才能が無い? いいから早く練習しろ
「それは無詠唱ね」
先日のグーズーと戦った時の事についてグアーラさんに聞くとこう答えられた。
今は野営訓練からの数日後だ。あの後また野営訓練を行い無事終了。
日常に戻ってきて日課である村長さんの所へ行き、グアーラさんへ魔法の勉強を見て貰いに来たのでこの前の疑問をぶつけた。
「無詠唱って事はそのまま詠唱無しで魔法を使える事と思っていいの?」
あるかな? とは思っていたがやはりあったか無詠唱。是非とも覚えたい。魔法の欠点克服に大いに役立つ。それに無詠唱魔法なんかファンタジーロマンそのままだ。
「ええ、そう思っていいわ。いつかはやると思っていたけれどずいぶん早かったわね。多くの魔法使い達が一度は通る道よ。
そしてあなたは次にこう訪ねる「どうすれば覚えられるの?」と。そして答えはこうよ。わからない」
「どうすれば覚えられるの……はっ!」
貴様、俺の心を読んで……いや、わざとだけどね。
そうか、わからないのか。困ったな。
「ノリいいわね。ありがとう。詠唱や呪文の一部を省略、あるいは改造して短くする短詠唱を使いこなせる人は少ないけどいるわ。でも無詠唱を自由自在となるとほぼ皆無といっていい」
ほぼ皆無、……結構絶望的なのでは無かろうか。無詠唱は諦めてさっき言っていた短詠唱の方へ切り替えた方が無難か? まぁ、まだ疑問は残ってる。質問を続けよう。
「自由自在はってことは、一部なら可能ってこと?」
「得意な魔法を1つだけ……みたいな例ならいくつか知っているわ。そのどれもが凄腕の魔術師だからあなたが参考にするにはまだ早いわね」
ぐぬぬ……、1つだけか。希望が無いことも無いのか? いやでも1つって。……しっかせえよ。
「でも、前例があるならそこから研究すれば出来るようにな……って無いってことは何か理由があるの?」
「その通りよ。無詠唱に関しては先人の知恵は借りれない。なぜなら共通点が無いから。
無詠唱を扱う魔法使い達はそれぞれが別々の技術を使って無詠唱を行っていたわ。そして誰もがその技術を真似ても再現出来なかった。つまり無詠唱は技術が重要なのではなく無意識で行っている処理、いわゆる勘こそが大事と言うこと。つまらない言葉だけれど才能と言い換えてもいいかもしれないわ」
絶望的じゃねえか。結局才能かよ。
いや、一度は使えたんだ才能が無いってわけじゃ……いや言ってたな、多くの魔法使いが一度は通るって。俺だけが特別ってわけでは無いのか……。
「わかりやすくがっかりしてるわね。残念でした。簡単に出来るわけないのよ。無詠唱は魔術の到達点の1つでもあるんだから」
「ん? 何それ初耳。どういうこと?」
「何でもかんでも聞くんじゃないわよ。少しは自分で考えなさい。
はぁ、そうね、魔術は魔力を扱う技術。そう教えたわね。技術と言うのは何も無い所からポンっと出てくるモノじゃなくて、多くの場合は元となるモノがあるわ。」
確かにそうだよな。コンピューターだって計算機が元なわけだし。その計算機だって最初は指で数えてたのを石なんかの物で代用したのが初まりだし。
「じゃあ魔術の元となったモノは何だと思う?」
魔術の元!?
