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本日3話目の更新です。


 朝いちばんの浄化を終えて、一度竜人自治区へ戻って魔力の回復をはかる。


 お風呂に入って仮眠をとろうと自室へ。

 ひと眠りの間に、シロさんは部屋を色々と見ていたようだ。


『うちもベッド、あつらえてもらえますやろか!』

 目が覚めて表の部屋へ出た途端に、テンション高いシロさんの声。

 クロさんのベッドを指して、シロさんが興奮している。


 クロさんのベッドは、寝室ではなく表の部屋の一角に置いてある。

 寝室はグレンさんと寝るので、クロさんには遠慮してもらった。




 聞けば、シロさんも人の生活に以前から興味を持っていた。

 食べ物だけではなく、生活そのものに興味があったという。


『うち、天蓋のベッドに憧れてますんやけど、作ってもらえますやろか』

 今はお姫様みたいに優雅な自分の家具が欲しいと主張している。


「ルシアさんに依頼すれば、作ってもらえますよ」

 クロさんのベッドも喜々として作ってくれたので、天蓋ベッドの依頼も快く受けてくれるだろう。


 生活そのものへの憧れなら、他の家具も欲しがられるかな。

 ウォークインクローゼットの一角をお部屋のようにしたら喜ばれるだろうか。


 荷物はほぼ亜空間に入れているので、クローゼットは空いている。




 仮眠後の身支度をして居間へ行くと、ザイルさんがいた。

「こちらシロさんです。クロさんの相方さんです」


 もう一体の精霊王としてシロさんを紹介すると、ザイルさんはまた丁寧な挨拶をしていた。


 クロさんのときも丁重だった。

 精霊王というのは、そう扱うものなのかな。


 グレンさんは気にしていないし、私は普通に話しているから、敬うという感じはないのだけれど。

 傍目には小動物へ丁寧に接するザイルさん。シュールだ。




 再度の浄化は寝る前でいいので、今は家具屋さんへ行く。

 ちょうどルシアさんが店にいたので、シロさんの家具を依頼した。


「もう一台! しかも天蓋付き! うわあ、ぜひ作らせてもらうわ」


 ルシアさんは張り切って引き受けてくれた。

 クロさんのベッド制作は楽しかったそうだ。


「なんなら小さなテーブルとソファーとかどうかしら!」

『テーブルとソファー! ええねえ、洒落たソファーがええわあ。優美な感じのソファーでお昼寝したいわあ』


 ルシアさんの提案に、シロさんがすごく乗り気だ。

 私のクローゼットがミニチュア家具置き場になりそうな予感がする。




 シロさんの言う優美な感じとは、どういうものだろうか。

 ルシアさんに伝えると、彼女も悩ましい顔になる。


「優美……曲線的な感じかしら。繊細な装飾とか?」

「ロココ調の家具とかかな。こう、曲線的なシルエットで」


 無意味な曲線が入ったものとか、支柱が飾り柱みたいなのがあった気がする。

 唐草模様じゃないけれど、そういう装飾もあった気がする。


 残念ながらうろ覚えだ。

 スマホが健在なら検索して見せたいところだけれど、電波がない。


 うろ覚えのロココ調のイメージをメモ魔道具に描いてみせたら、ルシアさんの目が輝いた。




「曲線的……ううん、具体的にどうすればいいかしら」

「あの、私は本当にうろ覚えなので、マリアさんの方が詳しいかも」

「わかったわ。マリアに聞いてみるわね」


 腕が鳴るわと言い残し、ルシアさんはソルさんの工房へ走って行った。

 これは引き受けてもらったということで、帰っていいのかな。


 あれ、家具屋さんの戸締まりはどうすればいいのだろう。


「このままでも大丈夫だ。竜人自治区の中で戸締まりを忘れることはよくある」

 グレンさんがこのまま帰ろうと私を促す。


 え、そうなの? それでいいの?

