崩壊Ⅳ
20×1年 4月16日 10時32分
「何の音だ!?」
二式小銃の発砲音に驚いた信二と彩乃が階段を駆け上がり、ボルトを引いて排莢を行う俺に信二は怒鳴るように問う。
「じいさんの遺した銃を試射してみただけだよ、なかなか使えそうな逸品だ」
「すっげえな、本物かよ……」
信二は俺の持つ二式小銃に興味津々のようだった。
男ならば一度は経験があるだろう、幼少期や少年期にはほとんど必ずと言って良いほどに男子は銃や兵器といった荒々しく力強いモノに憧れを抱く。
しかしこれもまた必ずと言って良いほどに母親は“そんな危ないもの”という固定観念によって銃や兵器から子供を引き離す。
これは俺個人の考え方だが、最初から銃や兵器は危険なのではなく、危険な人物が持つ事によって初めて“そんな危ないもの”になるのではないだろうか。
事実“そんな危ないもの”を持った軍隊が国民を傷付けるといった例はせいぜい時代遅れの独裁国家くらいしかない。
「まあいい、それよりも今日の分の飯はあるんだろうな?
こんな変なことが起こってる中で買い物なんか御免だぞ。」
「心配するな、倉庫には缶詰がたくさんあるし、台所の床下収納にも地下室の冷蔵庫にも食い物ならたくさんある。」
「あっ、なら今日は私が作ってあげるー」
(こいつ、神妙な顔して何を聞いてくるかと思ったら飯のこと考えてやがったのか……しかしまあ彩乃の手料理は楽しみだな)
信二の食料への心配は杞憂に終わったが、俺としても後々のことが少し不安になってきた。
食料の問題は一度3人で真剣に話し合わなければならないだろう。
だが今は彩乃の手料理を食べられることを素直に喜んでおこう。




