第38話:王宮主催の夜会に招待されました
私とデイズ様の婚約を発表してから、早1ヶ月が過ぎた。ジェーン殿下が我が家に押しかけてきて、私が対応したことで、あの後本当に1週間も部屋から出してもらえなかった。
両親はもちろん、メイドたちまで必要最低限の用事でしか入れなかったのだ。さらにカルア含めたメイドたちは、私と口をきく事も目を合わすことも禁止されていた。
唯一話が出来るのは、デイズ様だけ。ただいつも優しいデイズ様も、この1週間は私に非常に厳しかった。
「これじゃあ反省文になっていない!すぐに書き直すんだ!」
と、私が1日かけて一生懸命書いた反省文を一喝し、私の書き直しが終わるまで怖い顔で監視しているのだ。ある意味、王宮にいるときよりも辛かったかもしれない…
そんな地獄の1週間を乗り切った後は、いつもの優しいデイズ様に戻った。ただ、もう二度と屋敷にジェーン殿下を入れてはいけないと、耳にタコが出来るくらい言われたが…
そんな事件はあったものの、今は平和だ。あの日以降、多分ジェーン殿下は来ていない。後2ヶ月後にはジェーン殿下の誕生日があるから、お忙しいのかしら?
でも、あの様子じゃあ、きっと私の事を諦めていない様だし…
ちなみに私とジェーン殿下の会話は、殿下が法を犯しているという証拠になる為、第一王子派に提供されたらしい。あんな会話を他の人に聞かれるだなんて、なんだか恥ずかしいが、仕方がないと思っている。
ちなみに今が正念場の様で、お父様もデイズ様も、朝から晩まで出かけている。多分、第一王子のラファエル殿下を国王にするべく、色々と動いているのだろう。
私も今の状況が気になって、デイズ様に聞いたのだが
「フランソアはそんな事を気にしなくてもいいよ。とにかく、屋敷で大人しくしているのだよ。分かったね」
そう言われてしまった。お父様もデイズ様も、すぐに私を蚊帳の外にするのだから嫌になる。
今日も帰りの遅いお父様とデイズ様。仕方なくお母様と2人で夕食を頂く。
「フランソア、デイズがいないからって、そんな仏頂面で食事をするのは止めなさい。食事が美味しくなくなるわよ」
「だって毎日毎日、デイズ様の帰りが遅いのですもの。そもそもデイズ様ったら、ジェーン殿下が訪ねてきた時は、あんなに怒っていたのに。結局私をお母様に任せて、放置ですもの」
「ちょっとフランソア、デイズは遊んでいる訳ではないのよ。いつまでもデイズに甘えていてはいけないわ」
そんな事は分かっている。でも、なんだか寂しいのだ。
その時だった。
「お食事中申し訳ございません。旦那様とデイズ様がお帰りになりました」
「まあ、デイズ様が!今日はいつもより早いわね」
急いで玄関に向かうと、お父様と一緒にいるデイズ様の姿が。
「おかえりなさい、デイズ様!!」
そのままデイズ様に抱き着いた。
「ただいま、フランソア。毎日帰りが遅くてごめんね」
そう言ってデイズ様が抱きしめてくれる。デイズ様の匂い…この匂い、大好きだ。
「フランソア、急いで着替えてくるから、一緒に夕食にしよう。もしかして、もう食べてしまったかい?」
「いいえ、まだですわ。さあデイズ様、私がお部屋まで連れて言って差し上げますわ。参りましょう」
デイズ様の手を握り、部屋へと向かう。
「ごめんね、随分と寂しい思いをさせているのだね。すぐに着替えてくるから、ここで待っていて欲しい」
私を部屋のソファに座らせ、急いで着替えに向かうデイズ様。早くデイズ様、戻って来ないかしら?すると
「お待たせ、さあ行こうか」
大急ぎで着替えてきてくれた様だ。それがまた嬉しくてたまらなくて、ギュッとデイズ様に抱き着いた。
「フランソアは本当に甘えん坊だね。そう言えば子供の頃から、よく僕にこうやってくっ付いていたね。僕はフランソアがくっ付いてくると、とても嬉しいんだ。さあ、行こうか」
「私もデイズ様にくっ付くの、大好きですわ。はい、行きましょう」
2人仲良く食堂へと向かい、一緒に夕食を頂く。デイズ様と夕食を一緒に食べられたのは、何日ぶりかしら?嬉しくてついデイズ様の世話を焼いてしまう。もちろん、デイズ様も私の世話を焼いてくれるのだ。
そんな私たちを、お父様とお母様が生温かい目で見ているが、全く気にならなくなった。
食後はデイズ様と2人きりで過ごそうと思っていたのに、なぜかお父様に呼び出されたのだ。もう、せっかく今日はいつもより早く帰って来たから、デイズ様を存分に堪能しようと思っていたのに!
「お父様、一体何の用ですか?」
こっちはさっさと用件を聞いて、デイズ様と2人の時間を過ごしたいのだ。
「フランソア、あからさまに面倒です!みたいな顔をしないでくれ。来週王宮主催の夜会が行われるだろう?それで、デイズとフランソアも参加してくれるのでしょう?と、王妃殿下直々に念押しされたのだよ」
何ですって?王妃殿下直々に念押しですって?