えっと確か『強い願い』だっけ? いや違うな。これは魔法の起源。作ろうと思った動機であって、技術の原点ではない。願望だけで技術が出来上がるなら2次元の壁は絶対に超えられている。日本の変態共が成し遂げているはずだろう。
う~ん、なんだ? わからん。
「難しかったかしら? 魔法の起源の時にあなたが答えた答えが少しはヒントになるかしら」
魔法の起源の答え。え~と確か『神の奇跡』だっけ? なんかこれが答えっぽいけどヒントと言うことは違うんだろうな。なんだ? 本当にわからんぞ。
「神の奇跡の再現ですか?」
「神を信じてるのは信者だけよ。そんなあやふやなものじゃなくてもっと確かなものよ。
神聖魔法はどんな魔法だった?」
神聖魔法? それこそ神の奇跡の再現なんじゃ、……いや違う。正確には聖母が持つ力の再現だ。聖母自身はその力を神の奇跡だと言っていただけで神聖魔法を作った人達から見れば聖母自身の力だ。つまり……
「特別な力の再現が魔術の元」
「正解よ。歴史の中には聖母以外にも特別な力を持った偉人は多く存在するわ。山を崩し、海を開き、天をも裂いた剣聖ユーティライネン。
ある日突然現れ世界の様々な大災害を予言し被害を最小限に食い留めるよう尽力した予言者ジョーン。
4日で陸を、3日で火山を、2日で湖を、1日で森を、合計10日で島を作った大自然の支配者ローテッラ。
彼らの様な特別な能力を持った人間は魔法が出来る前にも後にも存在する。当然ね、彼らの力を再現しようとしたのが魔法なんだから。
じゃあ、話しをはじめに戻すわよ。もし無詠唱で、つまり呪文を使わないであらゆる魔法を自由自在に操れる人をはたから見ればどう見える?」
自由自在だから……。立っているだけで何も無いところから炎が燃えて、地面が勝手に隆起して、好きなだけ水を湧かせて、都合のいい風だけが吹き、どんな怪我も独りでに癒えていく。これら全てが、いやこれ以上の現象が思うがまま。
「同じ人間とは思えませんね」
いや、でも呪文を使って魔法を使用しても同じような結果出せるんならやっぱり大した違いは無いんじゃないか?
……やっぱそんなことねえな。原子を操れる青い肌の全裸超人と昭和の魔法少女ぐらい違う。
「でしょ。無詠唱と言うのはとどのつまり、呪文を用いないで魔法を行使する事とほぼ同義。魔力を自分以外の、何か別の手助け無しで操る事に他ならない。ならそれは、特別な彼らが行っている事と同じことよ。結果の大小はあるけれどもね。
以上が、今の魔術業界が持っている無詠唱魔術についての見解よ。また1つ賢くなったわね」
想像していたよりもずっと重たい話しになってしまった。やはり無詠唱は諦めた方が良いだろうか。
う~ん、でもなー、あの速さはかなり強力な武器になる。諦めたくないな。でも方法がわからないしな。
「そんなに諦めきれない? 魔術研究者としては諦めずに研究して成果を出して欲しいところではあるわね。
なら1つアドバイスをしましょうか。無詠唱魔術、呪文を用いない魔術。これは自己完結している魔術と言える。つまり、これは自分の内の話しだから魔術を技術として捉えるのではなく、感覚として捉えた方が良いのでは。と、私は考えている。」
「感覚……ですか」
えー、つまり……、どういうこと?
「つまり、よう練習ということよ。上手に扱えない魔法は反復練習あるのみ。あなたは一度、自らの意思では無いけれど無詠唱魔術を使えた。だからその時の感覚をよく思い出して反復練習。魔力の流れはどうだった? その時は何を考えて魔法を使った? どんな魔法をどういう風に使ったの? よく思い出して何度も練習する。それしか無いわね」
うげ~、結局それかよ。まぁ、そりゃそうだな。誰も出来てない事をするんだから手探りにもなるな。完全なノーヒントでは無いのだから多少はマシと言えるのかな?
