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退職した最強の神様、古代世界で人として暮らす〜狼とゾンビに抗い、村を守るために戦います〜(WEB版/原題:月宮奇譚1 狼と骸の王)  作者: いふや坂えみし
終章 未来

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第二話 ここでお別れだ。

 隠舟(かくれぶね)が山を登るほど寒さは増していったが、隠舟の中でオキヒが炎を浮かべ、(だん)を取ることができた。タルケは毛皮で覆われているため寒さを感じていないようで、イセイは羨ましく感じた。タルケを抱いているとそこから熱が伝わってきて暖かい。オキヒも炎を(つかさど)っているからか、あまり寒くなさそうだ。


 少し遅い朝食を終え山の(ふもと)から出発していたが、今はすでに日が傾き始めている。まだ山頂は遠いようだ。それでもだいたい八合目あたりまで辿(たど)り着くことができた。五合目を越えた辺りから背の高い木はなくなり、苔桃(こけもも)虎杖(いたどり)などの、背の低い植物が見られるようになった。イセイとオキヒはこれ以上進むことをやめ、ここで休むことにした。


 翌朝は日の出前に出発し、日が高くなる前に山頂へ辿り着くことができた。イセイはタルケを抱いて隠舟を降りる。(ふところ)から千里勾玉(せんりのまがたま)を取り出し、山の(いただき)に据える。勾玉は一瞬だけ淡く輝き、半分ほど土に埋まった。


「タルケ、この勾玉は世界を見渡すもので、山の守護者としてあなたが守るものになります。よく覚えておくのですよ」


 イセイはタルケを抱き上げて言い聞かせる。


「わかった」


 タルケはイセイの腕を抜け出し、勾玉に鼻を近づけてくんくんと匂いを()いだ。


 それから一行は下山を開始し、その日の日暮れ前には(ふもと)にたどり着いた。二人と一匹がシキの小屋へ戻ると、ミヒルは歩けるくらいまで回復していた。


「イセイ、道中無事でしたか?」


 ミヒルはオキヒとイセイを見比べる。


「はい、妙な獣にも出遭(であ)いませんでした。無事に神器を備えることができましたし、タルケも幼いながら管理者としての自覚があるようですよ」

「……そうですか」


 イセイはミヒルから探るような視線を感じる。少し気になったが、病み上がりのためか、と思い直す。


 ミヒルとイセイ、シキ、オキヒ、タルケは、村へ戻ることにした。



 村長宅にまた、一行は泊まることになった。村長宅に入ると、生まれたばかりのマホを背負ったナギが一行を出迎える。


「おねえちゃん誰?」


 ナギがシキに会うのは初めてだった。シキを見つけてにっこりと笑う。ナギは年の近い女の子を見つけて嬉しかった。


「えーと、私は……」


 シキは村長宅に行くとは聞いていたが、クハラとムスビの二柱とも元は神だったのでまだ偽名を考えていなかった。


「おねえちゃん、なんで目隠ししてるの?」


 純粋な目で見つめられると正直に答えなければならない気になる。


「見えすぎて困るから……」


 つい口がすべったが、知られて困るようなことでもなかった。


「ふーん。その(ふく)きれいだね。わたし見たことない」


 ナギはシキに興味津々(きょうみしんしん)だった。


「これはミヒルとイセイの故郷にある(ふく)で、向こうでは一般的なんだ」


 その後もシキはナギにお姉ちゃんお姉ちゃんと付きまとわれ、珍しく少し戸惑っていた。ナギのつきまといはイセイの腕の中で眠っているタルケに気づくまで続いた。


 タルケは村長宅の敷地に犬小屋を作ってもらい、そこに住むことになった。タルケの年齢は人間でいうと五歳くらいで愛らしい姿である。ワケノとタカハの娘のナギが、すぐにあれこれと世話を焼き始めた。狼とはいえ、仔犬のようなものだった。タルケが人の言葉を話し、体毛が灰から朱色に変わっていたことも、狼への連想を遠くすることになった。イセイの眷属となった後は、タルケの体毛は陽の光に当たると淡く光り、神々(こうごう)しい印象を与えるようになっていた。



 ウチナリの養子となったヤネリはウチナリから鍛冶を学んでいる。また、自らワケノとタカハに頼み込み、村長宅へ通って戦う術も学び始めた。家族を失ったことで思うところがあったのだろう。


 ミヒルとイセイは、ミヒルが十分に回復するまでの間、村長宅で食事や衣服の作り方、家の作り方、狩りの方法など人間の暮らしを経験した。この経験はこれからどのような神を生み出していくかの指針となるだろう。


 そんな生活を続けているうちにミヒルの足は怪我をする前のように動くようになった。そのため、ミヒルとイセイ、シキは最後の神器を備え付けるため、村長宅を後にすることにした。ナギに抱かれていたタルケは、イセイの足にまとわりつき、


「イセイさま、またきてね」


と寂しそうに(つぶや)く。イセイはタルケの首筋をなでた。


「わたしは天で生きる身だから、次に地上に降りてくるのはしばらく先になってしまうわね。でも、わたしとあなたはつながっているから、またいつか必ず会えるわ。立派な神獣になってね」

「うん。なる。……ミヒル、おまえはもうくるな」


 タルケの一生懸命な威嚇(いかく)にミヒルは苦笑する。


「……気をつけるよ」



「僕は、水とは相性が悪いからね。ここでお別れだ。もう少し、地上を見て回ることにするよ。気になることもあるしね」


 ミヒルとイセイはこれから海に向かうとのことだったので、オキヒはここで別れることにした。それよりも、冥界を作った夜に感じた気配が気になっていた。あれは、ウジの気配ではなかったか。この世界を生み出した、ホムラと同格の神。ウジが、地上にいるのかも知れない。

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