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第16話:溢れそうになる私の気持ち

「…ソア、フランソア、そろそろ起きて。お昼ご飯にしよう」


う~ん…


ゆっくり瞼を上げると、デイズお兄様の顔が。


「私、いつの間にか眠ってしまっていたのですね。ごめんなさい、デイズお兄様を枕にしていた様ですわ」


デイズお兄様のお膝を枕に、グーグー寝てしまっていた様だ。いくらお妃候補ではなくなったからって、人の膝を枕にするだなんて。さすがに令嬢として有るまじき行為だ。恥ずかしいわ…


「謝らなくてもいいのだよ。最近馬車なんてあまり乗っていなかったから、疲れたのだろう。それに僕の前では、無理しなくてもいい。昔はいつも僕の膝を枕に、スヤスヤ眠っていただろう。あの時の事を思い出して、なんだか懐かしくなったよ」


言われてみれば私はどこか出かけるたびに、デイズお兄様の膝を枕にして眠っていた。お兄様の膝は温かくて落ち着くのだ。懐かしいわ。


「そうでしたね。デイズお兄様のお膝は本当に気持ちいいのですよ。あの頃は本当に幸せでしたわ」


「これからは、あの時以上に幸せになるんだよ。フランソア。僕たちはもうずっと一緒だ」


ずっと一緒…


その言葉を聞いた瞬間、温かいもので心が満たされていく。


私、昔からデイズお兄様が大好きだった。大きくなったらデイズお兄様と結婚すると思っていた。それなのに私は…いつからあの時の気持ちが消えてしまったのだろう。


でも今、デイズお兄様と過ごすうちに、あの時の記憶が蘇って来る。やっぱり私、デイズお兄様が好きだわ…


スッとデイズお兄様の手を握る。


「デイズお兄様、お腹が空きましたわ。早くお昼にしましょう」


もう二度とこの手を離したくはない。でも…この手を先に離したのは私だ。きっとあのまま私の気持ちが変わっていなければ、デイズお兄様と婚約していただろう。


デイズお兄様は、今私の事をどう思っているのかしら?気になりつつも、そんな事は聞けない。今はお兄様が傍にいてくれるだけで、十分幸せなのだ。これ以上望んではいけない、そんな気がする。


デイズお兄様と一緒に、お店の中に入って行く。どうやらホテルの様で、最上階の景色の綺麗な場所で昼食を頂いた。


食後はデイズお兄様とお話をしたり、お兄様の膝を枕にして過ごしたりした。なぜだかデイズお兄様の前では、素の自分を出せるのだ。


そしてこの日は、立派なホテルに泊まる事になった。最上階のとても広い部屋だ。ちなみにデイズお兄様の部屋と私の部屋は繋がっている。さらに他にもいくつか部屋が付いているのだ。


「お兄様、見て下さい。このお部屋からの景色、最高に綺麗ですわ。向こうには海も見えますし」


「フランソアがこのホテルを気に入ってくれてよかったよ。ここのホテルは海鮮が美味しいらしいよ。早速食べよう」


隣の部屋に移動すると、次々と美味しそうなお料理が運ばれてくる。


「この海鮮スープ、とても濃厚ですわ。それにこの大きなエビ、プリプリで美味しいです」


「フランソアが気に入ってくれてよかった。たくさんあるから、いっぱい食べて。ほら、こっちにはカニもあるよ。ホタテのバター焼きも絶品だ。フランソアが火傷をすると大変だから、僕が殻から身を取ってあげるよ」


「デイズお兄様ったら。もう私は子供ではないのですよ。でも、昔もこうやってお兄様が私の世話を焼いて下さっていたのですよね」


「そうだったね。またフランソアの世話が焼けて嬉しいよ。フランソア、改めて戻って来てくれてありがとう。僕はとても幸せだよ」


「私も!デイズお兄様が我が家の養子になってくれて、一緒に生活できて嬉しいですわ。もし…もし許されるのなら、ずっと一緒に…いいえ、何でもありません」


私ったら何を言っているのかしら?恥ずかしいわ…


「もし許されるのなら、僕はずっとフランソアと一緒にいたいと思っている。もちろん、義父上や義母上も一緒に」


私の手を握り、優しい眼差しで真っすぐ私を見つめるデイズお兄様。


「私もずっとずっと4人で暮らしたいですわ!」


「ありがとう、フランソア。さあ、お料理が冷めてしまうよ。早く食べよう」


そう言うと、お料理を食べ始めたデイズお兄様。きっとデイズお兄様は、私を家族の1人として見ているのだろう。でも私は…


分かっている、ずっと殿下のお妃候補だった私がそんな我が儘を言える立場ではない事を。でも…お妃候補を辞退し、自宅に戻ってきてから、昔の気持ちが溢れる様に蘇ってきたのだ。


あの時の私は、確かにデイズお兄様が好きだったはずなのに…私ったら本当に、どうかしていた。


でもきっとデイズお兄様は、私の事を手のかかる妹くらいにしか思っていないだろう。それでもいい、デイズお兄様の傍にいられるのなら。


もし…もしデイズお兄様に好きな人が出来て、誰かと結婚する事が決まったら、その時は笑顔でお祝いしてあげよう。それが私にできる、唯一の事だから。


でも…

考えただけで胸がチクリと痛んだ。


「フランソア、また良くない事を考えていたね。まだ王宮から帰って来て、1週間も経っていないのだから、仕方がないと言えば仕方がないのだが…ほら、笑って。フランソアは笑っている顔が一番可愛いのだから」


私も…私もデイズお兄様が笑っている顔が一番好き。デイズお兄様にはいつも笑顔でいて欲しい、だから私も笑顔でいよう。少しでもデイズお兄様に喜んでもらえる様に…

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