グアーラさんが急に立ち上がり片付けを始める。
「私、この後用事があるのよ。まだ質問があるなら明日にしてちょうだい」
「わかりました。いろいろ試してみることにします。ありがとうございました」
「どういたしまして。がんばってちょうだい、期待してあげる」
俺とグアーラさんは部屋を出てそのまま別れ、いつものように練習場に行って魔法の練習を行うことにした。
結局その日は一度も無詠唱で魔法を使うことは出来なかった。当然といえば当然だ。
魔法を上手に扱うよりも、魔力コントロールの方を意識した方がいいのだろうか。
魔力コントロールの練習ならこの前新しく覚えた変異魔法『色化』が非常に役に立つ。
これは魔法に任意の色を付けれる魔法だ。紫の火とか赤い水、黒い風に白い土、こんな感じで対象の魔法に好きな色を付けることが出来る。威力? 変わんねえよ。色付くだけだよ。
任意と言っても自分が付けれる色しか付けられない。さっき言った赤い水なんかはイメージ元となるものが多く、簡単に想像出来る。トマトジュースとかね。
逆にイメージし難い物は失敗してしまう。例えば虹色で燃える炎とか。7つの炎にそれぞれ別の色を付けるなら出来るが同時は無理だった。
じゃあこの色付。なぜ役に立つかと言うと、色付の呪文の順番を先にして対象の魔法を使用すると対象の魔法だけでなく使用される魔力にもうっすらと色が付き、魔力の流れを視認する事が出来た。
この事に気づいたのは偶然で、色付の練習中に間違えたのが切っ掛けだ。普段ならそのまま何も起きないがその時は誕生日で貰った杖を使っていたので、おそらく杖補正でギリギリ発動出来たのだ。
その時に色が付いたもやが見えたのであれこれやってみたら魔力だった事が分かった。
これのおかげで今まで見えてなかった魔力が視認出来たので魔力コントロールの練習がしやすくなった。
なので魔力コントロールに関しては上達の目星が付いている。これからはこっちも十分意識して練習を行っていこう。
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「さあ、マキナ。森についてらっしゃい。勝負よ。」
朝ご飯を食べ終えサリー母さんが村へ用事があるらしく村へ行った後、突然エイリに決闘を申し込まれた。
いきなりなんじゃこいつは。
「やだよ。何? いきなり。俺喧嘩になるようなこと何かした? 昨日勝手にペン借りたことを怒ってるの? それなら悪かったよ、ごめん。でも、エイリ姉さんこの前、僕の分の蜜漬け勝手に食べてたでしょ。知ってるんだよ。」
ちょっとだけ楽しみだったのに。いや、別にこの程度で怒ったりはせんよ。ちょっとだけ楽しみにとっておいただけだから。……はぁ。
「え!? あれ余ってるんだとばかり。ごめん。いやいや、違うでしょ。そうじゃないでしょ。
マキナ、あなたは年上に対する敬意が足りないのよ」
そうか? グアーラさんやヨニーさんだけでなく大人にはみんな敬語で話しているし、挨拶も忘れない。失礼なこともそんなに言ってないしそんなことないだろ。子供で敬語使ってんの俺だけだぞ。
「それよ、それ。その『なに言ってんのこいつ』って顔。とても年上に向ける顔じゃないわよ。お姉ちゃんのすごさ思い知らせてあげるから外に出て勝負なさい」
なに言ってるんだこいつ。……あー、そういえば前にグアーラさんにも似たような事言われたことあるな。そんなに人を小馬鹿にしてるような顔をしてたのか。それは俺が悪いかもしれんな。
「その事については謝るよ。だからさ、いきなりそんな実力行使みたいなことしなくても、まずは話し合いとかから始めようよ。他にも何か良くない事があったんなら直すし。それに今日の修行はどうしたの?」
今のエイリは弓矢も剣鉈も持った完全フル装備だ。まずは落ちつかせて武装を解除させなくては。
「休みよ。1日ね」
……さいですか。
「いや、ほら、俺、村長の家行かなきゃだし」
「1日ぐらい休んでも大丈夫よ」
人事だと思ってこいつ。まぁ、大丈夫なんだけど。この前の野営訓練だって休んでるわけだし。それにあれは強制じゃない、基本的に自由参加だ。
「ぐずぐず言わないで早く外に出る」
地団駄を踏んでご立腹だ。マズい。これ以上怒らせるわけには。
「わたった、わかったよ。準備してくるからちょっと待ってて」
「(よしよし、作戦成功ね)」
エイリが後ろでしたり顔で何かつぶやいている。なんだ?
