第8話:僕の大切な幼馴染~デイズ視点~
僕はガレディズ侯爵家の次男として、この世に生を受けた。そんな僕には、子供の頃から大好きな子がいる。
それは幼馴染の公爵令嬢、フランソアだ。僕より1歳年下のフランソアは、父親同士が従兄弟だったうえ、母親同士も仲が良かったことから、しょっちゅうお互いの家を行き来していた。
美しい水色の髪にクリクリとした大きなエメラルドグリーンの瞳をしたフランソアは、一見大人しそうな美少女に見えるが、実はとてもお転婆だ。それに表情も豊かで、見ていて飽きない。
そんなフランソアが、僕は大好きだ。フランソアも僕の事を気に入ってくれている様で
“大きくなったらデイズお兄様のお嫁さんになるわ”
そう言ってくれていた。フランソアと過ごす毎日は、本当に幸せでたまらなかった。僕の両親も、フランソアの両親も、いずれは僕たちを結婚させ、公爵家を継がせようと考えている様だ。
フランソアもそこ事を理解している様だった。
ただ僕は、子供の頃から少し体が弱かった。その為、7歳の時に体を鍛えるため、騎士団に入団した。本当は騎士団なんかに入りたくはなかった。でも…この弱いままの体では、フランソアを守れない、そう思い騎士団に入った。
騎士団に入団してからも、時間を見つけてはフランソアに会いに行く。僕はフランソアが大好きだ。フランソアの為なら、何だってする。そう思っていた。
お茶会にもフランソアが参加するものは、積極的に参加して、フランソアに悪い男が付かないか見守った。いずれフランソアは僕と結婚するのだ、変な男が付いたら大変だからな。
そう思っていた。
そんな中、僕が10歳、フランソアが9歳の時、王宮主催のお茶会に呼ばれたのだ。そこで出会ったのが、この国の王太子殿下でもある、ジェーン殿下だ。優しい微笑を浮かべ、フランソアに接するジェーン殿下。
周りがうっとりとジェーン殿下を見つめる中、当のフランソアは全く動じていない。それどころか、持ち前の明るい性格を存分に発揮し、ジェーン殿下に物怖じすることなくいつも通り接しているのだ。
ダメだ、フランソア。彼にその笑顔を見せては!そう思ったが、時すでに遅かった。ジェーン殿下をすっかり虜にしてしまったフランソア。その後も頻繁に王家のお茶会にフランソアは呼ばれた。もちろん、僕が行けるときは一緒に行くようにしたが、どうやらジェーン殿下は僕を警戒している様で、僕を招待してくれなくなった。
なんだか嫌な予感がする…
そう、この国の王太子殿下は、10歳の誕生日を迎えると、お妃候補者を集めて、彼女たちを王宮で住まわせる。そして王妃教育を受けさせ、誰が一番王妃にふさわしいか、見極めるのだ。
既に10歳を迎えていた王太子殿下には、7人ものお妃候補が王宮で激しい戦いを繰り広げられていると聞く。その戦いは、王太子殿下が17歳になり、正式に婚約者が発表されるまで続く。
もちろん、お妃候補はいつでも辞退する事も出来るのだ。ちなみに10歳にならないと、令嬢もお妃候補に名乗りを上げる事が出来ない。きっとジェーン殿下は、フランソアをお妃候補にしたいのだろう。
ほぼ毎週の様にフランソアは王宮へと呼び出されていく。そしてついに、恐れていた事態が起こった。それはフランソアが10歳になってしばらくした時だった。王太子殿下のお妃候補になりたいと言い出したのだ。
心優しく争いごとを嫌うフランソアには無理だ!と、フランソアの両親はもちろん、僕も必死に説得した。でも…フランソアはお妃候補になって、王宮へと行ってしまったのだ。
ショックだった…
フランソアはいずれ、僕と結婚して公爵家を継ぐと思っていたのに…フランソア自身も、そこの事を望んでいたはずなのに。こんなにあっさりと、殿下を取るだなんて。
きっと王太子殿下は、フランソアを婚約者にするだろう…あれだけ執着していたのだから…
フランソアを失った僕は、何もかもが嫌になり、部屋に閉じこもった。そんな僕に父上は
「いつまでもウジウジしていても仕方がないだろう。そんなにフランソア嬢が好きなら、騎士団の稽古を必死に行い、せめて護衛としてフランソア嬢を守ったらどうだ?」
そう提案してきたのだ。
護衛になってフランソアを守るか…
どうせもう僕とフランソアが結ばれることはない。それならせめて、フランソアの傍で彼女を守りたい。たとえ二度と触れ合う事がなかったとしてもだ。
よし!
その日から僕は、騎士団の稽古を今まで以上に頑張った。王宮の護衛になる為には、相当努力しないとなれない。そんな思いで、寝る間も惜しんで稽古に励んだ。そのお陰か、僕はどんどん頭角を現していった。
騎士団長にまで
「デイズは騎士団長になれる素質がある。騎士団長を目指してみる気はないか?」
そう言われた。でも僕は…
「有難いお言葉なのですが、僕は王宮の護衛になりたいのです」
「王宮の護衛だと?あんなつまらないものになりたいのか?それなら私が推薦してやろう」
なんと、騎士団長自ら推薦状を書いてくれ、僕は晴れて王宮の護衛騎士になれたのだ。
これでフランソアに会える!フランソアは僕が絶対に守るぞ!そんな思いで王宮に配属された。基本的に護衛たちは兜をかぶっている為、誰が誰か分からない。きっとフランソアも、僕の存在に気付く事はないだろう。
それでも僕は、フランソアを守れることが嬉しくてたまらない。そう思っていたのだが…