第30話:デイズ様の17歳の誕生日パーティーを開きます
領地から帰って来てから、半月が過ぎた。この半月お父様の言葉通り、屋敷から出る事が許されなかった。領地では色々な場所に行っていた為、最初は辛かった。それにデイズ様は忙しいのか、朝から晩までお父様と一緒に出掛けてしまうし…
ただ私も、次期公爵夫人になる為の勉強が始まったため、それなりに忙しく過ごしている。厳しい王妃教育を受けていたこともあり、特に問題なくこなしている。王妃教育の時の教育係は本当に意地悪な人だったが、今回の教育係は、とても優しくていつも褒めてくれるので嫌な気はしないのだ。
なんだかんだ言ってあっという間に半月が過ぎてしまった。そして今日は、デイズ様の17歳の誕生日兼、私たちの婚約発表を行う日だ。
朝からカルア達メイドに磨き上げられている。
「今日はお嬢様の晴れ舞台です。髪も可愛くハーフアップにしておきますね」
「ありがとう。そうそう、このブローチを付けておかないと」
正直このブローチが一体何の役に立つのかよくわからないが、今日はたくさんの貴族が来る予定になっている。もちろん、王族も…もしかしたらもめ事が起こるかもしれないものね。
そう思い、おばあ様から貰ったブローチを付けた。
「さあ、そろそろお時間ですよ。参りましょう」
今日の会場は、公爵家の大ホールだ。部屋から出ると、いつもの様にデイズ様が待っていた。銀色の髪をビシッと整えているデイズ様、とてもカッコいいわ。
「フランソア、そのドレス、とても可愛いよ。やっぱり僕のフランソアは最高だ。正直フランソアをあまり人前に出したくはないが、今日は僕たちの婚約披露の場でもある。いいかい?僕から絶対に離れてはいけないよ。分かったね」
「デイズ様、お誕生日おめでとうございます。今日の主役はあなたなのですよ。本当に無駄に心配性なのですから。それに私は、あなたの婚約者として、ずっと傍におりますのでご安心ください」
「ありがとう、フランソア。まさか僕の誕生日に君と婚約が出来るとは思わなかったよ。それじゃあ、行こうか」
「はい」
いつもの様に手を繋ぎ、ホールの控室へと向かった。するとお父様とお母様が既に待っていた。
「デイズ、それからフランソアも、よく聞いて欲しい。今日はこの国の第一王子でもある、ラファエル殿下もいらしている。フランソアは知らないだろうが、陛下には前の王妃殿下との間に、王子が1人いたのだよ」
今それを言うのかい!そう思ったが、中々言い出せなかったのだろう。それにしても、今日ラファエル殿下も呼んだという事は、本格的に我が公爵家は、ラファエル殿下側についたという事でいいのよね。
「ええ、知っておりますわ。そして我が公爵家は、ラファエル殿下を国王にするために、今密かに動いている事も」
私の言葉に、デイズ様もお父様もお母様も目を丸くして固まっている。
「私が何も知らないと思っておられるのかもしれませんが、ある程度の事は知っておりますから」
そう伝えた。
「どうしてフランソアがその事を知っているのだい?まさかシャーレス侯爵夫人に聞いたのかい?あのおしゃべりが…」
そう言ってデイズ様が頭を抱えてしまった。
「とにかく、詳しくは後で話そう。とりあえずラファエル殿下がいらっしゃるため、無礼がない様にだけ頼む。それじゃあ、行こうか」
動揺するデイズ様をお父様が宥める。
気を取り直して、4人で入場していく。ホールには既にたくさんの貴族が集まっていた。そこには、ジェーン殿下の姿もある。久しぶりに見るジェーン殿下、少しおやつれになった?て、気のせいか…
「本日はデイズの17歳の誕生日パーティーにお集まりいただき、誠にありがとうございます。それから、皆様に報告したい事がございます。この度デイズと、我が娘フランソアが正式に婚約いたしました。まだまだ未熟な2人ですが、どうか温かく見守ってやってください」
お父様の挨拶の後は、デイズ様の番だ。
「本日は私、デイズ・シャレティヌの為にお集まりいただき、ありがとうございます。そして、正式にフランソアと婚約いたしました。私事ではありますが、子供の頃からずっとフランソアを愛しておりました。やっと今日、こうしてフランソアと婚約できたこと、とても嬉しく思います。まだまだ未熟者ですが、どうかよろしくお願いいたします」
デイズ様が頭を下げると同時に、私も頭を下げた。それと同時に、貴族たちから大きな拍手が沸き起こった。
どうやら貴族たちから受け入れられた様だ。それが嬉しくて、つい笑みがこぼれる。
「それでは皆様、今日は楽しんでいってください」
お父様の言葉で、パーティーがスタートした。
“いいかい、フランソア。僕から絶対に離れてはいけないよ”
そう言って私の腰をがっちり掴んでいるデイズ様。さすがにそんなにガッチリと掴まれていては、離れたくても離れられない。
そんなデイズ様につい苦笑いしてしまった。