仕方なく杖を取ってきて準備を始める。ローブも着てこようかな? 何かの魔物の皮を基調に出来たローブなので少しは防御力が上がるかもしれん。
材料の調達から裁縫まで全てサリー母さんのお手製だ。この前の魔物に襲われた事で心配になってるらしく森に入るときは必ず着せられる。フード付きなので頭まで守れるのだ。流石に火の季節にこれは少し暑いんだよな。まぁいいや。着て行こう。
準備を終え戻ると満面の笑みで仁王立ちしたエイリ待っていた。機嫌良さそうだな、おい。
「準備できたのね。あれ? ちょっと軽装すぎない? ホントにそれでいいの?」
いいも何も剣とか弓は持てないんだって知ってるだろ。武器になるのは杖しか無いんだよ。
「これでいいよ。エイリ姉さんこそ随分しっかり装備持ってるね」
「当たり前じゃない。これくらい当然よ。準備が出来たのなら出発よ。(今日こそ姉の威厳を取り戻してみせるわ)」
随分やる気に満ちているようで。お互い怪我の無いようにせんと。
せめて喧嘩するなら武器はなしの方向に持って行かんと洒落にならん。
喧嘩なんかしたくないのに。……はぁ、気が重い。今日は厄日だ。
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程なくして森の入り口に到着。いつもサリー母さんとエイリ達が狩りに向かう時に使う場所だ。
「じゃあルールを説明するわ」
ルール? 問答無用のデスマッチでは無いのか。
よかったよかった。じゃあここでせめて喧嘩するなら素手でするようになんとか説得しないと。
「今から日が沈み前までにどれだけ多くの獲物を狩ってこれたかで勝負よ」
「喧嘩するならやっぱり危ないから武器はやめようよ。僕も魔法使わないように……え? 狩り?」
勝負って決闘じゃなくて狩り勝負ってこと?
「そうよ。狩り勝負。なんだと思ってたの?」
「いや、武器で相手をぶちのめす決闘だとてっきり」
「そんな危ないことするわけないじゃない! 蜜漬け勝手に食べたのそんなに怒ってたの? 今度私の分少し分けたげるから機嫌直してよ」
少しかよ。あなた半分くらい俺の分食べてましたよね。別に怒ってないし分けてくれなくてもいいよ。
そうか、狩り勝負なら俺の装備はすこし軽装すぎたかもしれない。ローブと杖以外何も持ってきてない。せめてナイフくらいは持ってくるべきだった。
「じゃあ、もう一度言うわね。日が沈む前までに狩りをしてここに集合。狩ってきた獲物で勝敗を決めるわ。準備はいい?」
「いいけど、僕1人で狩りするの初めてなんだけど」
「いいのね。今日こそお姉ちゃんの凄さ思い知らせてあげる。それじゃあ始めるわよ。よーい、スタート!」
始まったとたんエイリは森の中に走って行ってしまった。1人で狩りするの初めてだって言ったんですけど無視ですかそうですか。
まぁ、これでも猟師の息子だから知識が全くないわけではないし、手探りだがやるだけやってみよう。
この辺りは村の猟師が危険な魔物は狩りつくしていると聞いているので比較的安全なはずだしなんとかなるかもしれん。
俺は森に入り、聞きかじりの知識をあてにして狩りをしてみることにした。
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今は大体お昼をすぎた辺り、折り返し時刻くらいだろうか。
獲物である角の生えたウサギの様な魔物であるホーンラビットを見つけたので息を潜め近づく。
これで3度目のチャンスだ。1度目と2度目は逃がしてしまったのでまだ0匹。
でも何がいけなかったのかはさっきの時に分かっている。次こそは……。
ゆっくり、ゆっくりと慎重に距離を縮めていき、やっとストーンバレットの射程内に入った。
よし、俺は詠唱の準備に入る。
「大地のかけら、その力」
ホーンラビットの耳がぴくりと動き顔をこちらへ向けてくる。クソッ、バレた! 急ぎ詠唱を完成させる
「我に貸し与え給え。ストーンバレット」
獲物を狙いストーンバレットを発射させようとするが、すでに相手は走り逃げている。
