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退職した最強の神様、古代世界で人として暮らす〜狼とゾンビに抗い、村を守るために戦います〜(WEB版/原題:月宮奇譚1 狼と骸の王)  作者: いふや坂えみし
第四章 狂い人

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第九話 ようやく現れたな

「タカハさん、たくさん来た!狂い人だ!」


 警備をしていた村人が(あわ)てて戻ってきた。ワケノやウチナリたちは逃げ遅れを探しに出ていてここにはいない。


「ツグノ、片付けはもういい。高床倉庫(うえ)に上がれ!」


 タカハは警戒を強める。


「わかった!」


 ツグノは一緒に片付けをしていた村の女たちに高床倉庫へ戻るよう伝える。


「お前たち、持ち場に戻れ!」


 叫んで報告に来た男の声が聞こえたのだろう、村長宅を囲んでほぼ等間隔に二人一組で配置されていた警備の男たちが集まってきていた。タカハは伏兵の可能性を考え、配置は変更しないことにする。そのうちワケノたちも戻ってくるだろう。タカハの目にも狂い人の集団が見えてきた。二十人くらいだろうか。


「絶対に無理はするな!命を守ることだけ考えろ!」


 タカハは先頭に立ち、()を構えた警備の男たちに命じる。彼らは普段、畑を耕したり鉱石を掘り出したりしていて、戦いに関しては素人(しろうと)だった。


 高床倉庫へ戻ろうとしたツグノは、村長宅のそばでヨミヤと一緒にいたヤネリがいなくなっていることに気づいた。村長宅に近づくと、(ほど)かれた縄が落ちている。ヤネリが解いたのだろうか。


「ナベナさん、ちょっとヤネリを探してくる!」

「危ないよツグノちゃん!」

「そんなに遠くへ行ってないはずだから、すぐ見つけて戻るよ!」


 ツグノはナベナの静止を聞かず、一人で村長宅の敷地内から出ていった。



 タカハは棍棒を軽く握り、狂い人の集団に向かってゆっくり近づく。ある程度近づいたところで、走り出す。棍棒を長く持って数人の狂い人を突き戻し、短く持ち直して頭を打ち()え、棍棒を旋回させて別の狂い人を打つ。姿勢を低くし、棍棒で足払い。転んだ狂い人の両足を手早く縛る。タカハもただ待っていたわけではない。村人たちを動員して大量に縄の先に()を作ったものを用意させていた。輪は引っ張ると(ちぢ)むように結んである。


 たちまち三人の狂い人を縛って転がすと、武器を持った狂い人が出てくる。


「オトヤ、アズサ……」


 手塩にかけて修行をつけた狂い人の登場にタカハは顔を(しか)める。オトヤがタカハに斬りかかり、アズサは両手に持った短剣で隙を狙う。タカハは棍棒で受けるが、徐々に削れていく。仕方なく棍棒を放り投げ、腰に差した剣を抜く。


 タカハは豪快に剣を振る。激しく打ち付けられオトヤは防戦一方となる。アズサも隙を狙って短刀を打ち込むが完全に見切られて弾き返される。今度は逆にオトヤの剣が削れていった。タカハが上段に剣を構え打ち込もうとした瞬間、タカハの剣に鞭が巻き付く。タカハは鞭の先を見据え、凄絶(せいぜつ)な笑みを浮かべる。


「ようやく現れたな、タオツキぃ!!」


 そのまま剣を振り抜き、鞭を()ち斬る。タカハはタオツキに標的を変えるが、オトヤとアズサが近寄らせない。狂い人たちもばらばらに動き出し、警備の村人たちと接触し始める。狂い人たちは武器を持っていないので村人たちも抵抗できているが、同じ村の仲間だった者を傷つけることを躊躇(ためら)い、じりじりと押され始めている。タカハは全体を俯瞰(ふかん)して動き回り、ぎりぎりのところで膠着(こうちゃく)状態を維持し続けていた。


 タカハの体力は徐々に削られ、焦りを感じ始めた。何か一つでも運が味方をしてくれれば、この状況を脱することができる。時間を稼ぎ続けたタカハにようやく味方が現れた。


「お前が押されてるなんて珍しいな。体力落ちたか?」


 村人と狂い人の間に割って入り、狂い人を縛り上げながら村長のワケノが軽口を叩く。少し遅れてウチナリがやってきた。


「全然余裕だ、見せ場をつくってやろうと思ってな」


 タカハは強がるが、ワケノにはお見通しだった。


「俺はタオツキをどうにかする。ワケノとウチナリは他の狂い人に対応してくれ」


 そう告げてタカハはタオツキに向かって行く。


「ウチナリはオトヤに集中しな。他は私がやる」

「わかった!」


 ワケノの指示を受け、地面に置いてある縄を拾ってウチナリはオトヤに向かって走る。オトヤの死は目撃していない。生け捕るのは骨が折れそうだった。



 ヤネリとヨミヤを探してツグノは森の中を急いでいる。月明かりが出ているとは言え、夜中の森は視界が悪かった。だが、どこかから子どもの声が聞こえる。ツグノは声を頼りに森の中を進んで行くと、ヤネリと縄を解かれたヨミヤ、その向こうに狼が見えた。

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