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退職した最強の神様、古代世界で人として暮らす〜狼とゾンビに抗い、村を守るために戦います〜(WEB版/原題:月宮奇譚1 狼と骸の王)  作者: いふや坂えみし
第四章 狂い人

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第十二話 絶対に死なせたりしない

 空が明るくなり始め、まもなく夜が明ける。タオツキとタカハは激しく撃ち合っている。タカハの袈裟(けさ)斬りを受け流したタオツキはその流れのまま逆袈裟に斬り上げる。タカハの脇腹を刃が(かす)め、タカハは大きく体勢を崩して逃れる。


「惜しかったな」


 にやりと笑ってタカハは剣を上段に構える。


「そっちこそ。さっきまでの余裕はどうした」


 タオツキは剣を正眼に構える。そのまま両者の動きが止まる。守りを捨てたタカハの構えと、攻撃の一瞬を見極め、返しを狙うタオツキ。お互いに相手の動きに極限まで集中する。


 両者が動き出す。


「タカハさん、待って!」


 ヤネリとヨミヤを連れ戻してきたツグノが、タオツキを(かば)うように二人の間に割り込む。驚いて動きを止めるタカハ。割り込んできたツグノを背中から刺し貫くタオツキ。口から血を流すツグノ。


「ツグノ!」


 タカハが叫ぶ。


「……ツグノ?」


 聞き覚えのある名に、タオツキは胸騒ぎを覚える。刺し貫いた女がゆっくりと倒れていき、思わず肩を支える。タオツキの手にはなぜだか力が入らない。朝日に照らされたその顔を見て、全身から汗が吹き出す。


「……タオツキ、さん。私の命は、もともと、あんたに救われたものだから、気にしないで。でも、戻ってきて。あんたは、村のみんなを傷つけられるような、そんな人じゃないだろ?」


 ツグノは血を吐きながら(ささや)いて、微笑む。どくん、とタオツキの心臓が脈打つ。タオツキの脳裏(のうり)にツグノとの思い出が一瞬で湧き上がり、続けて自分が何者なのか思い出した。


「……ああ、ツグノ、さん」


 タオツキの目から一筋の涙が流れ落ちる。


「絶対に死なせたりしない」


 深呼吸し、背中から腹へ突き抜けた剣を慎重に引き抜く。それから両手の掌から鞭を伸ばし、ツグノの傷口を鞭で埋める。その鞭を斬り落とすと、鞭はツグノの身体に馴染(なじ)んでいった。浅くなっていたツグノの呼吸は深く落ち着いたものに変わる。それを確認してタオツキは大きく息を吐いた。


「タオツキ」


 タカハの呼びかけにタオツキは顔を上げる。


「申し訳ありませんでした、タカハさん。みんなを止めます」


 タオツキが命じるとオトヤやアズサ、他の狂い人たちも動きを止めた。ウチナリとワケノも事態の変化を察し、まだ警戒は()かずにこちらの様子を(うかが)っている。


「こいつら全員、お前の命令に従ってるのか」


 タカハに問われ、タオツキは考える。


「俺に与えられた何かに、従っているのだと思います。俺自身、頭の中にいる何かの声に従わなきゃいけない気がしているんです」


 タオツキは話しながら自分の言葉を探している。


「それはまだお前の中にいるのか」


 タカハもタオツキの真意を見抜こうと集中する。


「はい。ツグノさん……とタカハさんのおかげで、俺は昔の自分を思い出しましたが、まだ何かがいるのは感じます」


 タオツキの状態がどのようなものなのか、タオツキ自身にもはっきりと断言できない。


「そうか。お前は……いや、お前の身に何が起きたんだ」


 タオツキにもわからない、ということは感じたので客観的な事象を尋ねる。


「最後に覚えているのは、いつもみたいにツグノさんが俺の家に食事を持ってきてくれて、帰っていったことなんですが。そのあとは、何か……いえ、思い出せないです」


 二人のもとにワケノがやってくる。ウチナリはヨミヤを連れたヤネリに話しかけているようだった。


「タオツキお前、まともになったんなら狂い人たちをもとに戻してくれないか?」


 ワケノの思考はいつも直截(ちょくせつ)的だ。


「ワケノさん……申し訳ありません。俺はもとに戻す方法はわからないんです」


 タオツキはすまなそうにするが、ワケノはとくにがっかりしたように見えない。


「ま、そんな簡単にいかないか。お前にできることはなんだ?」


 まっすぐ向けられたワケノの眼光に射抜かれ、タオツキはたじろぐ。ワケノに見つめられるといつも嘘やごまかしをしてはいけない気にさせられる。自分が行った非道の償いはしなければならない。


「俺にできることは、頭の中で念じた命令に従わせることです。俺は頭の中にいる何かに、いつも自分の眷属を増やせと命じられていました。俺の体から生えてくる鞭みたいなものを人に刺すと、必ずではないですが俺の眷属になります。死体は俺が操ってる感覚があるので、操るのを止めたら元の死体に戻ると思います。生きたまま眷属にした人たちは、やっぱり俺みたいに頭の中で眷属を増やせと命令されているのかもしれません。俺の命令を解釈して動いている感じがします。俺は記憶が戻ったので、もしかしたら以前の思い出に訴えかけたらもとに戻るのかもしれません」


 思いつくままにタオツキは答える。自信はないが、間違いとも言い切れない。


「タオツキ、今のお前は昔のままなのか?また狂ったりするのか?」


 タカハの問いに、タオツキは(まゆ)(しか)める。


「違うものになったと思います。……俺、生肉を食べてましたし。俺に命令してくる何かに対しては、俺が俺でいる限り抗える気がします」


 タオツキの答えにワケノは考える。


「それじゃ、とりあえず亡くなった狂い人はまた甕棺(かめかん)に戻すとして。生きてる狂い人は、近くにまとめて様子を見てみるか」


 正解かどうかはわからないが、方針を決める。何か起きても対処できるように気をつけていれば、そこまでひどいことにはならないだろう。


「お母さんはどうなるの?」


 そこにいた全員が虚を突かれる。ヨミヤと手を(つな)いだヤネリが不安げにワケノを見上げていた。

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