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第14話:領地に行く事になりました

「フランソア、急なんだが明日からしばらく、僕と一緒に領地に行こう」


「えっ?領地にですか?」


両親とデイズお兄様と4人で夕食後お茶を楽しんでいる時だった。急にお兄様がそんな事を言いだしたのだ。


「デイズはまだ公爵家の養子になって1年だ。せっかくなら公爵家の領地をこの目でしっかり見たいという事で、3ヶ月限定ではあるが、領地に行く事になったのだよ。私の両親にもデイズを会わせたいしね。それでフランソアも一緒に付いて行ってもらおうと思って。領地は自然豊かで、祖父母もいるから、フランソアの心の療養にもいいだろう」


「フランソア、僕に付いて来てくれるよね?知らない土地に1人で行くのは少し不安でね。フランソアが付いて来てくれると、僕も嬉しいんだ」


「もちろん付いて行きますわ。私も久しぶりに領地に行きたいですし。せっかくなので、私がデイズお兄様に領地を案内いたしますね」


子供の頃、よく両親と一緒に行った領地。自然豊かで、近くには海があって、とてもいいところなのだ。お爺様もおばあ様もとても優しくて気さくで、私は2人が大好きだ。さらに最近、宝石鉱山が発見されたとあって、さらに我が領地は活気づいていると聞く。


「あの…領地では外に出てもいいのですよね?あそこは自然豊かな場所なので、屋敷にとどまっているのはさすがに…」


せっかくなら外に出て、美味しい空気を目いっぱい吸いたい。


「もちろんだよ、領地では好きなだけ外に出ても大丈夫だよ。ただ、1人でどこかに行くような事だけは避けて欲しい。せっかくだから、領地の街をフランソアに案内してもらおうかな?」


「はい、分かりましたわ。街の案内も任せて下さい!」


胸を叩いてアピールした。


「それじゃあ、明日からデイズとフランソアは領地に向かうという事でいいね?領地は遠いから、明日の朝早く出発する必要がある。2人とも、もう寝なさい」


「それじゃあフランソア、一緒に部屋に行こうか。義父上、義母上、おやすみなさい」


「お父様、お母様、おやすみなさい」


両親に挨拶をした後、2人で手を繋いで部屋を出た。屋敷に帰って来てから、いつもデイズお兄様が手を繋いで移動してくれる。それがなんだか嬉しいのだ。


デイズお兄様は昔から私を気にかけてくれていたのよね。殿下のお妃候補になる時だって、必死に説得してくれたのに…どうして私は、デイズお兄様のいう事を聞かなかったのだろう…


「デイズお兄様…私が殿下のお妃候補になると言った時、必死に止めてくれましたよね…あの時、お兄様のいう事を聞かなくてごめんなさい…本当に私、バカでしたわ」


デイズお兄様の方を見つめ、そう伝えた。すると、一瞬悲しそうな顔をしたデイズお兄様だったが、すぐにいつもの優しい眼差しに戻った。


「フランソアが謝る事じゃないよ。フランソア、屋敷に戻って来てくれてありがとう。その…もう殿下の事は…」


「好きではありませんわ。そもそも、どうしてあそこまで熱を上げていたのか、不思議なくらい…なんだか魔法が解けたようなそんな感じがしますの」


自分でもびっくりするくらい、もう殿下に興味がないのだ。正直どうしてあそこまで殿下に熱を上げていたのか分からないくらいだ。というより、最後の方は半分意地になっていたのかもしれない。


「魔法が解けたか…きっと悪い魔法にかかっていたのだね。でもよかった。さあ、明日は領地に向かわないといけないから、もう寝よう」


「はい、久しぶりの領地、楽しみですわ。それではおやすみなさい」


「おやすみ、フランソア」


デイズお兄様と別れ、自室へと戻ってきた。そして湯あみをする。そう言えば、私の部屋にはたくさんのアロマオイルが準備されている。


「このアロマオイル、とてもいい香りがするわね。お母様が準備してくれたのかしら?」


ふと気になってメイドに尋ねた。すると


「アロマオイルはデイズ様がお嬢様の為に準備されたものですわ。アロマオイルだけではありません、お嬢様がいつお戻りになられてもいい様にと、この部屋もデイズ様が整えられたのです。本当にお優しい方ですわ」


そうメイドが教えてくれた。私が帰って来るかも分からないのに、私の為に部屋を整えていてくれていたのね…中庭のダリア畑も、私の為に作って下さったとおっしゃっていたし。


ダリア畑なんて、何カ月も前から準備をしないといけない。きっとデイズお兄様は、この家に養子にいらしてからすぐに、私がいつ帰って来てもいい様に準備を始めたのだろう。デイズお兄様ったら…


あの人はいつもそう…私の事を一番に考えてくれているのだ。それなのに私は、デイズお兄様のいう事を無視して、勝手にお妃候補になって。挙句の果てに、5年もの間、心配をかけて…本当に何をしているのだろう。


気が付くと涙が溢れそうになっていた。ダメよ、泣いたら!

無意識に自分の手をつねろうとしたが…


“フランソア、泣きたいだけ泣いていい。どうか自分を傷つけないでくれ”


ふとデイズお兄様の言葉が頭をよぎり、つねるのを止めた。


「お嬢様?」


心配そうにメイドが声を掛けてきてくれる。


「ごめんなさい、大丈夫よ。さあ、湯あみの続きをしましょう」


そっと涙をぬぐい、メイドたちに笑顔を見せたのだった。

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