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6 誕生日(終)

 もうすぐ誕生日だね、って。何が欲しい?、って。

 そしたら、「何にもいらない」って答える。

 だって、欲しいものはもう手に入れたから。

 小さなカードとか、お揃いの万年筆とか、もちろん嬉しい。

 でもどうして嬉しいかといえば、あなたがいるから。あなたとお揃いだから。

 あなたがいないとそれはすべて意味のないものになる。

 目の前にいてくれることが一番の幸せ。

 たとえそばにいなくても、あなたの声が聴けたら幸せ。

 あなたが私の名前を呼んでくれることが幸せ。

 その唇で声で、私の、私を呼んでくれることが何ものにも代えがたい喜びで。

 だから、他には何もいらない。

 でも。

 私には小さな闇がある。

 それは喜びを、至上の幸せを知ってしまったから。

 知らなかった。

 それを知ってしまったら。

 終わりを予感してしまう自分がいた。

 いつか、必ず、訪れる終わり。

 それを望んでいるわけじゃない。

 そんなもの、想像もしたくない。

 だけど、鮮明に刻まれている。

 いつか終わりが来る。

 今日?明日?

 わからない。

 至上の愛を知ってしまったら、同時に終わりも知ってしまうなんて。

 いつか来る終わりにおびえなければならないなんて。

 あなたの隣には私がいたい。

 でももしそれが叶わないなら、私はあなたの幸せを願う。己の死と引き換えにしてでも。

 私のちっぽけな命であなたが幸せになれるならいくらでも差し出せる。

 そう思うほどにあなたを愛していて。

 誕生日、何が欲しい?

 ってきかれたら。

「二人しかいない世界」

 って答えようか。

 そしたらきっと、

「やだなぁ、今日は積極的! そういうハニーも好きだけどっ」

 って笑顔で言うだろう。

 愛しています。



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