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06


 誓約魔法が成立し、晴れ晴れと笑っていた私ですが。

 条件付けが弱かったかなと、ちょっと思っていたりする。


・私たち三人がサフィア国に保護されることを認める。

・私たちがこの国を出たら、けして私たちに干渉しない。

・王様だけじゃなく、この国の人たちみんなが約束の対象。間接的な干渉もダメ。

・私たちのことを口実に、サフィア国やその同盟国にちょっかいかけるのもダメ。

・私たちを保護している国に、攻め込んだり変な干渉をしない

・自分の意志でこの国を出る私たち異世界の人間を、国を出たあとに追いかけたり干渉しない


 これらが誓約できた内容だ。

 必要なことは、なるべく盛り込めたとは思っているけれども。


 条件を、この国を出てからに絞っているので、国を出るときに妨害が発生しそうな気がするんだよね。

 さて、どうするべきか。




「あ、そうだ」

 すかさずポンと手を打つと、王様が少し後ろに下がった。

 私を警戒しているようだ。うん、遅いよ。


「私たちがこの国を出るときに、妨害はしないでくださいね」

 うっとつまる気配。やはり、する気まんまんだ。


「少なくとも、この近くでそれをすれば、勇者さんたちは気づきますよねえ?」

「おい、そんなことしねえよな!」

 勇者が王様に凄む。

 本当にチョロいな、この勇者くん。


「わ、わかった。王都で手出しはせん」

 それ、王都を出たらするってことじゃん。


 ちらっとセラムさんを見る。少し驚いている顔。

 たぶん、私の頭悪そうな話し方が演技だと、ようやく気づいたのだろう。


「王都を出たら妨害されそうですけど、これ以上の交渉が難しそうです」

 こそっと囁くと、眉を寄せる。

 演技だと確信に変わって、セラムさんにまで警戒されたようだ。


 だが、すぐにセラムさんは頷いた。

「それでいい。どうせ妨害は予想していた」

 おお、有能だね、セラムさん。




 勇者くんに向き直る。

 そういえば興味がなさすぎて、勇者くんの名前も見ていなかった。

 でもまあ、協力してくれたわけだし、お礼を言っておこう。


「最後まで気にかけてくれて、ありがとうございました。勇者さん、お元気で」

 演技全開ではない、自分の言葉で彼にお礼を言う。


 彼は何かを言いたげにしたが、しばらく黙ってから、頷いてくれた。

 今までのやりとりで、この国が異世界人を軽んじていそうだというのは、飲み込めたんだろう。

 この国に残ると、私たちの身が危険だとは、理解してくれたらしい。


 ちらりと歩夢さんに目を向けた。

 彼女は笑って、頷いてくれた。

 王様とのやりとりが、誓約魔法だとまでは、わからないだろう。

 でも私がああいう態度のときは、意図的に動いていると、彼女は知っている。

 きっと気づいてくれただろう。

 私が出した条件に、意味があるということに。


 できれば歩夢さんとそのお友達には、いずれこの国を出て安全に暮らして欲しい。

 そのとき勇者くんが一緒か、もうひとりの男の人も一緒なのかは、わからない。

 チャラ男三人組以外は、そのうちこの国を出るかも知れないとは思っている。


 そのときに、さっきねじ込んだ『異世界の人間を、国を出たあとに追いかけたり干渉しない』という条件は、役に立つだろう。

 自分たち3人だけではなく、『自分の意志で国を出た異世界の人間』すべてに適用される条件だ。


 勇者くんがいたから成り立った交渉。

 彼にとっても、役に立てば良いと願う。




「それじゃあ王様、失礼します」

 ぺこりと頭を下げると、微妙な顔で頷かれた。

 交渉をしたときの私が演技だと、いくらなんでもそろそろ気づいてきたのだろう。

 かといって、もう前言撤回はできないのだが。


 あとはセラムさんにお任せだ。

 何やら国同士の必要なやりとりっぽい挨拶をしている。

 この世界の礼儀だとか何かは、おいおい勉強させてもらうとしましょうか。




 ようやく私たちが召喚された部屋を退室することができた。

 なので私は、部屋を出たところで要求した。


「すみません。旅立つに当たって、最初の準備なのですが」

「なんだ」

「トイレに行きたいです」


 私にとっては重要だ。

 むしろ今、切実だ。


 だがセラムさんは脱力した。



やっとお部屋を出ることができました。

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