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崩壊Ⅴ

20×1年 4月16日 12時15分



良い匂い、久しぶりの食事にありつける。

しかもエプロン姿の彩乃の後ろ姿をソファーに座って眺めていると待ち時間も苦にならない。

ただ一つ、隣に座って気持ち悪い笑顔を浮かべたこいつが妙に茶化してくること以外は。


「なあなあ、お前彩乃とはどうなの?」


「どうなのってお前なあ、こんな時にそんなこと……」


「はあ!?馬鹿かよ、こういう時に吊り橋効果を狙って仕掛けるんだよ、分かってねえなぁ……早くしなきゃ俺が貰っちまうぞ」


真の馬鹿は恐らくお前だ、信二よ。

俺だって無知な訳ではないので吊り橋効果くらい知っている。

多分誰でもどこかで聞いたことはあるかと思うが、男女が危険な状況に陥ると恋愛に発展しやすくなるという心理効果のことである。

しかしながら、情けないが俺は今までの状況の変化を頭の中では理解できていても、まだ違和感しかない。

心が状況の変化についてきていない。

だからある意味、信二の能天気さはこういう状況では強みになるのかもしれない。

しかし、こいつのつまらない冗談は割愛するとしても、最後の台詞の時、一瞬だけ信二の顔は本気に見えた。

気のせいだろうか、冗談だとは思うが。




同日 12時57分



「旨かったな……食った食った、腹がきつい、もう入らん」


「そりゃあ人の分まで食えばな……」


「涼介君、食べすぎだよ……」


先ほど茶化された仕返し代わりに信二の分の飯も3分の1ほど食ってやった。

信二に彩乃の作った食事などあまりにも釣り合わない、というよりも彩乃の手料理を他の男に食べられたくないというあまりにも幼く小さな嫉妬である。

実は先ほどの信二の発言も冗談と分かっていながらも、少し真に受けてしまったところもあった。

しかし親友にすらも嫉妬する自らの器の小ささに少し情けなさを覚えたが、少し勝った気分にもなった。



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