第28話:王都に戻ります
翌日、朝早く起きた私は、最後にラミットに乗り、ブラッシングを行う。
「もう本当にこれで最後なのね。やっぱり寂しいわ…」
ラミットにブラッシングをしていると…
「こら、フランソア。また勝手にウロウロとして!」
怖い顔でこちらにやって来るのは、デイズ様だ。
「おはようございます、デイズ様。公爵家の敷地内なのですから、いいでしょう?」
「良くない!本当に君は!いいかい?王都に戻ったら、領地の様に自由に動き回る事は出来ないからそのつもりでいるんだよ。分かったね!あれ?そのブローチは…」
「これですか?これは昨日おばあ様から頂きましたの。録音機能が付いているか何かで、王都では何が起こるか分からないから肌身離さず持っていないさいとの事でしたわ」
「おばあ様は、録音機能がある事も話したのか…」
「デイズ様、何かいいましたか?」
「いいや、何でもない。さあ、すぐに着替えておいで。お爺様とおばあ様も待っているよ。食後はすぐに出発しないといけないし」
「それじゃあ海には行けませんね…」
ポツリと呟くと、なぜか再びデイズ様が怖い顔になった。
「君は僕に黙って海にまで行こうとしていたのかい?本当に目を離すとこれだから嫌なんだ。大体君は…」
「デイズ様、私、着替えて参りますね。それでは」
心が通じ合ったというのに、なぜか怒りん坊になってしまったデイズ様。とりあえず着替えを済ませて、食堂に向かわないと。
急いで自室に戻り、湯あみをして着替えをした。この部屋で過ごすのも今日で最後か…そう思うと、やはり寂しい。
後ろ髪をひかれながら、部屋を後にする。
部屋を出ると、デイズ様が待っていた。
「フランソア、さあ、行こう」
「はい」
いつもの優しいデイズ様にエスコートされ、お爺様とおばあ様の待つ食堂へと向かった。領地でお爺様とおばあ様とこうやって食事が出来るのも、今日で最後だ。別れを惜しむ様に話しに花を咲かせつつ、料理を噛みしめる。
食後はついに出発だ。
「フランソア、デイズ。君たちが領地に来てくれた3ヶ月、本当に楽しかったよ。またいつでも遊びに来て欲しい」
「こちらこそ、楽しい時間をありがとうございました。また王都にもぜひ遊びに来てください」
「フランソア、いいかい?王都ではデイズ殿のいう事をよく聞くのだよ。領地の様に自由奔放の振る舞いは慎むんだよ。分かったね」
「おばあ様ったら、大丈夫ですわ。お爺様もおばあ様も、お体には十分気を付けて下さいね」
最後にお爺様とおばあ様を抱きしめた。
「それじゃあ、フランソア。行こうか」
「はい」
デイズ様と一緒に、馬車に乗り込む。するとお爺様とおばあ様、使用人たちが手を振って見送ってくれた。私も窓を開け、手を振り返す。3ヶ月お世話になった領地、大好きなお爺様やおばあ様、領地の使用人たち。
「皆様、本当にお世話になりました。ありがとうございます。また必ずまた来ます」
窓の外から必死に叫んだ。するとお爺様とおばあ様が微笑んでくれている。またいつか、必ずこの地に来よう。デイズ様と一緒に…
「さあ、フランソア。そろそろ座った方がいい。立っていると危ないよ」
そう言って私を膝の上に座らせてくれたデイズ様。やはり別れは寂しいものである。
「それにしてもフランソアは、この3ヶ月ですっかり元に戻ってくれて嬉しいよ」
確かにここに向かっている時の私は、ガリガリだったものね。でも今の私は、すっかり体型も戻り、顔色も良くなった。というよりも、乗馬をしていたおかげか、かなり引き締まった気がする。
出来れば王都でも乗馬は続けないな…
王都に付いたら、デイズ様とお父様に相談してみよう。
帰りも行きと同じく、休憩を挟み、デイズ様の膝を枕にしつつ進んでいく。ホテルも行きと同じところに泊った。行きはあれほど感動したのだが、領地の素晴らしさを知ってしまった今、ホテルに対しての感動もほとんどなかった。
そして翌日も、王都に向けて朝早くに出発した。この日もやはり、デイズ様の膝を枕に、グーグー眠る。
「フランソア、王都に入ったよ。フランソア、起きて」
う~ん、まだ眠い…
「困った子だね。本当に…」
ぐっと体を持ち上げられたかと思ったら、唇に柔らかい感触が。
パチリと目が覚める。
「デイズ様、何をしているのですか?」
「何って、フランソアが全然起きないから、口づけで起こしたのだよ。これだとすぐに起きるね。これから口づけで起こそう」
そう言って笑っている。
「もう、からかわないで下さい!」
本当にデイズ様ったら!
「それよりも、もうすぐ公爵家に着くよ。ほら、窓の外を見てごらん」
デイズ様に言われて窓の外を見ると、懐かしい我が家が見えて来た。
「もう王都に着いたのですね。なんだかあっという間ですわ」
「そりゃフランソアはずっと眠っていたからね」
そう言ってデイズ様が苦笑いしている。確かに私、ずっと寝ていたわね…
そう思いつつ馬車の窓から外を見ていると、公爵家に入って行く。外にはたくさんの使用人と両親の姿が。
我が家に帰って来たのね。




