始動Ⅴ
同日 20時40分
携帯が通じない。
固定電話も通じない。
大規模災害ならまだしも、たかだか暴徒が発生したくらいでここまでの被害が出るだろうか?
しかも何故朝から続いていた筈の暴動が夜もだんだんと深くなってきた今でもまだ鎮圧出来ずにいるのか。
ましてや何らかに不満を募らせた暴徒がわざわざ電話回線を切断したり、通信所を襲撃したりするのか。
ここら辺がは俺の暴動のイメージとは全く異なっていた。
同日 21時18分
誰も口を開かない静けさの中、壁掛け時計の音だけが空間に木霊する。
先程は彩乃と信二に電話が全く繋がらない事を伝えると、二人も各々の携帯で通信を試みた様であったがどれも繋がる事はなく、単なる徒労に終わった。
そして信二も一人は不安だからと俺の家に泊まることになり、俺と信二は二階の自室に、彩乃は部屋の隣の客間に寝る事になり、俺は客間と自室の床に布団を敷いてあげ、それぞれ早めに寝る事にした。
同日 21時42分
信二は先程の疲れで布団に入るなり眠ってしまった様だ。
だんだんと俺も瞼が重く感じてくる。
俺は睡魔に逆らわず、ゆっくりと目を閉じて意識の奥底へと墜ちて行った。