忙しいよ」

このウダツの上がらない男が、慕われるわけない。都合よく、奢らせられてんだよ。バカだから、ちょっと持ち上げれば、調子になるのを後輩に見抜かれてんだよ。



終わったのは、8時を過ぎた。夕飯作るのが面倒くさいから、スーパーで、惣菜買って帰ろう。、、



ソファで、うたた寝していると、携帯が鳴る。

また10歳年下の元カレだ。なんなんだ、いったい。また金か?

「ライブチケット30枚、売ってよ」

また売れないのか。キャパ100人のライブハウスで、無理ないか。だいたい、あのヘタクソなバンドにお金はらって見るのも、もったいない。

元カレは、ギターだが、ボーカルが、声が好きな声じゃないし、顔も金髪にしてるけど、普通だ。ボーカルに必要な色気もない。

「私より今の彼女に、頼んだらいいさ」


「あっ今カノは、金持ってるけど、バンド全く興味ないから、無理。徳永英明しか聴かないみたいだから」


今の彼女って、キャバ嬢だよね。徳永英明聴くなんて、いったい何歳なんだろ。



「今、仕事忙しいから、そんな暇ないから無理」


「京子、変わったな。まえは優しかったのに、オレの為には何でもしてくれたじゃないか」


「無理なもんは、無理なの」


「わかったよ。もう頼まない。じゃあなババアっ」

むかつく。

「クソガキっ」そう、言い返して電話を切った。


元カレも、付き合ってたときは、可愛かったのに、変わったのは、お互いさまだ。



元カレは、いつまでバンドを続けるんだろ。

あんなヘタクソなバンドでは、メジャーになれるわけない。

ニルヴァーナを聴く私からみれば、元カレのバンドなんて、カスだ。


でも、まだ25歳だから、好きなことやれるよね。

私とは違う。




朝早く、携帯が鳴る。

今日は、土曜で休みなのに、寝させてよ。

「今日旦那いないから、ランチしない?いいイタリアン見つけたのよ」

香織だ。香織は、自分の都合よい時だけ、連絡してきて、人の都合を考えない。

「ごめん、疲れてるから無理」


「そんなこと言わないで、私が奢るから、行こうよ。イタリアンよ」

奢りに負けて、渋々行くことにした。



11時に待ち合わせて、こじんまりとしたイタリアンに行った。

「子供は?」

香織は、幼稚園の男の子がいる。

「実家の母親に預けたの」

「ママいなくて、かわいそうだね」

「私もたまには、息抜きしないと。子供いたらイタリアンなんて、来れないわよ」

たまには?いつも息抜きしてるくせに。

「京子は、結婚しないの?」

まただ。毎回同じことを言う。主婦の上から目線が始まった。

「相手いないし」


「まだ年下の彼のこと、ひきづってるわけじゃないよね」


「それはない。金づるにされても嫌だし」


「そうよね。男は、やっぱ金持ってないと、大変よね」

香織の旦那は、公務員だ。公務員が金持ってるわけじゃないけど、安定してる。でも、香織の旦那は、40歳で、髪がヤバイ。そして小太りだ。

「でも、京子は自由で、いいわよね。私なんて、家事も大変だし、子供の世話も、大変だし、たまに来る姑の相手も大変よ」

嘘つけ。料理も、子供の世話も実家の母親に、押しつけて、自分は習い事や、ママ友と、ランチに行ってるくせに。私よりも自由だ。


「私も独身に戻りたいわ」

イヤミな奴だ。思ってもいないことを言って、好きで結婚したんだから、仕方ないだろーが。

この主婦のなにかと上から目線は、カンに触る。




気分の悪いランチだった。来るんじゃなかった。貴重な休みをムダにした。

明日は、出掛けないで、寝てよう。



夜中に携帯が鳴る。

もうっ、寝ようてと、思ったのに。

また元カレだ。今度は、なんなんだ。

「ベースがバンド辞めるって」


「えっ、だってライブ近いんじゃないの」


「実家に帰って、公務員試験受けるんだって」

そりゃまた、いきなり現実的だ。

「ライブどーすんの」


「今、サポート探してるけど、あとライブまで、一週間しかないから無理だ」

元カレは、泣き声だ。

「タケシくんは?タケシくんなら、バンドかけもちしても大丈夫じゃない?」


「タケシは、無理。今、タケシのバンド、関西回ってるから。京子、誰か探してくれよ」

もう、ほとんど泣いている。

私は、こういうのに弱い。母性が、うづいて、頼られると、なんとかしてあげたくなる。それが、私の駄目なとこだ。

「仕方ないな。輸入レコードの沢木さんに頼んでみるよ」


「京子、ありがとう。やっぱ京子しか頼めないよ」

こいつは、調子がいい。この間、ババアと言われたのを私は忘れていない。



私が尽くしても、返してくれるわけでない。

人との付き合いなんて、利用の利用だ。


独身だから、暇だと、思われ、都合よく、時間潰しに付き合わされる。


独りだから、誰にも頼らず、判断力と、決断力が、強くなる。

誰かに頼るのを忘れてしまったかもしれない。



元カレのヘタクソなバンドの曲なら1日で、覚えられる。

明日の日曜は、ベーシスト探しになりそうだ。




元カレのバンドのライブは、無事に終わった。

沢木さんが、今活動してないバンドのベースを見つけてくれたのだ。

そのベースのバイト先の人達もライブを見に来てくれて、100枚のライブチケットも、どうにか完売した。




私も、久しぶりに元カレのバンドのライブを、見た。

まだ、この曲演ってるんだね。懐かしい。

でも、全く成長してない。変わらない、あの頃のまま。



変わらないのも、いいかもね。



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