表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
退職した最強の神様、古代世界で人として暮らす〜狼とゾンビに抗い、村を守るために戦います〜(WEB版/原題:月宮奇譚1 狼と骸の王)  作者: いふや坂えみし
終章 未来

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/55

第八話 だって子どもでしょー?

 ヤネリは川岸で背中を丸めて座り込み、わかりやすく落ち込んでいた。タルケに八つ当たりしたのはわかっていた。だからそれを止めたタカハも間違っていない。(にら)みつけたのは筋違いだ。家族を殺したのはタルケではないし、狼の群れが村を襲ったことにまだ小さかったタルケがなんの影響も与えなかっただろうことはわかっていた。だけど感情を制御することができなかった。何も言わずに稽古の途中で飛び出してしまった。ヤネリはため息を()く。


「ヤネリー。落ち込んでんなー」


 ヤネリに声をかけたのはウチナリだった。


「先生。仕事はどうしたの?」


 ヤネリの声は重い。


「おぉ、優秀な部下がいるから心配すんな。お前こそ稽古はどうした?」


 ウチナリの工房では、意識を取り戻したオトヤとアズサが手伝いをしていた。鍛冶の腕はそうでもないが、力仕事が得意なのでウチナリの負担は軽くなっていた。


「……さぼった」


 ヤネリはウチナリと目を合わせることができない。


「悩みがあるなら聞くぞ。なんでも言ってみ」


 ウチナリは意識して口調を軽くする。


「……タルケがね。狼なんだって」

「うん」


 ウチナリはとりあえず自分の考えは挟まず、ヤネリの思いを聞くことにした。


「さっちゃんも、ひゅーちゃんも、お父さんも、お母さんもみんな、狼に殺された」


 ヤネリは、まだ瘡蓋(かさぶた)になっていない()り傷に触れたような顔をする。


「うん、そうだな」


 家族ぐるみの付き合いをしていたウチナリにとってもまだ()えていない傷だ。


「タルケのお母さんは、狼の長だったんだって」


 ヤネリの考えはまとまらない。思いつくままに言葉にしていく。


「そうなのか」


 ウチナリも村の噂は知っていた。だが、真偽の(ほど)はわからないし、たとえそれが本当のことだったとしてもタルケには責任がないと考えているので、確かめようとも思わない。


「そうなんだって。ぼくもね、タルケがみんなを殺したんじゃないってわかってるよ」

「うん」

「でもね、どうしたらいいのかわかんないの」


 ヤネリがタルケをかわいがっていることはウチナリも知っている。噂を知ってタルケへの態度を決めかねているのは今の率直な心情だろう。


「タルケのこと嫌いになったのか?友達なんだろ?」

「嫌いになってないよ。タルケは友達だよ」


 そう即答できるなら、あまり心配することもないのかもしれない。


「うん、そうか……タルケー!なんか言うことあるかー!?」


 ウチナリが振り向くと、タルケとナギが姿を現した。ウチナリのもとへ来て、匂いを辿(たど)ってヤネリのもとへ案内したのはナギを背に乗せたタルケだった。ヤネリとウチナリから離れたところで待っていたが、タルケの耳に二人の声は届いていた。昨日まで優しかったヤネリに敵意を向けられ、タルケも戸惑っていた。


「ヤマク村の人が群れの仲間を殺したから、母様は群れを指揮してヤマク村を襲ったんだよ。あいつは、狼を殺すことを楽しんでたみたいだった。僕も命を狙われたよ。仲間が(かば)ってくれたから逃げることができたけど」


 狂っていたタオツキはオオシの群れを襲い、タルケを殺そうともしていた。


「それは……」


 タルケとヤネリはそれぞれのいた場所が違うだけで、同じ境遇だった。だからヤネリはタルケの気持ちがわかるような気がした。


「タルケは、ヤマク村の人たちが憎くないの?」


 ヤネリは家族を殺した狼を許すことができそうになかった。


「負けたらしょうがない。死ぬだけだよ。母様を殺したやつは許さないけど。でもそうだな。群れを狙って襲ってきたら、許さないかな」


 強いものに負けるのはしょうがないとタルケは考えている。だが、群れの敵には、たとえ敵わなくても立ち向かわなければならない。


「そっか……」


 かつてヤマク村を襲ったのは、タルケのいた群れ全体らしい。タルケの考え方なら、村を襲った狼たちの一員だったタルケを許さなくてもいいということになる。


「でもぼくは、タルケのことを嫌いになりたくない」


 まだ家族を殺されたことについて、自分の中で消化できない。それでもタルケのことだけなら、これからも友達でいたかった。


「ならどうする?」


 ウチナリがヤネリに尋ねる。


「……ごめんなさい、タルケ。八つ当たりしちゃった。許してくれる?」


 ぶつけようのない感情をタルケに向けて叩きつけてしまった。ヤネリはタルケに怒っていたわけではない。


「いいよ。……ヤネリ、傷つけないように注意したけど、腕は大丈夫?」

「うん、傷ついてないよ」


 ヤネリがタルケの首に抱きつくと、ナギがヤネリの頭を()でた。


「もー!なっちゃんはぼくのこと子ども扱いしないでよー!」

「だって子どもでしょー?」


 稽古の時からはらはらしながら様子を窺っていたが、ナギはヤネリとタルケが仲直りして安心する。


「なっちゃんだって子どもだよ!」

最後まで読んでくださってありがとうございます!

ブックマークと評価をいただけると励みになります。続きを読みたいと思っていただけたら、ぜひよろしくお願いします。


↓X(旧Twitter)

https://x.com/zaka_blog


↓個人ブログ

https://zaka-blog.com/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