 そう思うけれど、勝手知ったる他人の家みたいな様子を、何度か見ている。

 玄関で声だけかけて、ずかずか奥に入っていく様子をよく目にする。


 まあ、それならあとはお任せでいいのかなと、家具屋さんを出た。




 下宿に帰ると、グレンさんと一緒にお料理タイムだ。

 明日は私もダンジョンへ行き、戦闘させてもらおう。


 グレンさんも戦闘がしたいなら、下層を目指した方がいいのかな。

 いずれにしろ、ヘッグさんたちの食事も含め、色々と料理を仕込む。


 出来たての料理を昼食としてグレンさんと食べ、もちろんクロさんシロさんにもお出しした。

 簡単にシチューだ。ソランさんの焼き立てパンもある。


 ついでサブレも出したら、シロさんも食べることに興味があったみたいだ。

『食事ってええわあ。お菓子の甘さもええわあ。人ってこんなええもん食べてはったんやねえ』




 その言葉に、シロさんもクロさんのように人の記憶を色々と見てきているのかなと思う。


『せやなあ。食事っちゅうのんはええもんやなあ』

『うちは直接魂の記憶を覗くわけやないけど、意識は共有されますからなあ』


 二人の会話を聞いていると、どうやらクロさんの知ることはシロさんにも共有されるらしい。


 そういえばクロさんは死者の魂を巡らせるために、記憶や情念を引き剥がす作業をして人の記憶を見てきたという。


 クロさんは死を、シロさんは生を司ると聞いた。

 シロさんは魂や魔力を世界の循環の流れに乗せる役割だから、直接記憶を覗くわけではなかったみたいだ。


『人の生き死になんて流れの一部やけど、こうして感じると感慨深いねえ』

 そうしみじみ言われると、シロさんにもいろんな体験をして欲しいと思う。


 部屋の一角をドールハウスみたいにシロさんのお部屋にしてもいいかな。

 シロさんの快適なお部屋作り、マリアさんにも相談しようかな。




 昼食とお料理のあと、夕食準備までに時間ができた。

 どうしようかなと思っていたら、グレンさんはダンジョンへ行きたいという。


「魔獣相手に体を動かしておきたい」

「私たちだけで行きますか?」


 ヘッグさんたちに合流は難しいだろうなと提案したら、シロさんが声を上げた。


『竜王はんはお強いんですやろ。うちのダンジョンの最下層で魔獣倒してもらえますやろか』

「いきなり最下層に招いてもらうって、ありなんですか?」


 私の疑問に、シロさんは力強く頷く。

『ダンジョンの下層は瘴気のエネルギーをようさん消費するように、強い魔獣を出しますやろ。あれを倒してもらえたら、うちらの浄化につながりますんや』


 そういえば魔獣を倒すことで浄化につながるという話は聞いたことがあった。


『順を追って進むダンジョンの仕組みは、ダンジョンの魔獣を倒す人が減らんように、無理せず段階を踏んで強うなってもらうためですわ』


 徐々に強くなることで、引き際がわかるようにする。

 ダンジョンはそういう構造になっているそうだ。


『竜王はんはうちの人の最下層でも危なげなかったんですやろ。そしたら最下層の魔獣をバンバン倒してもらった方がよろしいわ』





 そんなわけで、身支度をしてからシロさんがダンジョンに転移させてくれた。

 いきなり最下層だ。


 出てくる魔獣は大きくて強そうで、私は結界に閉じこもる。


 グレンさんは生き生きと剣を振るい、大きくて強い魔獣を次々と倒す。

 私は結界で身を守りながら、ひたすらドロップ品を回収する、簡単なお仕事だ。


『ええわあ。うちの領域がすっきりしていくのん、嬉しいですわあ』

 シロさんが浮き立つ声を上げているので、ダンジョンマスターとしては嬉しいことみたいだ。


 この世界の魔力や瘴気は、精霊王によるエネルギー循環の仕組みと聞いた。

 それを手助けするのが聖女の浄化だけれど、魔獣を倒すことでも浄化されるので、千年の聖女不在でもどうにかなった。


 長期間だから不具合が出ただけで、聖女不在期間がある前提の仕組みだ。




「魂から不純物を取り除いて循環させるときに、瘴気になる。その瘴気が浄化されて魔力として世界に巡る。ダンジョンの魔獣討伐も浄化」


 グレンさんが竜王の知識として説明してくれたことを、確認のため呟く。

 拾った大きな魔石を手の中に転がして、私は浮かんだ疑問を口にした。


「じゃあダンジョンのドロップ品は、どういう仕組みなんですか?」

『浄化されたときのエネルギー変換ですなあ。ダンジョンの中で浄化される魔力は、世界にそのまま巡らせるんが難しいんですわ』


 浄化され、本来なら純粋な魔力として世界に還元されるものが、ダンジョンでは魔石になる。

 ついでに魔獣として実体化されたものの一部もドロップ品になる。


『あとはダンジョンの魔獣を倒したら、エネルギー変換されるときの余波で、倒した人にちょっとずつ能力の付与みたいな効果が出るみたいですなあ』


 それがダンジョンで魔獣を倒すと強くなるという仕組みの正体らしい。

 なるほど、色々と原理があるみたいだ。


 異世界の物語のダンジョンがどういうものかは知らなかったけれど、この世界ではそういう仕組みということか。




『竜王はん、余裕があるみたいやねえ。もうちょっと瘴気使うて、強い魔獣出しましょか』

 シロさんがウキウキとダンジョンに働きかけて、さらに魔獣の群れが湧いた。


 ええと、浄化を進めるための協力でもあるから、いいのだけれど。

 あまりグレンさんに無理させ過ぎないよう、お手柔らかにお願いします。


明日3月1日は書籍2巻発売です。よろしければお付き合いくださいませ!


次回は3月14日更新予定です。

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