急いで発射するがはずれる。足が速く体の小さな魔物が全力で逃げているのだから当然、当てれるわけもなく無惨にも逃げられてしまった。
3度目の失敗。1度目も2度目も全く同じだ。
原因なら分かっている。魔法だ。
魔法を詠唱するには声に出して唱えないといけない。この声で俺の存在がバレてしまっている。
じゃあ小さく唱えればいいのでは? と、疑問に思うだろうが問題がある。簡単だ。小さすぎれば魔法が発動しないのだ。呪文を詠唱して魔法を発動するのだから、ボソボソと小さな声で唱えていては正しく発動しない。
魔法に責任があるみたいに言っているが、ようは俺の技量不足が原因だ。
口の中で留めるようなボソボソ声で詠唱すると、不完全ではあるがいちおう発動する。だがとても仕留めきれるようなモノでは無いので意味がない。
つまり発動に時間が掛かる魔法の欠点がモロに原因だという話し。
失敗の原因がはっきりしているので後はその対策を考えればいいのだから悲観することは無い。次がんばればいいのだ。よし、がんばろう。
……無理だ。できるわけがない。これの対策をするために、この前グアーラさんに無詠唱について聞いたのだ。
そしてその無詠唱はまだまだ使えない。完全に詰んでいる。
日が沈みまではまだある。すでに敗色濃厚だがもしかしたらまぐれで1匹くらい狩れるかもしれない。
そんな淡い期待を胸に抱き次の獲物を探して森に潜っていく。
諦めたら試合終了だとタプタプの監督も言っている。もう少しがんばってみよう。
…………いや、やっぱり無理だろこれ。
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「お疲れさま、マキナ。どうだった? 初めての狩りは楽しかった?」
ニコニコした顔のエイリが俺の目の前にいる。ずいぶんうれしそうだ。きっと良いことでもあったのだろう。いや、まさに今、良いことが起こっている真っ最中なのだろう。クソ。
「そうだね、楽しかったよ。たまには良いもんだね、獣と一緒に思いっきり走り回るのも」
「そうでしょ。マキナはいっつも家で本読んでるか、魔法の練習してるもんね。たまには思いっきり楽しまなきゃ。
じゃあ、結果発表をしましょうか。まず私からね。じゃじゃーん、私はホーンラビットを3匹よ。凄いでしょ」
そういって握っていたホーンラビットを俺の前に突き出してくる。おい、耳を握ってやるなよ、かわいそうだろ。いや、死んでるんだけどね。それでもその扱いはちょっと……。
「じゃあ、マキナの成果を見せて貰いましょうか」
ニマニマしながら俺に結果を報告するよう要求してくる。この野郎……、見たら分かるだろうが。
魔物の死体なんて例え小柄な物でもそうそう隠せるもんでもない。結果なんか一目瞭然だ。
「0だよ」
「え、何? 声が小さくてよく聞こえなかった。もう一度お願い」
「0匹だよ! 1匹も仕留められなかったよ!」
「やったー! 3対0。勝負は私の勝ちね。残念だったね、マキナ。まぁ、これでも私、サリーさんの一番弟子だし。村の子供達の中でも優秀な方だし。当然の結果よねー。
これで分かったでしょ。お姉ちゃんの凄さが。私だってやればできるんだから」
エイリがめっちゃいいドヤ顔で勝利宣言している。いやー、彼女が楽しそうでなによりだ。
俺は人助けをすると決めているんだし、みんなが笑顔になるのは良いことであって、決して悪いことのはずがない。だから俺だってうれしい。なので決して悔しくなんか無い。よかったよかった。みんな幸せだ。
「決着が付いた事だし帰りましょうか。今日はお肉食べ放題だね。
もう、ほらそんなに落ち込まない。モモの部分好きでしょ? 私の分わけてあげるわね。そうだ! 今度教えてあげましょうか? 狩りのコツ。まずね最初にね、相手に気づかれないようにコッソリ……」
その後2人は仲良く家に帰ってサリー母さんのおいしい夕飯に舌鼓を打ちながら仲良く夜を過ごしましたとさ。めでたしめでたし。
……おぼえてろよ、この野郎。